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ビットコインを使うUXプロセス(暗号化通貨の支払いシステムを開発から学ぶ)

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原文:"Cryptocurrency payment UX process" by Samantha Shaibani

暗号化通貨は技術コミュニティーの中でも外でもとてもアツいトピックです。興味と意識が高まる中で、暗号化通貨に多くの人が引き寄せられています。

多くの人がウォレットをダウンロードして、ビットコインやイーサリアムなど暗号化通貨を購入しています。多くの人は投資と考えていますが、実際に暗号化通貨を使って何か買うことができるのでしょうか?結局のところ、暗号化通貨は通貨で、それを使って何か買うことをできるのでしょうか。

この記事は以前に書いた記事"crypto wallet MVP"での私たち(Joseph Guerra, Brandon Fancher, Garren DiPasquale, Sam Shaibani) の活動の続きです。私たちはデジタル通貨のウォレットから支払いシステムにピボットして、開発することにしました。そこから学んでいきます。開発するシステムの名前はマルシェ(Marché)です。フランス語で商人という意味です。いいでしょ、ウィ(oui)?

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マルシェはWebサイトで簡単なものを買うことができます。ブロックチェーンのはじまり「ジェネシスブロック」のコーヒーマグとか。私たちの目的は使いやすくて満足のいくユーザーエクスペリエンスのデジタル通貨支払いシステムです。私たちは自分たちが経験した三つのプロセスを共有したいと思います。

パート1:学ぶ

私たちの仮説は「デジタル通貨をすでに持っている人はそれを使いたい」でした。すでに似たようなシステムはありますが、それがうまく活用されているのか、実際に利用しているのかがわかりませんでした。

Earnで調査

Joeは Earn.com を利用してデジタル通貨の利用と動機について調べました。Earnは回答者に現金またはビットコインで受け取ることができるので、私たちにとって素晴らしいツールでした。

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過半数以上の人 (93%) はデジタル通貨を投資目的で所有していました。そして、多くの人 (83%) はデジタル通貨で何か買うことに前向きでしたが、半分の人 (49%) が実際にデジタル通貨で何かを飼った経験があるだけでした。最後の質問は「どうしたらデジタル通貨を使いますか?」というオープンな質問で、詳細なフィードバックを得ました。 Joeは回答を以下のように分類しました:

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この調査では「利便性」(28%) が最も重要だとわかりました。次が割安感、価格の安定、売り手が受け付けること、暗号化通貨でしか買えないものと続きます。これらの結果からさらなる疑問が生まれました。

どうすればモノを買いやすくなる(利便性が高まる)?スクリーンの数を少なくすればいい?QRコード?満足いくアニメーション?ステータスの可視化?

利便性はユーザーエクスペリエンスにフォーカスすることで解決できそうな問題のようです

 手数料、税金、個人情報、最先端な感じと答える人はあまり多くなかったのには少し驚きました。おそらく、利便性に比べるとニーズとしては高くないのでしょう。暗号化通貨の特徴を強調することでデジタル通貨での買い物における使いやすさ、セキュリティー、利便性を改善することができるかもしれません。

 これらの調査の結果はマルシェの開発をするための調査を継続する正当性となりました。

 もし興味があれば、オリジナルのデータはこちらにあります。

競合調査

 競合調査では暗号化通貨を支払い方法として採用しているeコマースサイトのチェックアウトのプロセスを研究しました。実際には Coinbase CommercePursePayBearそしてEtsyです。

 このチェックアウトプロセスのデザインの調査でEtsyのショップの一つがデジタル通貨を扱って支払いをシミュレートするのを見つけました。そこで、イーサリアムのパーカーをカートに入れ、いくつかのステップののちにチェックアウトすることができました。確認画面が表示され、メールが送られてきましたが、支払いの情報は全く入力していません。特にやることはなさそうだったので、そのまま普通に暮らしていました。

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 数日後にイーサリアムのパーカーが出荷されたという出荷確認がメールで送られてきました。特に売り手から連絡はなく、私が実際に支払いしてないことを知らないのかもわかりません?わお。

 私たちは売り手はデジタル通貨を受け取るオプトインをしなければいけないことを知っていました。しかし、それは支払いを回収するのには十分な情報ではありませんでした。

 悪のデザイン反対運動の推進者として私たちは売り手にコンタクトをして状況の説明しました。予想通り、売り手は何も状況を理解していませんでした。売り手は支払いがされたかわかりませんし、無償で商品を送っているかもわかりません。ウォレットのアドレスをメッセージで送ってくれたので、BitPay を使って支払いを完了しました。

 私たちはこの得られた知識を善意と適切なデザインを議論する目的で共有しています。支払いシステムを悪用しないようお願いします。善良であってください。

EtsyのショップオーナーにGoogle Formを使ってアンケート

 この経験をしてEtsyの他の売り手にもデジタル通貨を受け入れるエクスペリエンスのフィードバックをもらいたいと考えました。私たちは5つの質問で構成されるシンプルなアンケートをショップのオーナーに送りました。

 調査で分かったのはネイティブでデジタル通貨をサポートしていない貧弱な支払いシステムがチェックアウトで使われているということでしたが、それでも売り手は引き続きデジタル通貨を受け付けていく意向があるということでした。

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 これによりマルシェの方向性を検証することができました。これこそまさに私たちが提供しようとしていたものですから。チェックアウトの間にスキャンして支払いを直接サイトに送ることです。

売り手と会話する

 言葉を広めて支払いの受け入れについてフィードバックをもらう素早い方法として、近くのコーヒーショップやファーマーマーケットに行って売り手と直接話をしました。デジタル通貨は真のピアツーピアの支払い方法なので、ファーマーマーケットで試してみる価値はとても大きいです。人と人の取引で、中間業者がいません。

 私たちが話をしたほとんどの人は Square のPOSを使ってApple PayとGoogle Payを受け付けていました。そこで「ビットコインは扱ってないんですか?」と聞いたところ、回答は「いや」か「それってApple Payで扱ってるの?」か「ビットコインって何?」でした。そこで、デジタル通貨のことを説明して、売り手と買い手のメリットについても説明しました。

 Earnでの調査を振り返って考えると、売り手の受け入れについてどう考えればいいでしょうか?もっと見えるようにする必要があるし、市場での加速も必要そうです。改善の余地は大いにありそうです。でも、どうやってメリットについて伝えればいいでしょうか?

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パート2:開発してみる

 私たちは取引のプロセスがどのようになるのかを理解したいと考えました。そこで、機能するプロトタイプの開発をはじめました。これは自分たちで支払いシステムのプラットフォームが開発できるという技術的な仮説検証でもありました。

 これはブロックチェーンのユニコーンがチームにいることで初めて可能になることがわかりました。例えばBrandon Fancherのように。彼が機能するバージョンのマルシェを作り、ユーザーテストをすることが可能になりました。

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 マルシェはReact *1ベースのWebアプリケーションでHeroku *2上のNode.js *3Express *4でホストされています。Bitcore-wallet-service *5、階層的決定性ウォレット(HD wallet:hierarchical deterministic wallet)とBIP39の暗号を解読するBIP39ニューモニック(BIP39 mnemonics)を使ってビットコインキャッシュ(BCH)での支払いを処理します。ビットコイン(BTC)は手数料が安いので選びました。そして技術スタックによってビットコインキャッシュ(BCH)に簡単に変換できるからです。

フローチャート

 JoeとBrandonはユーザーとの接点の鍵となるユーザーとテクニカルのフローを作りました。この俯瞰的な視点はUXの改善点の発見に役立ちました。特にプロセスをもっと便利にできる部分です。これは時間が経つにつれて変わることを意識しています。

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パート3:実際の人(と猫)で試してみるニャー

 私たちはマルシェをデジタル通貨とビットコインの取引について知識がある人(と)で試してみました。

 私たちの究極的なゴールはパパやママが使えるくらい簡単なものをデザインすることだったので、(最初は)その複雑さを十分理解していてデジタル通貨のタッチポイントを理解している人からフィードバックをもらうことにしました。ハイテク好きのペルソナで私たちのMVPの最初のアーリーアダプター層です。

 これが意図的に「ジェネシスブロック」のマグカップを選んだ理由です。そうすることでクリプト信奉者を集めることができると考えました。

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 この機能するプロトタイプでマルシェを試すために朝のコーヒーセッションを開催しました。完全に機能するわけではないですが、これは学びの実験で、多くの面白いことを学ぶつもりでした。

The Workarounds

 デザイナーの観点で見るとデジタル通貨のユーザービリティテストは全く異なったものでした。理想的には単にユーザーにプロダクトを渡してそれを観察したいところでしたが、今回はもう少し手助けが必要でした。

 テストしてくれる人たちに実際のお金を使ってもらうわけにはいかないので、取引をするのに十分なビットコインキャッシュがあるBitPayウォレットが入った私のスマホを渡しました。BitPayのユーザービリティーをテストしていないので、これは完璧なシナリオとは言えませんでした。BitPayを使っていない人には、少し慣れが必要でした。

 少し歪曲された結果になることはわかっていましたが、私たちは完全な取引をするためにこのようなやり方をする必要がありました。それでも最初期にこれほど多くのことが学べたので、これはこれでいいのです。

チェックアウトのフロー

 チェックアウトのプロセスをテストしている時、どの個人情報をマルシェが求めているのか、いないのかで混乱があることに気がつきました。

 現実の世界では送り先の住所を入力して、支払いの住所が同じか違うか確認をします。支払いの住所の確認のステップがないことに気がついたユーザーは私たちがこのステップを入れるのを忘れたのだと考えました。

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 もちろん、忘れていません。暗号化通貨で支払い処理をする場合、支払い住所は必要ないのです。なぜなら、支払い住所などないのですから。ウォレットに住所はリンクされていません。

 これはユーザー教育とステップを通じての明確さがさらに必要だということです。情報がないこと、どうしてないのか。これらはユーザーのセキュリティーに関する見方を軽減します。ね、おもしろいでしょ?

ビットコイン(BCH)からアメリカドル(USD)に

 そして、ユーザーがビットコインキャッシュの額とそれに対するアメリカドルの価値を見たときに混乱することが観察できました。マルシェはユーザーが考えるようにデザインされています。これはいい取引レートなのか?なんで二つのコストがあるのか?もっといい取引レートになるまで待ったほうがいい?Amazonのような伝統的な取引ではアメリカドルの額を見て特に考えることなく続けます。

 たとえデジタル通貨の考え方を理解した人であっても、テストセッションでは混乱しました。知らないわけではないのです。単にクレジットカードを使ういつもの慣れたやり方と違うからです。つまり、この分野に慣れた人でも使い勝手の問題に遭遇することを学ぶことができました。まだまだ改善の余地があります。

次のステップ

 私たちはアンケートをたくさん送って、動くプロトタイプを作って、人とユーザビリティーテストをすることによって多くを学びました。これがMVPの目的であり、UXのプロセスです。

 私たちはマルシェを立ち上げ、プロモーションをして、実際のユーザーで試す計画です。そしてもちろん、オーダーしてくれた人にはマグカップを送ります!

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*1:JavaScriptのフロントエンドライブラリー

*2:PaaS(Platform as a Service)と呼ばれるサービスで、アプリケーションを実行するためのプラットフォーム

*3:環境非同期型のイベント駆動のJavaScript環境

*4:Node.js向けのMVCフレームワーク

*5:BitPayのライブラリ