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書評|モノづくり企業から顧客体験企業への転換「Connected Company」Dave Gray

 これからは顧客体験を重視したサービス企業にならないと成長できないと言われています。現代のヨハネの黙示録の四騎士と言われるAFGA(Apple、Facebook、Google、Amazon)も全てサービス企業ですね。え?誰ですか?Appleが製造業だといってる人は?Fortune Future 50というリストがあります。将来的に爆発的に成長する可能性のある企業。ここにリストアップされている企業も純粋な製造業はほとんどありません。

 例えばFortune Future 50リーダーリストで第二位のTeslaも電気自動車を作っているけど、彼らのイノベーションはそれだけじゃない。顧客体験を非常に重視しているサービス企業といってもいい。販売店を経由しないでショールームで直接体験をさせる。彼らが力を入れているクルマの自動運転もサービスに直結しますよね。

サービスデザイナーの描く新しい組織の形

 それでは「従来の効率を求めた大量生産型の組織から顧客のエクスペリエンスを重視したサービス型の組織に変わるにはどうしたらいいのか?」それが今回紹介する本"Connected Company"の主題です。この本を書いたのはXPlaneの創業者でアメリカで最も有名なサービスデザイナーの一人であるDave Gray氏。スタンフォード大学のd.schoolでも使われているEmpathy Map(共感マップ)はXPlaneがもともと作ったもので、彼の本『ゲームストーミング ―会議、チーム、プロジェクトを成功へと導く87のゲーム』でも紹介されています。

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"Connected Company"の著者、Dave Gray氏

 新しいサービス型の組織は自律型の組織になる

 2012年に出版されたこの本は、新しい組織の形としてConnected Companyという概念を提唱しています。いわゆるピラミッドの形をした階層型の組織ではなく、自律したグループ(ポッド)が集まったポデュラー型の組織になる。この本は前回紹介した"Reinventing Organization"(2014年2月出版)の二年前に出版されているのですが、かなり共通点が多い。"Reinventing Organization"が色々な歴史的事例や新しい組織の事例から時系列に整理したものに対して、"Connected Company"は顧客体験を最適化するサービス型の組織はどのような組織なのかを事例を交えて考察しています。取り上げている事例もモーニングスターなどかぶる部分が多い。

なぜ従来のピラミッド型の組織では顧客体験を最適化できないのか?

 Connected Company(繋がっている組織)がサービス型の組織だとしたら、従来のようなピラミッド型の組織をDivided Company(分裂した組織)と定義できます。産業革命以降、効率を高めるために分業(Division of Labor)が勧められてきたので、大量生産型の組織にとってDivided Companyは最適な形だったわけです。製造は安定していて関わる人の役割も明確。

 しかし、経済は製造業よりもサービス業が成長していった。サービスは製造と比べて決まった形がない。常に変化する。例えば自動車を作ることはどのような会社でも大きく変わることはない。働く人が持っているのはタスクとプロセス。しかし、同じクルマでもUberのようなサービスカンパニーは?顧客それぞれにルートも違えばパーソナリティーも違う。Uberがもし従来の企業のような組織体系で、ドライバーはピラミッドの底辺で、持っているのはタスクとプロセスだったら?それではうまくいかない。サービス型のConnected Companyは人が持つのは顧客体験。

この本はオススメか?

 日本の企業が「大量生産のモノづくり企業」から「サービス型のモノづくり企業」へと転換するのにとてもいいテキストだと思います。すでに出版から時間が経過しているため、いくつかの事例はすでに旧聞に属します。それでもハッとするような事例がたくさんあります。

 例えば軍隊の事例。軍隊はピラミッド型の組織で命令は絶対。"Reinventing Organization"でも軍隊はレッドのメタファーとして使われているくらい。そういうイメージがありますよね?

 しかし、実際の戦場では自律的に動く必要がある。戦況は刻一刻と変わるし、必ずしも上長の判断を仰げるわけではない。自律的な組織は「組織の目的」を重視して、その目的が行動の規範となる。戦場における軍隊もまさに同じで、「司令官の意図(Commander's Intent)」と呼ばれる指針が各部隊が自律的に動く基準となる。軍隊も現場ではかなりアジャイルな組織なんですよ!

 "Reinventing Organization"はどちらかというとアカデミックで理想的な印象があるのですが、"Connected Company"は現実も理解して実質的な解決策を提示している気がします。

The Connected Company

The Connected Company

 

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