カタパルトスープレックス

イノベーションに効く世界の情報を日本語で

デイブ・グレイが語るソースコードとしての「線の言語」とビジュアル思考

f:id:kazuya_nakamura:20171121081813j:plain

 デイブ・グレイさんはアメリカで最も有名なサービスデザイナーの一人です。XPLANE創業者としてスタンフォード大学d.schoolでも使われている『共感マップ』の作成に携わったり、日本でも出版されている『ゲームストーミング』などの著者でもあります。スケッチでも有名でグラレコ本ではデイブ・グレイ風として紹介されたりもしています。

 そんなデイブさんにサービスデザインやイノベーションにおけるスケッチの役割とか聞いてみました。

カタパルト式なかむら

 デイブさんはスケッチやドゥードゥルでも有名ですよね。共感マップもとてもビジュアルです。

デイブ・グレイ

 私がやっているのは全てビジュアル思考(Visual Thinking)と言えるね。ビジュアル思考というのは最も基本的で普遍的な方法だと思うんだ。ビジュアルを使って探索し、実験し、考えを説明できる。ビジュアルを使うとアイデアを見える形にできる。そうすることによって他の人も理解しやすいし、共同作業もしやすくなる。

f:id:kazuya_nakamura:20171119134552p:plain

スタンダード大学d.schoolでも使われている『共感マップ』

「書く」ことは「描く」こと。「描く」ことも「書く」こと。作文、数学、音楽、チャート、スケッチ、ドゥードゥルといった表記は全て紙にアイデアを落とし込むという意味では同じなんだ。私はそれを「線の言語(line language)」と呼んでいる。「線の言語」はオリジナルの言語となる。表現のソースコードとも言える。それが文章でも、ドローイングでも、統計のチャートでも、インフォグラフィックや戦略の可視化やシステム思考も全てそう。


Squiggle birds

 私は「線の言語」を全ての仕事で使う。いろんな人に「線の言語」をソースコードとして使うことを教えている。「線の言語」を使いこなすことによって複雑でぼやっとした構造化されていない問題に取り組むことができるようになる。

カタパルト式なかむら

 日本企業はビジュアル思考があまり得意でないような気がします。

デイブ・グレイ

 日本企業はたくさんのイノベーションツールを作り出したよ。それらはアメリカで研究され、広がっていった。例えばリーンマニュファクチャリングはリーンスタートアップになった。日本企業のA3思考(トヨタ自動車で資料を1枚のA3サイズの紙にまとめる方法)はサービスを通じた価値創造、特にクリエイティビティーやイノベーションに役立つ。まだアメリカではそれほど広がっていないけど、可能性は大きいと思う。リーダーたちがA3思考を使って創造性や革新性にフォーカスすることで実際にイノベーションが起きた現場にたくさん居合わせた経験からもそう思う。

カタパルト式なかむら

 リーンマニュファクチャリングのカンバンもA3思考も日本企業というよりはトヨタ自動車の手法で、海外企業の方がよく研究して取り入れている気がします(笑)

カタパルト式なかむら

 ところで、"Connected Company"が出版されてから自律的な組織が注目されるようになりました。20世紀の後半はサービスデザインでいうバックステージが注目を集めていました。例えばSCM、ERP、CRMなどです。自律的な組織もそうなのですが21世紀からはフロントステージにおける顧客体験が重視されています。

デイブ・グレイ

 バックステージとフロントステージを考えるとき、レストランがいい例えになる。調理場がバックステージ。工場や企業の本社機能と同様にバックステージとしての調理場は効率性と生産性を上げることができる。でも、実際の創造性の問題はホールでの顧客体験がカギとなる。ホールでお客様にどのようにいい顧客体験をサービスとして提供できるか。

 バックステージはプロセスなのでリーンにできる。でも、顧客は一人ひとり違うから顧客体験といってもそのバリエーションは無限にある。パーソナライズすればするほど複雑になる。それに対応するにはフロントステージでの自律性を高めるしか方法がない。

 これはレストランに限ったことではなく、全ての産業で言えること。

カタパルト式なかむら

 "Connected Company"が出版された2012年と比較して企業がサービス企業"Connected Company"となる必要性は高まっていますか?

デイブ・グレイ

 企業がConnected Companyとなる必要性は出版してから現代まで変わっていない。変わったとしたらその重要性がさらに高まったこと。企業文化は生きているんだ。私は企業文化を説明するときによく「庭」を比喩として使う。手入れが行き届いた庭は過ごしやすいし、美しい花が咲き果物が実る。行き届いた企業文化は働きやすいし、結果も出る。

カタパルト式なかむら

 GEのような製造業もデジタルを活用したサービス化を進めています。しかし、GEは先進的な取り組みをしていますが、まだうまくいくには時間がかかりそうです。

IoTの“手本” GEの見えない針路:日経ビジネスDigital

デイブ・グレイ

 GEはジャック・ウェルチが経営していた頃にとても難し判断を力強く下した。彼の後の経営者はGEの企業文化をよく手入れしてこなかったんじゃないかな。ジャック・ウェルチは1990年代に「株主価値の最大化はこの世で一番間抜けなアイデアだ」と言った。彼が言わんとしたことは、株主の価値は逆算して考えるということ。顧客のニーズを優先して先に考える。企業が顧客の価値にフォーカスすれば株主の価値は自ずと高まる。顧客の価値が成長の要因であって、株主への価値はその結果でしかない。GEはどこかで道を誤って業績は停滞している。でも、正しいことを続け、顧客中心でいられれば偉大な企業に戻る。

カタパルト式なかむら

 デイブさんは様々なプロジェクトに関わっています。最後にサービスデザインやイノベーションプロジェクトに関わる人に注意点と言いますか、「これは危険信号!」だから注意しないといけないこととかありますでしょうか。

デイブ・グレイ

 以前のカンファレンスで話したやつだよね(笑)。次のことにいくつか当てはまるプロジェクトは要注意だ。

  • 強い抵抗勢力がいる
  • 本当にやりたいのかよくわからない
  • 実行する上での障害を取りのぞけない(インセンティブをつけたり、組織改編ができない)
  • 役員の支援がない
  • プロジェクトにかかわる人たちが十分な時間をコミットしてくれない
  • 現場や顧客と直接会話させてくれない

 イノベーションプロジェクトが成功する確率は決して高くない。だから、サービスデザイナーもプロジェクトを選んだほうがいい。これはクライアントにも言える。自社のイノベーションプロジェクトでこれが当てはまらないように準備をしたほうがいい。

関連記事