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世界で最も進んでいるイギリス政府のデジタル変革全容:2017年度版 "Government Transformation Strategy"

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原文:Government Transformation Strategy

The Government Transformation Strategy 2017 to 2020

大臣による序文

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 治めることは奉仕することです。私たちの目的は国家の安全保障、安全と繁栄を維持し、私たちを選挙で選んでくださった国民の皆様に約束したものを提供することです。

 しかし、国民が国家の都合で生活をさせられていると感じるケースがあることも事実です。政府は国民に奉仕するのではなく、君主として国民を統治していると。奉仕するように投票してくださった人々ではなく、統治する人々のために国が働くという見方です。このように選挙時に約束した誓約の実行能力に対する疑念からか、毎日人々に感じているフラストレーション(電話で話をするために申込用紙に記入しなければいけないなど)からか、政府は人々が望むことをますますできていないように見られることもあります。

 このような幻滅は見えやすいものです。ここイギリスやその他の民主的国家のどこかで、人々は投票箱を通じてもっと対応できる政府を期待し求めています。それは時の政府に対する国民からの呼びかけです。 現代民主主義の繁栄を望むのであれば、私たちはその要求に応える義務があります。

 これは簡単な作業ではありません。 政府はこれまで以上に複雑で広範囲に及んでいます。現代政府のように無数のサービスと機能を調整し、数百万の人たちにサービスを提供している企業はこの地球上に存在しません、たとえ世界最大の多国籍企業であろうと。 同様に、私たちの義務は、能力、年齢、性別、意見、または彼らが住むことを選んだ場所にかかわらず、すべての人に奉仕することです。これらの理由や、また官僚組織自体が独占的なサービス提供者であるため、政府はビジネスのやり方を変えるため可能性があるデジタル技術の活用に遅れてきました。つまり大きくて、遅いという二つの短所を持ち合わせています。人々が政府が公共サービスを効果的かつ迅速に提供することを正当に期待している世界では、それはまだ難しい課題です。

 変わることが至上命題です。しかもスピードとスケールをもって。これは変革です。それは本質的には仕事、文化、気質における変革、すなわちデジタル技術によって可能になった変革です。デジタル技術自体は変わりません。デジタル技術は変化を革新的にし変革とします。

 そのデジタル変革をどのように実行していくのか、それがこのドキュメントの主題です。 ここではすでに行っているデジタル変革の進捗状況を説明しています。 それは国民と国家との間の小さなやりとりを簡素化することから、世界規模の大きな変革プログラムまで含まれます。しかし、これははじまりにすぎません。この戦略は政府が行おうとしているの幅広いデジタル変革の方向性を示しています。つまり、働く仕組み、組織運営方法、国民に対して奉仕する仕組みです。これは、すでにデジタル変革をどこの国よりも多く実行して実績を出しているイギリスによる、デジタル変革を実行する他のどの国よりも野心的なプログラムです。

 私はこの国の優れたイギリス官公庁職員とこれまで以上に優れた政府サービスを提供するという課題に一貫して対応する彼らの姿勢を賞賛します。彼らは日々の仕事の中で感動的で価値ある公共サービスの精神が生きていること、そして現代のイギリスで力強く生きていることを証明しています。しかし、公共サービスにおけるデジタル変革のための野心を達成するためには、彼らイギリス官公庁職員たちによる意識と日々の意思と実行力が必要となります。ビジネスとは違って、私たちは競争によって変化を余儀なくされることはありません。変化を行うのはそれは正しいことだからです。純粋に私たちが奉仕する国民、選んでくださった国民にとっての公共サービスに変わるためです。もし私たちのこのデジタル変革が成功すれば、私たちは民主主義が国民にとって本来あるべき姿に回復する大きな貢献を果たすことになるでしょう。

The Rt Hon Ben Gummer MP

Minister for the Cabinet Office and Paymaster General(内閣府担当大臣/主計長官)

イントロダクション

 政府はデジタルをより自在に活用してサービスを提供することにより、国民と国家の関係を変革することができます。2012年のGovernment Digital Strategyを発表して以来、大規模な処理を要求する公共サービスの変革"digital by default(デジタルを基本とする)"を通じて、デジタル変革が実行可能であることを証明してきました。現在、新しいデジタル関連職が各官公庁全体で確立されています。政府における各官公庁はプラットフォーム、コンポーネント、コード、パターン、ベストプラクティスを共有することにさらに長けてきました。これは非常に強力な基盤です。

 英国政府は世界で最もデジタル的に進んだ政府の1つです。私たちは2016年の国連におけるE-GovernmentとE-Participationの調査結果でトップにたちました。世界的に有名で数々の受賞歴のあるGOV.UKを開発し、オープンにしました。そしてそれは世界各国の政府によって再利用され活用されました。政府デジタルサービス(Government Digital Service、GDS)は、政府のデジタル化をリードし国際的にコピーされているモデルです。

 多くの官公庁が公共サービスの提供方法を変革しはじめています。これにより、かなりの数のサービスにおいてユーザー体験が向上しています。しかし、多くの場合、官公庁や政府機関の実運営方法自体は変わっていません。これは人との直接的な対面サービスを持たない組織は依然としてデジタル変革の焦点から外れ、その利益を享受していないことを意味しています。

 次のデジタルを活用した変革は三つの大きなコンポーネントから成り立っていて、この三つがデジタル変革の範囲を形づくっています。

  • 国民との対面サービスの全面的な変革 - 国民、企業、公共サービスを提供する職員ユーザーのユーザー体験の向上を継続して行う
  • 完全な部門変革 - 柔軟な方法で政策目標を実現するために政府機関の組織に影響を与え、公共サービスを提供する全てのチャネルを改善し、効率性を高める
  • 政府の内部からの変革。これは直接的に政策成果や国民との対面サービスを変えることはないが、政府がより良いコラボレーションを行い、デジタル変革を効果的に実行するためには不可欠となる

 各官公庁はますます従来の組織の壁を越えて協力する必要があります。 欧州連合(EU)を離脱する国民投票は、変化する環境に敏感に適応できる必要性を高めています。政府の異なる組織を通じて継ぎ目なく実行される公共サービスを構築するためには、次のステップに進む必要があります。私たちはデジタルを更に強化します。ユーザーニーズを満たし、適切な安全基準を満たしている場合、政府間でデータを共有しやすくし、安全に管理されるようにします。

 私たちのデジタル変革へのコミットメントは、デジタル時代のリスクを考慮して実行する必要があります。 National Cyber Security Strategyでも記載されているように、サイバー攻撃はより頻繁に、洗練されてきており、サイバー攻撃の成功はより深刻な被害となります。したがって、私たちは犯罪行為を抑止し、個人のプライバシーへのコミットメントを維持する方法で前進する必要があります。

ビジョンと目的

ビジョン

 私たちは国民と国家との関係を変革します。国民により多くの力を与え、国民のニーズにより素早く対応します。

 インターネット時代のツール、技術やアプローチはこれまで以上に政府を助ける力となり機会を創出します。

  • 国民が必要とするものをよりよく理解する
  • より迅速かつ低コストでサービスを組み立てる
  • データと根拠をに基づいて、継続的にサービスを改善する

 私たちは公共サービスを変革し、また政府自体をデジタル組織にすることにより:

  • 国民、企業、その他のユーザーは公共サービスを通じてより一貫性のある体験を得られることができる − ユーザーは一般的なサービスを日々利用しており、公共サービスへ満足する期待値はより高まっている
  • 選挙で選ばれた政府は更に直近のインパクトを与え、情報とサービスをより迅速に提供することにより政策ゴールをユーザーの期待に合うように提供できる - そして政策が変更した場合も速やかに変えることができる
  • 政府が構築、変更、運営するコストと時間が削減され、公的資金が節約され、政府は社会経済的および政治的変化に迅速に対応できるようになる
  • 国民に個人情報が安全であり、期待されるように活用されるという自信を国民に与えると同時に、個人情報を含まない公共データも適切な場合は再利用できるように公開し透明性を更に高めることにより国民と国家の信頼を高める
  • 根源的に安全なシステム"secure by default"を基本としてシステムを作ることによりデジタル変革のあらゆるステージを通じてサイバー犯罪から守ることを確実にする

目的

 国民と国家の関係を変革するため2020年までの間に政府は:

  • 世界トップレベルのデジタルサービスを引き続き提供し、モダンで効率的な方法でフロントエンドからバックオフィスまで政府の運営方法を変える
  • 組織内の職員からリーダーまで適切な技術と文化を醸造し、国民が得られる結果に焦点を当てて政策とその実行をまとめ、サービスを反復して実証ことにより学習が可能な環境にする
  • 公共に奉仕する人間としてより良い仕事より良い職場のツールやプロセスを構築する - 調達、管理、IT、ビジネスケース、人事プロセス、官公庁全体にわたる共通技術、官公庁職員のためのより良いデジタルツール
  • データをより有効に活用する - 透明性だけでなく、公共と民間を通じて変革を可能にするために
  • 共有パターン、コンポーネント、確立されたオープンスタンダードを含む共有プラットフォーム、再利用可能なビジネス機能を構築、運用、反復、組み込むことにより変革を加速する

 この戦略は上記の5つの目的のために構成されています。 それぞれの目的について、私たちは2020年までに何を達成するかを明確にしています。

 私たちは次のことに基づいて実行します:

  • 私たちはデザイン原則デジタルサービス標準技術の行為準則に基づき引き続きユーザーのニーズからはじめる
  • ユーザーは公共サービスを通じて、政府の決定に影響を受けず、日々の優先事項を提供する一貫した経験を必要とする
  • 官公庁職員、仲介者および企業もユーザーであり、成功するためには、彼らのニーズも理解しなければならない
  • 全ては - 特に機密情報または個人情報 - 適切なレベルのセキュリティー基準に基づきデザインされ、管理される
  • 各官公庁は調達方法にかかわらずリスクに対する責任をもつ
  • 私たちはセキュリティのために設計し、適切なサイバーとプライバシーの保護手段をデジタル変革に組み込みます

ビジネス変革

 私たちはここ数年で大幅な進歩を遂げてきましたが、依然として改善が必要な既存サービスはまだまだたくさんあります。「あまりにも素晴らしいオンラインサービスだからみんなそれを好んで使う」という2012年度のGovernment Digital Strategyの野心的な目標を達成するにはまだまだやることがあります。

 これまで私たちが学んだことに基づいて、サービス変革の範囲を広げなければいけないという各官公庁間の共通認識があります。その必要性とは:

  • 政策の策定とサービスデザインを緊密にする
  • ユーザーに提供するサービスとそれを提供する作業の双方をカバーする
  • ユーザーの定義を広げる - 例えば政府が提供るAPI(アプリケーションプログラミングインターフェイス)を利用する第三者サービスを通じて一部のユーザーが政府とやりとりする場合など
  • 政府はさまざまなチャネル(オンライン、電話、対面など)を通じてサービスを提供していることを認識する
  • 国民と対面するオンラインサービスを持たない公共部門もカバーする
  • 政府がコンテンツとサービスを提供し、組織の壁を越えてプロジェクトを実行できるようにする
  • 柔軟に対応する

2020年までに何をするか:

政府は本議会のために以下を優先分野としている:

  • 統合されたエンドツーエンドサービスのデザインと提供
  • 主要な変革プログラムを提供
  • 変革への全政府的アプローチを確立し、官公庁全体のより広範な変革のための基礎を構築する

実現するために:

  • 各官公庁と政府機関はデジタルサービス標準に基づいたデジタルサービスを構築することで公共サービスのユーザー体験を大幅に継続的に向上させていく
  • 各官公庁は政府主要プロジェクトポートフォリオ - Government Major Projects Portfolio(GMPP)- および2015年の支出レビューにおいてコミットに基づき変革プログラムを完了し、すべての人がアクセスできるマルチチャネル・サービスを提供する
  • 各官公庁はそれぞれに変革のための実験アプローチを探し、何が効果的で何が効果がないかを学ぶ
  • 私たちは共通言語、ツール、テクニックを構築し、官公庁をまたがる大きな変革へのアプローチ方法や民間部門からの学びなど知識と経験を共有するために各省庁をまたがる仕組みを確立する
  • 私たちは各省庁をまたがり変革を実現する最良の方法を提供するフレームワークを構築する
  • 政府デジタルサービス(Government Digital Service、GDS)は古い技術を置き換える戦略的アプローチを支援するために、技術の行為準則およびその他の適用可能なスタンダードをサポートする指針を更新する

人材、技術、文化を育てる

 2012年のGovernment Transformation Strategy以降、より多くのデジタル、データ、技術の専門家が政府全体で採用され、政府の技術能力が大幅に向上しています。現在の課題は競争の激しい市場でこれらのデジタル技術の専門家を継続的に惹きつけ、採用し、留まってもらうことです。私たちは次のように文化を発展させたいと考えています:

  • 政府全体にデジタル技術を組み込む
  • デジタル専門家が政府を理解できるようにする
  • 官公庁やそのほかの職員がデジタルを理解できるようにする
  • アジャイルとプログラム管理におけるリーダーのスキルを強化する
  • アジャイルのアプローチを活用して短期間で反復し、政策開発とサービス提供を並行できる優れた方法を確立する

2020年までに何をするか:

 私たちの野心は世界で最も多くの熟練したデジタルスキルを有する官公庁職員が集まり、素晴らしい公共サービス(A Brilliant Civil Service)となるための公共サービスビジョン(Civil Service vision)を実現することです。

実現するために:

  • 各省庁がデジタル、データ、テクノロジーを最適に整理できる原則を確立する
  • 政府のデジタル、データ、テクノロジー(DDaT)職を増やし、その職種の一貫したキャリアパスと報酬モデルを確立する
  • デジタルアカデミー(Digital Academy)を通じてDDaTプロフェッショナルにとって可能な限り最高の学習と開発の機会を創造する
  • データサイエンスキャンパス(Data Science Campus)データサイエンスアクセラレータプログラム(Data Science Accelerator training programme)を通じて政府のデータサイエンス能力を高める
  • イギリス政府をデジタル、データ、技術の多様な人材を惹きつけるリーダーにする
  • 人事部門であるCivil Service HRおよび各官公庁と協力して、デジタルツールとテクニックが他の職種にも組み入れられるようにする
  • デジタル専門家ではない職員にデジタルを活用した新しい働き方の可能性を理解する支援をする
  • 各省庁向けのトレーニング機関であるCivil Service Learningと協力して、現在および将来のリーダーに適切なトレーニングを実施、デジタルプロジェクトを効果的に管理し、アジャイルなやり方で働き、デジタル時代の組織を管理する経験を提供する
  • ユーザーリサーチに基づく政策策定とサービスデザインコミュニティとの協力した反復検証を可能にする

官公庁職員向けのより良いツール、プロセス、管理を作る

 デジタル政府はユーザーに優れた公共サービスを提供するだけではありません。適切なデジタルツール、官公庁内のIT技術、管理およびプロセスによって世界トップレベルの公共サービスのための適切な環境を作り出します。今日では、政府組織全体で以下のような幅広い多様性があります:

  • 官公庁職員によって日々使用されるテクノロジー
  • プログラムが管理されてる方法
  • 内部プロセスとコントロールが迅速な政策策定を支援するかどうか
  • 契約業務(購買と調達の両方)
  • 保証(品質管理、サービス保証、金銭的価値を含む)

2020年までに何をするか:

 私たちは以下によって官公庁職員の力が発揮できる環境を整備します:

  • 職員が働く政府の建物には共通で相互運用可能な技術があり、文化としてはオープンでデジタルで実現可能な政策策定とサービス提供ができるようにする
  • 官公庁職員が仕事をする場所に依存しない正しいツールを提供する
  • 官公庁職員が使うデジタルサービスのケースを政府全体を見渡し標準的な政府機能のための共通するデジタルツールなど探ることにより調査する

 私たちは政府のすべての部門が、部門をまたがるサービスを含む、迅速なサービスを管理、発見、効果的に運用ができるようにします。

 デジタルマーケットプレイスのアプローチをベースに、私たちはユーザー中心、デザイン主導、データ駆動型のオープンなアプローチを2020年までに政府全体の調達と契約に組み入れます。

さらなるデータ活用

 データはより効率的で効果的な政府および公共サービスを可能にし、国民のニーズに応えるための重要なリソースです。データはそれ以外全てを支える基盤です。

 私たちは国民からの信頼を獲得し、さらにそれを維持し、適切なガバナンスの枠組みの中で、個人的かつ機密性の高いデータが安全かつ確実に倫理的に扱われることを保証する必要があります。

 政府のデータは収集した組織内でのみ保持され、使用されることが多く、古いレガシーシステムは情報を共有することを困難にします。政府が保有するデータセットには数多くの重複や矛盾があります。私たちは国民が安心できるやり方で政府機関をまたがったデータ共有を改善する必要があります。

2020年までに何をするか:

本議会では、以下の優先事項に焦点を当てます。

  • 公共サービス(特に組織の壁を越えるサービス)のため、イネーブラーとしてのデータ活用を改善する
  • 適切な場合には政府データをオープンにし、APIを通じて政府サービスを組織内外に提供し続ける
  • デジタル経済法案(Data Economy Bill)が議会で可決されれば、そのデータ共有条項を通じ、政府のすべてにおけるデータ利用への障壁を取り除く
  • 新しく政府のデータ管理責任者(Chief Data Officer)を任命し、データ活用をリードする
  • 新たにデータ諮問委員会(Data Advisory Board)を設置し、組織の壁を越えるデータ活用のために数多くのデータ活用の事例や加速できる分野を見ることにより協力体制を支援する
  • 意思決定を改善するためのデータ活用の推進。データ分析者やそれ以外の職種を含めデータサイエンスと分析の能力を政府機関をまたがり構築拡大する
  • 公共部門の労働者が - 安全かつ適切にデータを管理し使用し、公共部門で働く人たちがデータを共有する際に必要な倫理を理解する
  • 登録者(政府全体で取得する正式なリスト)の国家的データ基盤を構築し、適切に保存する
  • 政府内外のユーザーのためのデータ検索ツールの改善する
  • 政府の主要なデータリポジトリを格納および管理する方法を改善する

共通プラットフォーム、コンポーネント、再利用可能なビジネス機能の構築

 2010年以来、私たちはより根本的にデジタル政府に移行するための強力な第一歩を踏み出しました。私たちはコード、パターン、プラットフォーム、コンポーネントを共有します。私たちは政府全体に適応できる技術的、サービスデザイン上の問題解決に役立つベストプラクティスを共有します。 政府全体の共通プラットフォームと共通サービスが目指すべき未来です。

 私たちはビジネス機能(ビジネスの結果を出すために必要なテクノロジー、プロセスおよび人材の組み合わせ)、共通コンポーネントをプラットフォーム上に組み立てます。

 GOV.UKは政府の単一ドメインであり、オンライン取引が開始される場所です。私たちは部門をまたがるサービス(または地方行政やアウトソースを含む可能性のある第三者によって提供されるサービス)のためのGOV.UKのより良い利用方法を確立します。

2020年までに何をするか:

 素早く、安価で簡単にデジタルサービスを構築し、すべての政府サービスのユーザーに一貫したユーザー体験を提供するために、再利用可能な共有コンポーネントとプラットフォームを構築します。

 私たちがすでに実行したことを踏まえ、2020年までの政府の優先事項は次のとおりです:

  • 大規模な単一サプライヤと複数年のIT契約を終了
  • 新たに共有コンポーネントとプラットフォームを構築、また、すでに構築完了のものを拡張してより多くのサービスを乗せる
  • 公共部門の再利用を容易にするために、コンポーネント、プラットフォーム、および機能の標準と実装ガイドラインの開発と公開
  • コンポーネント、プラットフォームおよび機能の再利用への障壁を取り除き、中央政府を超えた再利用の検討
  • 政府デジタルサービス(Government Digital Service、GDS)および各官公庁がすでにシングルドメインのGOV.UK上に構築したサービスとコンポーネントを運営の高い信頼性、セキュリティ、パフォーマンスの標準をさらに改善してユーザーのニーズを満たし続ける
  • GOV.UK Verify(GOV.UKの認証システム)をより有効に活用し、2020年までに到達する2,500万人のユーザーに向けて企業や仲介業者のための認証システムのオプションを検討する
  • 政府内外の利用可能なAPIの数を増やすことで「卸売り」を行う(会計士がクライアントの許可を得て自動的に納税申告書を提出できるようにするなど)
  • 私たちが構築したものを海外にも共有、海外でのベストプラクティスを学び自らのサービスをさらに改善する
  • 2020年までに政府のレガシーコンテンツと老朽化したパブリッシュ慣行を全面的にオーバーホールし、公共サービスをクリアかつ管理の行き届いた探しやすいものにする

2020年以降のビジョン

 現在の主要な変革プロジェクトの大半は2021年までに完了する予定です。

 しかし変革は継続的なプロセスです。これらの主要なプログラムを提供する一方で、2020年以降の計画を立てる必要があります。変化に適応し続けることで、進化し続けるテクノロジーに対応することができます。そして、政府を変革する勢いを維持できるようになります。

 政府の柔軟性を高めるため、2020年以降のデジタル変革のための明確な計画を立てます。デジタル時代に適合させるために政府がさらに必要とする変革を理解するために必要な調査と準備作業を行います。それは以下を含みます:

  • 将来どのように政府の構造が変わる必要があるか
  • 政策はどのように作られるか(例えばプロトタイプを作成し、証拠とフィードバックに基づいて素早く反復するなど)
  • 私たちのビジョンを実現するために必要なその他の変更

 これらのことを達成すれば、私たちは政府の形を変えることとなります。私たちは国民を第一におき、モダンで効率的な方法で国民のニーズを満たします。国のニーズを満たすために迅速に適応し変化する政府です。

解説

この記事は英国政府のデジタル変革の基本方針を説明しているGovernment Transformation Strategyの現時点での最新版の翻訳です。アジャイル、サービスデザイン、デザイン思考など文脈にモダンなアプローチを感じることができる素晴らしい戦略です。

イギリス政府は2012年にはGOV.UKを立ち上げて10省庁1700サイトの41000ページをひとつのウェブサイトに統合し、さらにGitHubにソースコードを公開しました。海外の多くの政府機関がこのイギリス政府のをお手本としているため、このような取り組みは今ではそれほど珍しくないかもしれません。そういう結果もあり、この文章は結果に基づく自信に満ち溢れています。自分たちが一番と言い切ってるし!

しかし、残念ながらイギリス政府のデジタル変革の事例を日本で紹介する記事をあまり見る機会がありません。その結果(だけではないでしょうが)、日本の公共サービスはこの大きなデジタル変革の流れに乗り遅れている気がします。全てを一度に紹介することはできないものの、基本方針を説明しているこの最新のドキュメントを日本語化することで、日本の人たちにも海外の政府がどのようにデジタル変革に向き合っているのか知るきっかけになればと考えています。

カタパルト式スープレックスなかむらかずや

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