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書評|ジョブ理論のオリジナル『Jobs To Be Done』by Anthony W. Ulwick

 サービスデザインをするうえでユーザーニーズを知ることはとても重要です。とはいえ「ユーザーニーズ」ってなによ?という疑問にすっきり答えられない。英語でUXやサービスデザインに関するいろんな本や文献を読んでいると"Jobs To Be Done"という言葉がよく出てきます。そんな中で読んだのがアンソニー・ウルウィックの『Jobs To Be Done』です。

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アンソニー・ウルウィック

「片付けるべき仕事」

 日本語だと『ジョブ理論』と訳されているフレームワークを最初に考えた人。ちなみに有名にしたのはイノベーションのジレンマで有名なクレイトン・クリステンセン教授。この「片付けるべき仕事」をすごく簡単に安くできるようになるとすごいヒット商品になる。すごくというのはだいたい20%以上だそうです。そしてこの「片付けるべき仕事」を簡単にする、安くするのがユーザーニーズなわけです。

Jobs to be Done: Theory to Practice (English Edition)

Jobs to be Done: Theory to Practice (English Edition)

 

 この本を読んでると、この人はリーンスタートアップは大嫌いなんだろうなあというのがひしひしと感じられる。そうははっきりと言ってないんだけど。ユーザーが「片付けるべき仕事」さえちゃんと明確になればあてずっぽうにMVPなど作らんでよろしい。失敗などたくさんする必要ないというのが彼の主張です。

 このジョブ理論が面白いのは「簡単/安い」であればいいというわけでもないところ。「大変/高い」でもニーズがある。たとえば空港で入国検査が終わった後の飲み物。たとえば人気のあるコンサートのチケット。一番大変なのは中途半端な位置のプロダクトやサービス。5%前後ではあまり効果は期待できない。だとしたら取るべきは現状維持。それかもっと改善できそうな「片付けるべき仕事」を探す。

 ジョブ理論はかなり厳密な手法なのでこの本を読んでいると堅苦しい気分になってきます。ただ「片付けるべき仕事」という観点からユーザーニーズを導き出していく手法はかなり参考になります。この"Jobs To Be Done"というフレーズは英語のUX系の本では本当によく出てくるので、知っておいて損はないです。

 リーンスタートアップ的なサービスデザインで効果を感じない人は試してみてもいいかもです。

この記事はService Design Advent Calenderの一部として参加しています。インフォバーンの井登友一さんがすでにジョブ理論とサービスデザインの比較記事を書かれていた。サービスデザイン的にはこちらを参照していただいたほうがすっきりするかもです。