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世界的なゲーム『ラブレター』を生み出したゲームデザイナー、カナイセイジさんの発想法

 ボードゲームやってますか!?スマホとかプレステじゃなくて、『人生ゲーム』とか『モノポリー』みたいな形のあるゲーム。こういったアナログゲームが流行っています!ボクも『サービスジオラマ』を作るときはかなりゲームメカニックを意識したんですよ!

 『チケット・トゥ・ライド』や『パンデミック』といった新しい定番ゲームがたくさん生まれている現在は『ドラゴンクエスト』や『ファイナルファンタジー』が出た頃のファミコンブームの頃に近いものを感じます。そして日本人デザイナーとしてアナログゲームの新しい定番『ラブレター』を世界に送り出したのがカナイセイジさんです!

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世界的なゲームを生み出した発想法

【カタパルト式なかむら】

『ラブレター』はどういう発想から生まれたんでしょうか?

【カナイセイジさん】

 今ゲームには三つの要素があると言われていまして。テーマ、メカニクス、コンポーネント。『ラブレター』の場合はコンポーネントがスタート地点でした。

『500円ゲームズ』というワンコイン(500円)で販売できるという“縛り”でゲームを作る企画があったんです。16枚のカードゲームという発想はここからなんですよ。そこで『ラブレター』の原型となる最初のゲーム『RR』を作りました。これが100個売れたんです。2010年で来場者が1000人くらいのイベントだったので、これは大ヒットといえました。その次に作ったのが『R』(再版名R-Rivals)で三作目が『ラブレター』でした。

『RR』も『R』も二人用のゲームだったので、16枚という縛りでさらに複数人でプレイできるゲームを作ろうというのが『ラブレター』のゴールでした。あと少し意識していたのが『ごいた』ですね。あれは32枚で4人用なので、ちょっとキャッチーな道具を用意できないか考えていました。

【カタパルト式なかむら】

 キャッチーさといえば、お姫さまにラブレターを送るあのテーマはどうやって思いついたんですか?

【カナイセイジさん】

 これは自分をほめてやりたいですね(笑)。最初はスパイものだったんですよ。スパイが偉い人にご注進するというゲーム。ただこれだとどうも色気がない。そこでふと「あ、お姫さまでいいんじゃないか?」って思いついたんですよ。あれは自分でもヒットでした。

【カタパルト式なかむら】

 スタートアップの世界だとプロトタイプを作って、ユーザーテストをして、と一つのプロダクトを完成形まで持っていくのに随分と時間がかかります。

【カナイセイジさん】

『ラブレター』は安産型でした(笑)。その原型となるゲームが二つあったからかもしれませんが、2、3ヶ月でできました。もちろん、ユーザーテストとかもやるんですが、評価されるゲームはアイデアの段階でもかなりいいことが多いです。

ゲームデザイナーとしての出発点

【カタパルト式なかむら】

 すでにいろんなインタビューで聞かれてると思いますが(笑)、ゲーム作りをはじめたきっかけを教えてください。

【カナイセイジさん】

 中学生の頃からテーブルトークRPGが好きで、大学でもロープレサークルに所属していました。ゲームが好きで自分でも作りたくなった。でも、テーブルトークRPGは作るのが大変。トレーディングカードゲームも考えたんですが、これも一人で作るにはヘビーすぎる。イラストもたくさん必要だし、勝ち方もたくさん考えないといけない。一人でも作れるゲームということでボードゲームに落ち着いた感じですね。

【カタパルト式なかむら】

 今でこそアナログゲームはすごい盛り上がりを見せていますが、当時はまだそれほど盛り上がっていませんでしたよね?

【カナイセイジさん】

 時期的にはプレステ2が発売されて家庭用ゲームコンソールが全盛時代。『ファイナルファンタジーⅪ』が出て家庭でもネットゲームが広まったのが2002年です。あと『ラグナロク・オンライン』とか。まだボードゲームの名作ラッシュ前で、ブームがくる兆しはなかったように思います。いまだったら発表の場はたくさんあるけど、昔はゲームマーケット自体があまり大きくなかったですし。主にコミケに出店してましたね。メディアも自分ブログくらいしかなくて。

【カタパルト式なかむら】

 アナログゲームは世界的なブームです。それが日本にも広まって来たという見方もできますが、日本ではどうして広まったんでしょうか?

【カナイセイジさん】

 いくつかの要因があると思います。人狼ブームが一つ。東日本大震災で非電源ゲームに注目が集まったのが一つ。アグリコラとかドミニオンなどの名作がゲーマー層に一気に広がったというのもあります。真偽はわかりませんが、いわゆる有名人がツイッターでボードゲームに関してツイートしたとか。そういう口コミもありましたね。

これからゲームが進む道

【カタパルト式なかむら】

 ここ数年でアナログゲームは大きく変化してきました。カナイセイジさんはこれからアナログゲームがどうやっていくと思いますか?

【カナイセイジさん】

 これは非常に難しい質問ですよね(笑)。本当にいろんなアイデアが毎年でて、出尽くしたと思っても新しいものが出てくる。アイデアを持った人はたくさんいるんですよね。

 例えば『パンデミック・レガシー』なんて本当に目からウロコでした。一回しかプレイできない。ネタバレができないから口コミも伝わりづらい。それでもあの発想力とゲームとしての完成度であれだけの大ヒットになった。

 あと大きいのが企画の作り方が変わってきている。最近だとキックスターターから始まるゲームが増えてきている。そして目がつけられるとクラウドファンディングで資金調達ができる。面白いゲームが増えて、市場も大きくなってきている。こういう環境の変化によって新しいアイデアが出やすくなっていると思います。

【カタパルト式なかむら】

 日本のアナログゲームシーンはいかがでしょう?

【カナイセイジさん】

 今は人狼や、『ラブレター』などの軽いゲーム、アニメや漫画などの別コンテンツとのコラボレーションを通して、多くの方がアナログゲームに触れる機会を得ていると思います。ゲームを遊べるカフェとかも増えてますし。そうやって興味を持ってくださった方々を、いかにもう少しプレイ時間が長くて面白いゲームのほうに誘導していくかが焦点となっているかと思います。初心者として入ってきた方に、楽しみながら中級者になっていただきたいと皆さん頑張っています。

【カタパルト式なかむら】

 以前インタビューでそのうち重いゲームも作ってみたいとおっしゃっていました。

【カナイセイジさん】

 実はもう作ったんですよ。『ウニコルヌスの騎士たち』という協力型のゲームを出しました。

【カタパルト式なかむら】

 おお!これは面白そうですね!早速買います!

【カナイセイジさん】

 実はすべて売り切れてしまったんですよ……。日本だとまだまだこういう重いゲームを重版するのって大変なんですよ。倉庫や在庫の問題とかがあるので。

【カタパルト式なかむら】

 それでも『デッド・オブ・ウィンター』みたいなヘビー級のゲームの日本語版が出るくらいだから日本でも本格的ゲームが普及する素地はできてると思うんですけどね!一ファンとして日本のパブリッシャーさんたちにはもっと頑張って欲しい!!

 海外展開とかはあるんですか?

【カナイセイジさん】

 はい、おかげさまで『ウニコルヌスの騎士たち』も海外版が出ることになりました。『ラブレター』では海外向けのパッケージングを作っていただいたんですが、今回はアートは日本版のままの予定です。こういうアニメっぽい絵にも一定の需要があるそうです。

【カタパルト式なかむら】

 それを聞いて安心しました!英語版が出たら早速買います!すごく待ち遠しいです。今日はありがとうございました!

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