原文:"Share&Charge launches its mobile app, on-boards over 1,000 charging stations on the blockchain" by Stephan Tual, May 1, 2017
以前にShare&Chargeについてはブログでも言及しましたが、5日間のソフトローンチの後、正式にShare&Chargeのアプリが公開されてました。数千の電気自動車用の充電ステーションをパブリックのEthereum ブロックチェーンで稼働されたことに誇りを持っています。
これによりピアツーピア方式(P2P)での電気自動車充電がドイツで実現しました。Share&ChargeはInnogy Innovation Hub*1のプロジェクトで、Slock.itは個人が自宅の充電ステーションをP2Pで貸し出し、以下のことを可能にしました:
- オーナーが充電ステーション設置コストを回収できる
- 電気自動車の運転手は身近なエリアで多くの充電ポイントにアクセスできる
- 小規模な電力会社や中小企業が手頃で信頼性の高いペイメントソリューションにアクセスできる
このアプリは2017年4月28日からiOS AppStoreとGoogle Playの両方で利用可能になりました。
現時点では充電スタンドはドイツ限定して展開されています。
クリーンエネルギー市場へのインパクト
現在、約1,070の充電ステーションがShare&Chargeに登録されています。二つの種類があり、一つは個人の充電ステーションのオーナーがShare&Chargeのバックエンドに接続して追加したもの。もう一つは小規模のまたはサードパーティのプロバイダによって運用されている充電ステーションです。アプリケーションが公開されたばかりなので個人所有の充電ステーションの数はまだ多くありませんが、今後注目して行きたいセグメントです。
2017年1月現在、6,181台の公共充電ステーション(出典:statista)がありますが、45,150台のEV(電気自動車)所有者の92%が自宅に充電ステーションを持っています(出典:dlr.de)。
つまり自宅に充電ステーションを設置している個人所有者の15%がShare&Chargeを通じてそれらを利用可能にした場合、ドイツの充電インフラストラクチャーは追加の設置なしで2倍になります。
まだ道のりは長い
しかし、これは最初のステップでしかありません。電気自動車を充電するために真に分散されたP2P経済を確立するには、多くの技術的および規制上の課題があります。
Share&ChargeとSlock.itはより技術的なユーザーのためにアプリケーションのブロックチェーンの側面をもっと表面に出していこうとしています。例えば、最終的に別々に生成された秘密鍵をアプリケーション内にロードすることができるようになると期待しています。
もうひとつは、充電ステーションに直接組み込まれたハードウェアブロックチェーンノードです。Kirchbergで同様な取り組みをしましたが、これを継続していきます。ハードウェアをブロックチェーンノードとして組み込むことにより充電ステーションレベルでブロックチェーン駆動のアクセス制御が可能になります。現在はアクセス制御はアプリ内で行われ、会計処理はオンチェーンで行われています。
更新可能なスマートコントラクト
Share&Chargeアプリは公開されていましたが、スマートコントラクトのコードはテクノロジーが進化するにつれて引き続き改善されていきます。これらのコントラクトは100%更新が可能で、Share&Chargeが新しい機能を追加できるだけでなく、緊急事態が発生した場合に素早く対応することができます。これはデータとロジックの明確な分離によって可能になっています。このプロジェクトの技術的側面についてさらに詳しく知りたい場合は、当社のCTOであるSimon Jentzschのブログ記事"Share&Charge Smart Contracts: the Technical Angle"を参照してください。
スマートコントラクトのシステムが十分に検証され、バグがなくなれば、Share&Chargeは将来的にアップデート機能を削除したいと考えています。そして、将来的には電気自動車の充電のための真の分散型市場を作り出すことを願っています。その間、エキサイティングなバグハンティング(Bug Bounty)を開催し、私たちはスマートコントラクトの継続的な見直しを行なっていきます。このためクリプトコミュニティからのフィードバックは非常に貴重です。ぜひTwitterを通じてコンタクトしてください。
隠れた秘宝:ユーロトークン
様々なイノベーションをShare&Chargeで行いました。その中でも取引処理のために預託に1対1で対応した「暗号化ユーロ」を導入したことは特に誇りです。
現時点では、このトークンは取引することはできません。Share&Chargeプロジェクトでのみ使用するために予約されています。しかし、電子マネーライセンス*2の取得をしようとしているプロジェクトの支払いプロバイダxtechのような企業は、この「暗号化ユーロ」の使い道に可能性を見出すでしょう。
解説
この記事はドイツのスタートアップSlock.itの創業者Stephan Tual氏によるブログ記事"Share&Charge launches its mobile app, on-boards over 1,000 charging stations on the blockchain"の翻訳です。ブロックチェーン、IoT、電気自動車にシェアリング経済とホットなキーワードがキラキラしているとても面白い事例です。ブロックチェーン上にIoTのハードウェアノードが乗っかるなんて超カッコいいですね!
これまでイーサリアム(Ethereum)周辺の概要を取り上げてきましたが、こうやって具体的な実装を見るとかなりイメージがつかめますよね。
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*1:Innogyはドイツ第二位の電力会社RWE AGの子会社。
*2:電子マネーはビットコインなどと違い、中央銀行などで集中的に管理されていて、それを扱うにはライセンスが必要。Facebookもアイルランドで電子マネーのライセンスを取得して話題になりました。