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日本の企業や組織が抱える根本的なWHYの問題|カタパルト式アンリーディング

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 日本はイノベーションをもっと推進しないといけない。日本は従来の製造業から脱却して新しい価値を生まないといけない。日本はもっと働き方改革を進めて効率的にならないといけない。いろいろと「しなければいけない」事は多いのですが、その解決策はまだ見えていない気がします。

 Newspicksで「ピラミッドかホラクラシーか。目指すべき「最強の組織」とは」という記事がありました。ただ、この記事は組織がどうあるべきというHowは語られているけど、なぜそれがいいのか、Whyが語られていない。Howが変わったからと言ってWhatは変わらない。根本的な問題はWhyです。Whyが変わるからHowもWhatも変わる。「しなければいけない」理由(Why)にハラ落ちできなければWhatもHowも変えられない。日本が足踏みしているのは意外とこんなところなのではないでしょうか?

目指すところ:ビジネスのエクスペリエンスとは

 製造業の大きなトレンドの一つはエクスペリエンスです。価値の源泉が単体のモノやサービスから全体のエクスペリエンスに変わってきているからです。垂直統合から水平統合といった手段(How)を変えるだけでなく、製造業の本質が変化してきています。いや、製造業だけではなく小売業や飲食業もエクスペリエンス化してきています。モノを売ってるのではなく、サービスを組み合わせたエクスペリエンスを売っている。

「ザッポスはたまたま靴を売っているサービスカンパニー」ザッポス創業者/CEO トニー・シェイ

"Zappos is a customer service company that just happens to sell shoes." -Tony Hsieh, Founder and CEO of Zappos 

 レコードやCDといったモノからSpotifyのようなサービスへの転換。ホテルのような大きな投資が必要なモノから「地元で暮らすように旅をする」というエクスペリエンスを具現化するairbnb。例えばクルマはモノなのでしょうか?それともサービスなのでしょうか?ソニーの新しいaiboはサービスとモノを組み合わせたエクスペリエンスの具現化ですよね。将来のポテンシャルが高い企業のランキング「The Fortune Future 50」に伝統的なモノを作る製造業はありません。

「スターバックスはコーヒービジネスではありません。ピープルビジネスです。」スターバックス創業者/CEO ハワード・シュルツ
“We are not in the coffee business serving people, but in the people business serving coffee.” - Howard Schultz, Founder and CEO of Starbucks

 変わらなければいけない理由:Whyの問題。それは、ビジネスのルールが変わったからです。モノが価値を生む時代が終わった。目指すべき場所はモノとサービスを組み合わせたエクスペリエンスビジネスです。

「事件は現場で起きている」エクスペリエンスにピラミッド型組織は対応できない

 従来の製造業はサプライチェーンや製品のライフサイクル管理が大事でした。だから企業はSCMやERPに投資した。サービスでは顧客管理が大事でした。だからCRMに投資した。すべてバックオフィスへの投資です。モノの時代のやり方(How)はそれでよかった。標準化による効率化(What)が大事でした。『踊る大捜査線』的に言えば「事件は会議室で」起きていました。価値はモノから生まれますから、計画大事。標準化大事。

 しかし、エクスペリエンスの価値は現場で生まれます。更にユーザーひとりひとりのエクスペリエンスは違います。デジタルチャネルではデータを使ってセグメント毎、ユーザー毎にエクスペリエンスを最適化する技術が沢山あります。AIでこの傾向はさらに加速していくでしょう。

 しかし、人によるサービスはどのように最適化したらいいのでしょうか。従来のピラミッド型の組織ではできません。そこで注目されているのが自律型の組織です。ボクが知る限りこのような組織の必要性を最初に説いたのはデイブ・グレイの「Connected Company」です。

 日本のアメーバ経営に近いと考えられますが、実際には違います。アメーバ経営はピラミッド型の組織を細かく分けていますが、自律型組織はそもそもピラミッドがありません。ピラミッドというレイヤー型の組織では現場で判断できることに限界があるからです。

 エクスペリエンスに重点を置いたビジネスを推進する企業は自律型の組織に変革する必要があります。

エクスペリエンスビジネスのための組織とは

「現場が勝手に判断したら全体最適できない」とか「社員は監視されていないとさぼって効率が悪くなるのではないか」とか「現場の判断で何か起きた時のリスクが取れない」とか「民主的な決め方だと人気投票でしかない」とかいろいろな疑問や懸念が浮かび上がります。

 これらの疑念や懸念は自律型組織に対する誤解から生まれています。フレデリック・ラロアの「Reinventing Organization」では事例をもとにそれらの疑念が杞憂であり、先進的な自律的組織を実践している企業ではきちんとプロセスや制度(プリンシパル)で運営されていることが解説されています。

 また、ゼイネップ・トンの「The Good Jobs Strategy」ではオペレーションの観点から自律型の組織が解説されています。自律型組織だからと言ってオペレーションの標準化ができないわけではない。ボトムアップのフィードバックから全体のオペレーションを日々改善していくのが自律型組織であることがよくわかります。

 今回紹介した三冊の本はいずれも日本語に翻訳されていません。これは非常に残念なことです。ピラミッド型と自律型は二者択一ではありません。部分的に取り入れることもできるし、ロードマップを作って徐々に移行することもできる。例えばBooking.comも現場だけアジャイルチームという自律型のチームにテスト的に移行しはじめました。まずは知ることです。そして、はじめることです。

まとめ

  • これからの企業が目指していくべきはモノとサービスを組み合わせたエクスペリエンスビジネス
  • サービスを取り入れてエクスペリエンスを最適化するには組織形態を変える必要がある
  • 組織は一気に変えるのではなく、徐々に変えていくことができる

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