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2018年は次のプラットフォーマーになる準備をはじめるべき年|カタパルト式アンリーディング

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ざっくり言うと

  • プラットフォームが変わるタイミングが近づきつつある
  • そのプラットフォームにふさわしい新しいエクスペリエンスを作り上げる企業が次の勝者になる
  • それをはじめるべきは今年

またプラットフォームが変わる時がきた

 パソコンの時代はOSがプラットフォームでした。Webアプリが登場してアプリの世界がガラッと変わりました。インターネットがプラットフォームのWeb2.0です。そして、モバイルアプリが生まれてモバイルとクラウドがプラットフォームを含めて変えました。いまはWeb3.0と言われています。それはプラットフォームが変わりつつあるからです。そのプラットフォームはブロックチェーンであり、IoTであり、プログレッシブWebアプリ(PWA)です。

 この流れは実は中国ではすでにはじまっています。テンセントとアリババがともにWeChatとAlipayをミニプログラムのプラットフォームとしてサードパーティーに開放しました。これは形は違うものの狙いはPWAと同じです。アップルのAppStoreやGoogleのPlayStoreも必要なくなります。

 2017年12月20日にWebKitがSafari Technology Preview 46のリリースノートでサービスワーカーの追加を発表しました。これによりSafariでプログレッシブWebアプリ(PWA)が開発できる道筋が見えてきました。iOSでの対応には言及されていませんが、期待できるのではないでしょうか。ボクが最初にPWAと出会ったのは2016年にアムステルダムで開催されたProgressive Web App Dev Summitでした。そこで紹介された技術とPWAで実現できるビジョンは非常に魅力的なものでした。それから約一年でようやくアップルがPWAをほぼ完全にサポートすることになりました*1

そもそもプログレッシブWebアプリとは?

 プログレッシブWebアプリとはWebアプリが完全にネイティブアプリのように動く仕組みです。それだけではなく、モバイルプラットフォームに依存せず、オフラインでも動くレスポンシブなアプリを開発できます。同じアプリがiPhoneでもAndroidでも動きますし、ネットワークにつながっている必要もありません。例えばクルマやスマートスピーカーに搭載される画面はスマホとは違うはずです。もっと柔軟なアプリケーションプラットフォームが必要です。それができるのがプログレッシブWebアプリです。

 アップルが対応したことでほぼ全てのブラウザでプログレッシブWebアプリが対応することになります。現在のWebアプリとWebサイトはほぼ全てプログレッシブWebアプリに移行していくと考えられます。最近だとTinderがPWA版をリリースしました。いわゆるWebサイトでもすでにワシントンポストもPWAのデモを作っています。Webサイトでもネイティブアプリのようなエクスペリエンスを実現することができます*2

 プログレッシブWebアプリだけでなく、EthereumやIOTAなどプラットフォームとしてのブロックチェーンが成長してきています。これらはモバイルとクラウドの次に来る新しいプラットフォームレイヤーとなる可能性を秘めています。2018年はこれら新しい技術を使った新しいサービスがたくさんではじめるでしょう。その中から新しいプラットフォーマーが生まれると予想されます。

クラウドとモバイル以降の新しいプラットフォーム

 1990年代はパソコンの時代、2000年代はインターネットの時代、2010年代はモバイルとクラウドの時代でした。2020年代はIoTの時代だと言われています。

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10年サイクルでホームファクターは増えている

 例えば最近流行りのスマートスピーカーはIoTの一種ですし、自動運転のクルマやウェアラブルなどもIoTと言えます。

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プラットフォームのレイヤーが上がると新しいプレーヤーが生まれる。

 Microsoft全盛の時代に誰もGoogleがプラットフォームを支配するなんて考えませんでした。そしてApple、Amazon、Facebookを加えた群雄割拠の時代になるとも誰も考えませんでした。プラットフォームのレイヤーが上がると新しいプレーヤーが生まれるというのがこれまで私たちが見てきたパターンです。

 古いプラットフォーマーも消え去るのではなく、新しいレイヤーに合わせて進化します。今のMicrosoftは昔のMicrosoftとは違うし、今のGoogleも昔のGoogleとは違います。それ以前のプラットフォーマーであるIBMやGEだって残っています。変化に対応できないプレーヤーだけ市場からいなくなるというだけです。今回のPWAに対応するというAppleの発表は次を見据えて変わりつつあるということなんだと思います。

 IoTの時代にはモバイルとクラウドの上のプラットフォームレイヤーが生まれることが期待されています。それがブロックチェーンでありエッジの技術です。PWAはエッジのアプリケーション技術と言えます。よく「海外のプラットフォーマーにビジネスを握られて日本は...」と嘆く論調を見かけますが、今は日本の企業も次のプラットフォームを握れるチャンスなので嘆いてばかりいないで頑張りましょう。もっと事例が出て来てから...とか言ってたらまた遅れますよ。

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プラットフォームレイヤーが上がるとアプリとサービスが増える。

 プラットフォームレイヤーが上がると新しいサービスが生まれます。インターネットがない時代にGoogleやYouTubeのようなWebアプリが実現するサービスは考えられませんでした。モバイルがない時代にUberのようなサービスは考えられませんでした。プログレッシブWebアプリの時代にはそれにふさわしい新しいサービスが生まれることが期待されています。

 よくPWAの話をすると「PWA対ネイティブアプリ」みたいな議論になりますが、全く意味がありません。新しいプラットフォームレイヤーは新しい価値を生み出してこそ意味があります。Microsoft Officeのようなデスクトップアプリは相変わらずありますし、YouTubeもそのままあります。新しいプラットフォームに対応していますが、新しい価値を生むからです。同じ理由でネイティブアプリも無くならないと思います。あまりPWA原理主義者の話を鵜呑みにしないように。

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*1:Google Chrome、Firefoxはすでに対応済み、Microsoft Edgeは次のバージョンから

*2:カタパルトスープレックスが利用しているはてなブログも早くプログレッシブWebアプリ化して欲しいです。まだ完全https化してないからまずはそこからなのでしょうが、はてなの技術力だったら簡単ですよね!!!