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デザイナーのための『UXストラテジーガイド』

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原文:"THIS UX STRATEGY GUIDE HELPS DESIGNERS MAKE BETTER DECISIONS" by Alex Souza

 デザイナー(特に経験の浅いデザイナー)は企業戦略を見落としがちです。デザイナーが戦略立案に関わる機会が少ないことが原因なのではないかと考えています。または、企業はデザイナーが魔法のように問題を解決してくれると期待しているといったボタンのかけ違いが原因かもしれません。

  デザイナーが企業のゴール、新製品立ち上げの期待、新機能の追加を理解していないのは、ユーザーを理解していないのと同じです。知識の欠落は問題解決を難しくします。本当に。

「デザイナーは企業戦略を見落としてはいけない」f:id:kazuya_nakamura:20180210143112p:plain
“Designers shouldn’t overlook corporate strategy.”

 Jeff GothelfのリーンUXキャンバスやJim KalbachのUXストラテジーブループリントなど素晴らしいツールがありますが、デザイナーや講師としてデザイナーと関わる機会が多い私から見るとこれらのツールは新しいデザイナーが習得して実戦で使うには難しい。このプロジェクトが実現する価値があるかどうか判断するのが単純に彼らにとって難しいのです。

 UXストラテジーブループリントはハイレベルの戦略を理解するためには素晴らしいツールです。しかし、そこから日々の仕事まで掘り下げていくことはできません。リーンUXキャンバスは仮説を設定して次のステップに進むための強力なツールです。しかし、経験が浅いデザイナーがそれを続けるべきかどうかを判断することは判断するのには足りません。

 この問題を解決するためにUXストラテジーガイドを作りました。

github.com

UXストラテジーガイド

 このUXストラテジーガイドはデザイナーがリーンUXキャンバスとUXストラテジーブループリントの両方を使いつつ、最終的な決定ができる情報を追加しています。

 このガイドは考えているプロダクトに関わる問題、オーディエンス、アイデア、仮説、リスク分析と判断基準を考える手助けとなるようになっています。

 5カテゴリーに分かれた12ステップで構成されています。最終決定をする上で最後のステップを完成させるには数回のイタレーションが必要となります。

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課題は何?

 最初のカテゴリー(ライトブルーのステップ1から5)では課題の理解、何を解決することを期待されているのか、どのような問題を乗り越えるのか、既存のソリューションとの違い、成功の数値的な目安を設定します。

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 集める情報が多いほど、ソリューションのアイデアや想定するユーザーとメリットを考えリスクを減らすことができます。

 ほとんどの情報はプロダクトマネージャーと埋めることができるでしょう。小さな規模の会社であれば会社のオーナーと埋めることができるかもしれません。

 このガイドの他のフェーズでも同様ですが、全ての質問に答えて棚卸しが終わってから次のステップに進みましょう。信じられないかもしれませんが、多くのプロジェクトはステップ2とステップ3が不十分なために失敗します。

「先に問題を明確にし、次にソリューションを考える」f:id:kazuya_nakamura:20180210143112p:plain
“First identify the problem, then work on the solution.”

 このカテゴリーでは存在するであろう課題について書いていることを忘れないでください。既存のプロダクトでよくある間違いはソリューションが直面している課題について説明してしまうことです。ここでの目的は課題を明確にすることで、ソリューションの発見はその次になります。

誰のため?何のため?

 二つ目のカテゴリー(ライトグリーンのステップ6と7)ではそのプロダクトを使うであろう実際のユーザーとユーザーメリットを理解します。

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 これは「ミニ・ペルソナ」のようなものです。

 UXリサーチを実施するのにいいタイミングです。可能であれば潜在的なユーザーと話をしてみましょう。 リーン・サーベイ・キャンバスは調査の準備するのにとてもよいツールです。

アイデアに名前をつける

 ステップ8(ライトイエロー)はその前のステップで集めた情報をもとに機能に関するアイデアを記録しておくため場所です。いわゆる「完璧なアイデア」はユーザーやビジネスにフィットしないことが多いです。

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 例えば主なユーザーが発展途上国にいるとして、電話のアプリケーションを作ろうとしているとします。その場合はiPhoneよりもAndroidのプラットフォームのほうがいいでしょう。

何が重要なのかを把握する

 ステップ9から11(ライトオレンジ)はJeff GothelfのリーンUXにあたる部分となります。

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 ここで機能がユーザーと企業にとってどのように有益なのか仮説をたてます。さらに最も深刻なリスクとその可能性について検討します。

 それぞれリスクが少ない仮説がデザインと開発チームのバックログに入ります。リスクが高い仮説は破棄されるか将来のイタレーションのためにガイドに残します。

メインステップ

 デザイナーとしてピクセルを操作して画面との関係を考えることは大好きです。12全てのステップに答えて全てが「イエス」であればプロトタイプを作りはじめることができます。

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 一つ以上「ノー」がある場合は意思決定をするには情報が足りていないことになります。そのまま続けてもやり直しのリスクが非常に高くなります。結局のところ、イタレーションを繰り返してわからない部分をなくしたほうが、やり直したり破棄するような失敗プロジェクトに関わるよりいいのです。

まとめ

 UXストラテジーは学習、忍耐と献身を必要とするテーマです。様々なデザイン分野をカバーし、プロダクトマネージメントやマーケティングといった企業のデザイン以外の分野とも緊密に連携する必要があります。このような知識を理解して役に立てることはデザインに大きな価値を生み出します。

 この『UXストラテジーガイド』はデザイナーが企業、オーディエンスやマーケットをよりよく理解するために作られています。必要があればいつでも使ってみてください。

訳者からの解説

 フォーマット訳者より:実際に試しに埋めてみましたが、ある程度慣れとセンスは必要だと感じました。翻訳上は、「UX Strategy」「Lean Startup」のナレッジをある程度前提としているので、Assumption - 前提とHypothesis -仮説は各々どう定義するのか、そもそも何を指して言っているのか…ということにそれぞれの文脈の影響で少し揺らぎがあったりします。なので、そのまま日本語訳するとちょっとわかりづらい、ということを中村さんともディスカッションして、もともとのフォーマットには無い解説などが付記されています。

 それと、なるべく厳しい目線で使わないと、マッチポンプ的に意外とイケそうな感じにも書けてしまうのは他の戦略フォーマットと同様かと思います。とはいえ、最後に「全部ほんとに調査したか?」「本当にこのアイデアで行けそうか?」という問いのところはすべてクリアしないと先に進めないので、無意識的な甘さは排除しやすいかもしれません。とりあえず全体像を俯瞰しながら進む戻るを検討しアタマを整理するのには良いと思いますので、試しにつかってみてください。

赤羽太郎

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