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書評|シェアリング経済以降の新しい地図「WTF」Tim O'Reilly

Tim O'Reilly (3)

"WTF"の著者、Tim O'Reilly氏

 インターネットで世の中が大きく変わり、変わり続けています。時代が変わると地図も変わります。コンピューターの時代はIBMがエコシステムの中心でした。パソコンの時代はマイクロソフトがエコシステムの中心でした。さらにオープンソースが地図を書き換え、GoogleやFacebookがさらにその地図を書き換えました。そして、今また地図が書き換えられようとしています。その地図はどんなものなのか。それがティム・オライリーの最新著書"WTF"の主題です。

 ティム・オライリーはソフトウェア開発者ならおそらく誰でも一冊は持っている本の出版会社O'Reilly Mediaの創業者で、Web 2.0という言葉を広めた人です。そう、Web 2.0もその当時の地図でした。WTFは英語で"What the fuck"の略ですが、この本では色々な意味で取れます。"What's the future"もその一つ。WTFという時は驚きとともに色々な感情が込められます。日本語だと「なんてこった」に近いかもしれません。すごい発明を見た時に発せられる「なんてこった」とか。すごく悪いことが起きた時に発する「なんてこった」とか。

 新しい技術はいいことばかりではない。フェイクニュースや人工知能(AI)についての不安感。WTFはどちらにでもなるし、それを選ぶのは私たち自身ですよというのがこの本の言いたいことかな。

昔の地図

 この本は昔の地図からはじまります。パターンは繰り返されるので、昔の地図の変遷を見ることでそのパターンを読み取ることができるからです。ボク自身はマイクロソフトに勤めていたので、IBMからマイクロソフトへのパソコンの主役の移り変わりやそのあとのオープンソースの流れも理解しているつもりです。

 それでもフリーソフトウェアからオープンソースへの流れって曖昧でした。Linux FoundationはLinuxだけでなく様々なオープンソースプロジェクトの支援をしていますが、その成り立ちもあまり理解していませんでした。

 この辺はあまり物語として日本で語られていない部分なんじゃないかという気がします。ジェダイとシスの戦いは面白いけど、シスが滅びて平和になった世界の話はあまり面白くない。この本ではそんな新しい希望と可能性の世界地図がどのようにできたかの物語として伝えようとしています。そこからパターンを探る。「フォースを感じるのだ」みたい。見た目もちょっとオビ=ワン・ケノービっぽい。

新しい地図

 この本の面白いところはインターネットの技術的な話にとどまらないところです。シェアリング経済やIoTはネットと実社会の垣根を限りなく無くした。それがどういうことを意味するのか。ボクたちはどのように今の地図を読み解けばいいのか。それをティム・オライリーと一緒に考えるような形になっています。

 その範囲はかなり広く、政府や公共サービスのあり方、メディアのあり方、組織のあり方まで広がっています。特にCode for Americaとの関わりから始まる公共サービスに関しての章は非常にエキサイティングでした。少し中だるみする部分もあるのですが、全般的にわくわく感を維持しています。

この本はおススメか?

 テクノロジー分野やインターネットに興味がある人にはおススメです。あと政府関係や自治体の人たちも読んだほうがいいかも。これから起業しようとする人、新規事業に取り組もうという会社員もここで描かれる新しい地図は参考になるでしょう。翻訳が待たれるところです。まあ、ティム・オライリーの本なんでどこかの出版社が日本語版を出してくれるでしょう。

WTF?: What's the Future and Why It's Up to Us

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