人工知能によるビールはいかが?
The Bridgeで『人工知能がビールを作るとどういう味になるのか?』という面白い記事がありました。人工知能はフィードバックを積み重ねて変わりゆくニーズを追いかけながらそれぞれの好みに応じたビールを作ってくれる可能性がある。
これはビールだけでなくて、他の食品や嗜好品にも応用できるかもしれない。
ボクは実験としてこれは面白いと思います。ただ、これが現実的にヒット商品を生み出したり食文化を豊かにしてくれるかというとあまり期待はしていません。
なんでスタバにはたくさんの種類のコーヒーがあるの?
マルコム・グラッドウェルはアメリカのベストセラーライターでノンフィクションのジャンルでは絶大な人気を誇ります。日本でも彼の本はたくさん翻訳されているのですが、日本語のタイトルが圧倒的にダサくてとても残念です。ボクだったらあんなビジネス啓蒙書のようなタイトルの本は読みたくありません。出版業界は猛省するように!
そのマルコム・グラッドウェルの食品業界に関するTEDトークがとても勉強になります。昔はスパゲッティーソースは一種類しかなかったのに、なんで今はたくさんの種類があるのか?何でスターバックスはあれほどたくさんの種類のコーヒーがあるのか?
簡単に言ってしまうと、昔は設問が間違っていたんです。
「一種類の完璧なスパゲッティーソース(コーヒー)とは何か?」
究極の寿司とは何か?究極のコーラとは何か?一つの理想の形があり、それをどのように再現すればいいのか?これは人工知能が得意な分野です。
しかし、本当に求めるべき答えは……
「多くの人のニーズに応えられるスパゲッティーソース(コーヒー)は何種類か?」
……なのですね。
これを水平的セグメンテーションと言います。これは一つの理想の形は存在しないという前提です。これは食品業界における大きなゲームチェンジでした。ルールが変わったのです。
昔はラテやキャラメルフラペチーノはありませんでした。本格的なコーヒーとはネルドリップで入れたブラックコーヒーです。キャラメルフラペチーノや固まり入りのスパゲッティーソースは以前は存在しなかったものです。存在しなかったものを作り出すというのは人工知能があまり得意ではない分野です。
例えば人工知能は将棋の基盤の中で数万手先まで考えられますが、基盤の外からミサイルを発射して基盤を壊してしまおうなどと考えられません。それは違うゲームになってしまうからです。人工知能はゲームチェンジが苦手です。
このほかにもこのTEDトークにはたくさんの示唆が含まれています。例えばフォーカスグループによる調査の限界とデザイン思考の可能性とか。
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