カタパルトスープレックス

興味がない人は無理して読まなくていいんだぜ。

2019年和書ベスト3冊(または『映画秘宝』讃歌)|ベスト・オブ・2019

f:id:kazuya_nakamura:20191227205450p:plain

このブログのコンセプトは「イノベーションに効く世界の情報を日本語で」だったので、日本の情報は取り扱いませんし、日本語で書かれた和書も取り上げませんでした。それでも、ボクは日本人なので日本語で書かれた書籍も買いますし、読みます。英語の本に比べるとかなり少ないですが……と2018年版とほぼ同じ出だしではじまってしまいました。

2019年上半期はそれでもこのブログのコンセプトに忠実であろうとして、あまりコンセプトから外れた本は選んでいませんでした。心の中で「でも、それ本当に楽しんで読んだ?ベストと言えるものだった?」という葛藤があったのは否めません。しかし、2020年からのこのブログのコンセプトは「興味がない人は無理して読まなくていいんだぜ」です。好きに書きます。

嫌われることを厭わずはっきり言ってしまえば、今年発売された日本語によるイノベーション系の本は大したものはありませんでした。明らかな間違い(日本で広く信じられている「Gmailは20%ルールから生まれた」とか)があったり、英語圏で語り尽くされたネタの使い回しだったり。だったら、英語で書かれたオリジナル読んだ方がいいじゃん?ユニークでありつつ、しっかりした骨格に基づく、説得力のあるリスペクトの対象があまりいないのが現在の日本のテクノロジー/デザイン言論の寂しさですね。日本語で書かれた敷居の広い、浅めのコンテンツの有用性は否定しませんが、英語と中国語が苦もなく読めてしまうボクにとっては浅い日本語コンテンツは全く刺激がないのです。

そんな昨年の反省点も踏まえ、今年は本当に楽しんだ、今年出版された日本語で書かれた本ベスト3を挙げます。

『昭和メカゴジラ鋼鉄図鑑』友井健人編

ボクが初めて映画館で観た映画は1974年の『ゴジラ対メカゴジラ』でした。その前に寅さん映画を観たような気もするけど、はっきり覚えていない。東映まんがまつりを最初に映画館で観たのは翌年1975年の『グレートマジンガー対ゲッターロボ』だったと思う。なので、ボクにとってメカゴジラが最初の映画館での映像体験となります。

メカゴジラが出るまで、キングギドラがゴジラのライバルでした。ラドンやモスラもいましたが、ぶっちゃけ金色に輝くキングギドラほど子供心をガッチリ掴むカッコよさはありませんでした。そんなボクらの前に突然現れたのが銀色に輝くメカゴジラでした。かっちょえーーーー。

大ヒットしたカードゲーム"Cards Against Humanity"にメカ・ヒットラーというチート札がありますが、メカ・ヒットラーもメカゴジラ無くして生まれませんでした。MECHAをグローバルな日本語に押し上げたのがメカゴジラです。『レディー・プレーヤー1』で機動戦士ガンダムとともに出てきたのもキングギドラではなくメカゴジラでした。そしてボクらは今でもメカゴジラに惹かれ続け、お布施のように本を買ってしまうのです。

別冊映画秘宝 昭和メカゴジラ鋼鉄図鑑 (洋泉社MOOK 別冊映画秘宝)

別冊映画秘宝 昭和メカゴジラ鋼鉄図鑑 (洋泉社MOOK 別冊映画秘宝)

  • 作者: 
  • 出版社/メーカー: 洋泉社
  • 発売日: 2019/03/06
  • メディア: ムック
 

『決定版ゾンビ究極読本』ノーマン・イングランド監修

この本は実を言えばジョージ・A・ロメロ監督の映画に関する本ではありません。この本で紹介される数々の細かいトリビアを知っても、ゾンビ映画をより深く理解する助けにはなりません。映画に出てくる紙コップのメーカーを知って何の役に立つんだ?これはゾンビに魅せられた狂人ノーマン・イングランドについての本です。この本を読んだ感想。

「この人、狂っとるわ」

別冊映画秘宝 決定版ゾンビ究極読本 (洋泉社MOOK 別冊映画秘宝)

別冊映画秘宝 決定版ゾンビ究極読本 (洋泉社MOOK 別冊映画秘宝)

  • 作者: 
  • 出版社/メーカー: 洋泉社
  • 発売日: 2019/11/18
  • メディア: ムック

『スターウォーズ 禁断の真実』高橋ヨシキ著

ボクはスターウォーズが大好きです。大好きなんですが、だいぶ冷静なファンだと思います。スターウォーズ王冠をコンプリートした程度です。そして、プリクエルが大好きな特異なファンでもあります。そう言えば、プリクエルのペプシキャップもコンプリートしました。むしろ、オリジナル・トリロジーよりプリクエルの方が好きです。そんなプリクエル好きのボクはこの本を読んで、「そうだよなー!それがプリクエルのよさだよな!」と膝をポンと叩いてしまいました。ミディクロリアンいいじゃない?あいつ、ヨーダよりミディクロリアンがあるんだ!スゲーじゃん!コンピューターグラフィックによる映像革命すごくね?ライトセーバー戦がこれほどハラハラするものだなんて知らなかったよね?ルークの剣技なんて大したことなかったじゃん?

そして、プリクエル で満足してしまったボクはシークエルは無いことにしてしまいました。SWVIIは観ましたよ。でも、あれ観て「あ、もういいや」って思っちゃったんです。そしてこの本ですよ。この本はSWIXへの序章なんですよ。全部振り返って準備しておけよと。しかも、この最後だけ(だけ!)評判がいいじゃないですか。どうする?SWIXのためにあらためてシークエルを最初から観る?まさに、禁断のスターウォーズですよ!観ないけどな。

スター・ウォーズ 禁断の真実(ダークサイド) (新書y)

スター・ウォーズ 禁断の真実(ダークサイド) (新書y)

  • 作者:高橋 ヨシキ
  • 出版社/メーカー: 洋泉社
  • 発売日: 2019/12/12
  • メディア: 新書

奇しくも宝島社との合併が発表された洋泉社から出版され、2020年3月号で休刊となる『映画秘宝』関連本ばかりになってしまいました。ボク自身は海外生活が長いために、『映画秘宝』やその関連本を買うことはファンの人たちに比べるとずいぶん少なかったと思います。それでも、『映画秘宝』やそのスタッフたちが発する日本独自の映画文化に対する影響力は海外からでもわかりました。日本に帰ってきてからはLoft9で不定期に開催され、映画秘宝のライター陣が出演する『映画木っ端微塵』(11月の「働く機械」も楽しかったです)に機会があれば見に行きました。

一番売れていた映画雑誌ですら休刊になってしまう時代です。やっぱり、いいと思ったらリアルタイムで大声で応援しないといけないんだと思いました。