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2019年上半期洋書ベスト3:資本主義とジェンダー

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Photo by Dominik Reiter from Pexels

人気のある書籍の傾向は去年から引き続きスタートアップ的なイノベーションへの批判、行き過ぎた新自由主義、ジェンダーの三つですね。スタートアップと新自由主義はセットになって批判されることが多いですね。その際にピーター・ティールが必ず引き合いに出されるのも面白いところです。お人柄ですかね。

資本主義に関しては今年の前半だけでも多くの書籍で様々な角度から批評されました。ティム・ウーは独占禁止法の観点から、ローレンス・レッシグは腐敗の観点から、アナンド・ギリダラダスはフィランソロピーの観点から優れた批評を展開しました。

その中でも特筆に値するのはショシャナ・ズボフの監視資本主義でしょう。フェイスブックと違い、グーグルはいままでうまい具合に批判を避けてきました。ユーザーもグーグルに自分の個人情報を握られていることを知りつつ、便利さを享受することを選んできました。ケンブリッジアナリティカのような決定的な事件もありません。そんなグーグルを「監視資本主義」というわかりやすい括りで捉えたことに意味があると思います。

ジェンダーは引き続き重要なテーマでした。昨年もエミリー・チャンの『Brotopia』がシリコンバレーのスタートアップ業界に蔓延する男女差別の分析が多くの人に衝撃を与えました。なんとなくわかってたけど、実際にそうなんだ。今年の上半期のベストの一つであるジーナ・リッポンの『The Gendered Brain』は多くの人に信じられている男女の違いが実は間違った認識だと気づかせてくれました。

ジェンダーに限らず、「男は〇〇」や「女は〇〇」のようなレッテル貼りやラベル付けは分かりやすいのですが、多くの場合は間違った認識を人々に与えてしまいます。改めて気をつけないといけないと思いました。

生産性や価値は事業開発をやっているボクのような人間にとっては非常に重要なコンセプトです。「生産性を高めるソリューション」と言うのは簡単なのですが、「生産性」って何?と突き詰めて考えるとなかなか難しい。Aをするのに5ステップかかってたのが1ステップになれば「生産性が高まった」と言えるのか?効率は高まったと思うけど、効果はどうなの?その価値は?

本の主旨とは違うのでしょうが、「価値=利益」という分かりやすい定義を提供してくれたのがマリアナ・マッツカートの『Value of Everything』でした。この本のおかげで日本の生産性が他国と比べて伸びていない理由がよく分かりました。個人や組織の効率が悪いからではなく、産業構造の問題なのですね。業務プロセス改善とかミクロレベルではなく、産業構造というマクロレベルの問題。