今年もなかなかいいペースで映画を観ているので、この辺でまとめます。上半期のベスト3は以下の三本(あいうえお順)。内容はそれぞれのひとこと評を参考にしてください。三本のうち二本が中国映画なのがイマドキな感じですよね。映画トレンドを簡単に三つにまとめると「中国」「ストリーミング」「センスのいいパッケージング」ですね。
- 帰れない二人(原題:江湖儿女)
- ザ・バニッシング/消失(1988年作品)
- 流転の地球
今年前半もたくさん楽しい映画がありました。『キャプテン・マーベル』と『アヴェンジャーズ/エンドゲーム』のワンツーパンチもとてもよかった。ベスト3には入っていませんが、大満足です。昨年に引き続き目立っているのが、ネットフリックス配信作品のクオリティーの高さ。『ローリング・サンダー・レヴュー: マーティン・スコセッシが描くボブ・ディラン伝説』と『ブラジル/消えゆく民主主義』はそれぞれ本来なら劇場公開がふさわしいレベル。それがストリーミング先行となるのが今の時代。
A24も引き続き勢いのある映画作りをしています。私が今年観た作品は『mid90(原題)』だけですが、『へレディタリー/継承』アリ・アスター監督の最新作『Midsommar(原題)』やジョー・タルボット監督の『The Last Black Man in San Francisco(原題)』がすでに海外のレビューサイトで高い評価を受けています。MidsommarのTシャツなんてすぐ売り切れてしまいましたからね。A24のグッズは見つけたらすぐ買わないと。
日本ではなかなか観る機会の無い『ザ・バニッシング/消失』、『ヨーロッパ・ヨーロッパ』や『シェラ・デ・コブレの幽霊』のような作品を自宅で観れるのは海外の品質の高いリマスター専門レーベルのおかげです。特にクライテリオンにはレーザーディスク時代からお世話になっています。日本映画も可能な限りクライテリオン版を買うようにしています。映像のリマスターも素晴らしいのですが、音の再現が日本のリマスターとは比べ物にならないくらいの高品質です。今年は昭和ゴジラのボックスセットがクライテリオンから出るので今から楽しみです。あと、クライテリオンはジャケ写もいいですよね。日本のパッケージもクライテリオンを見習ってほしい。
センスのいいパッケージングやアパレルなどの関連商品(英語ではmerch)はこれからのB2C(おそらくB2Bも)には必須ですね(日本ではまだ話題になっていませんが、Amazonが試行しているW2Pサービスの"Merch by Amazon"もこの流れでしょう)。
これまでも必須だったのでしょうが、ソーシャルメディアでシェアする前提だと、チャネル特性にマッチした複数コンテンツがあるのはマーケティング上でも有効です。映画や音楽などストリーミングにはTシャツなどアパレルのような物理的な関連プロダクトをインスタグラムなど映像中心のチャネルで、物理的なプロダクトには映像や音楽などサウンドトラックやイメージビデオをスポティファイやYouTubeなどストリーミングで。映画でもこういうメディアミックスが当たり前になってきましたね。
日本の場合はまだまだ映画のサントラに有名アーティストを使うとか、声優に有名俳優を使うとかくらいで、現在主流のOMOのレベルには至っていませんね。
『マンディ 地獄のロード・ウォーリアー』というひどい邦題をつけられたサイケデリック映画の佳作"Mandy"も関連商品が充実していて、専門ショップを作る力の入れようです。ニコラス・ケイジが映画の中で着ていた虎のTシャツを買ってしまいました。A24も関連商品の使い方がすごく上手い。
今年の後半はタランティーノ監督作品でブラッド・ピットとレオナルド・デカプリオ共演で話題の『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』やキアヌ・リーヴス『ジョン・ウィック:パラベラム』が公開されます。両方ともすでに海外では公開されていて、高評価を得ているので楽しみです。同じ話題作で言えばジム・ジャームッシュのゾンビ映画『The Dead Don't Die(原題)』はあまり評価が高くないようなので心配です。あと、個人的には『バック・トゥー・ザ・フューチャー』でもお馴染みのデロリアンを作ったジョン・デロリアンの伝記『Framing John DeLorean(原題)』がすごく楽しみです。
8月上旬に見た映画ひとこと評(あいうえお順)
- アス:暗喩とか色々と凝った作りなんだけど、驚きはない。
- 帰れない二人(原題:江湖儿女):内容的に邦題『帰れない二人』より原題「武侠な女」の方がしっくりくる、最初の関羽像が象徴的。
- ザ・バニシング/消失(1988年作品):現時点で今年最高のホラー映画。
- 修羅雪姫(1973年作品):タランティーノ監督が『キルビル』でオマージュした作品として気になって。
- シェラ・デ・コブレの幽霊(1964年作品):今のホラー映画の方が当然怖いという「幻の作品」にありがちなマニア向け作品だが、悪くもない。
- 第七の封印(1957年作品):死とチェスゲームをして神の存在を確認するというアイデアがいい。
- ブラジル/消えゆく民主主義:チリもそうだけど、民主主義って意外と脆くて尊いものなのだと再確認。