カタパルトスープレックス

興味がない人は無理して読まなくていいんだぜ。

2020年映画ベスト|ベスト・オブ・2020

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2019年に観た映画は65本でしたが、2020年に観た映画は547本でした。コロナ禍で在宅勤務が基本となり、通勤がなくなった影響が大きいです。通勤は往復で三時間かかるので、この時間の使い方が変わりました。通勤の時はオーディオブックで本を読んで(聞いて)いましたが、この時間がそっくりなくなったのです。

この547本から特に印象に残っている2020年新作映画をピックアップしました。2020年に日本もしくは海外で公開された作品です。順番は観た順です。日本語タイトルになっている作品は日本公開作品、日本語タイトル以外は日本未公開作品です。

Chained for Life

この映画"Chained for Life"を観てからすでに一年近くが経とうとしていますが、いまだに心に残っています。トリュフォーの『アメリカの夜』のような劇中劇なのですが、その視点が複数あるために迷路に迷い込んだような感覚を持ちます。今はどんな視点なんだろう?

また、ブログ記事中でも書きましたが、「普通」の概念を揺さぶる映画でもあります。トッド・ブラウニングの『フリークス』やデヴィッド・リンチの『エレファントマン』が普通の世界。

The Lighthouse

 2020年には『TENET』で素晴らしい演技を魅せたロバート・パティンソン。本当に素晴らしい役者に成長しましたよね。『トワイライト〜初恋〜』での美しいバンパイア。アイドル的な俳優のイメージから若手の演技派に見事に脱却しました。

そして、この"The Lighthouse"でロバート・パティンソンは、やはり演技派のウィレム・デフォーと演技で殴り合いをして打ち負けていません。言われなければ、あれが美しいバンパイアを演じたロバート・パティンソンだと分からない人も多いのではないかと思います。

カラー・アウト・オブ・スペース

 ニコラス・ケイジから目が離せない。これは今にはじまったことではなく、『赤ちゃん泥棒』を観てからずっと釘付けです。彼は自分に求められていることがよくわかっている。ヒーローじゃない、ヒールでもない。狂気です。『マンディ 地獄のロード・ウォリアー』でドラッギーなサイケデリックさが加わりました。サイケデリックな映画はいまのトレンドでもあって、更に推し進めてきたのが本作『カラー・アウト・オブ・スペース』でした。『遊星からの物体X』さながらのアルパカが見ものです。

カラー・アウト・オブ・スペース-遭遇-(字幕版)

カラー・アウト・オブ・スペース-遭遇-(字幕版)

  • 発売日: 2020/10/21
  • メディア: Prime Video

メランコリック

日本未公開作品を紹介する本ブログの性質上、邦画を紹介する機会は少ないのですが、2020年は邦画もたくさん観ました。日本公開作品を紹介する「カタパル」をnoteではじめたので、今年からはもう少し邦画もそちらで紹介していこうと思います。

本作『メランコリック』は皆川暢二、田中征爾、磯崎義知の三人の映画ユニット「One Goose」による初長編作品です。とても新鮮なアイデアでストーリーがどこに着地するのか分からずにハラハラします。つまり、エンターテイメント作品としての強度があります。作り手のエゴより、観客を楽しませようとする姿勢が完全に勝ってる。ボクはこういう作品が好きです。

メランコリック

メランコリック

  • 発売日: 2020/04/02
  • メディア: Prime Video

The Gentlemen

イギリスっぽいエンターテイメント作品を作るイギリス人監督って好きです。マシュー・ヴォーンとかエドガー・ライトとか。その代表格はガイ・リッチー。

ガイ・リッチーは「シャーロック・ホームズ」シリーズや実写版『アラジン』を成功させたり、すっかりハリウッドに根を下ろしてしまったかに見えました。そこで撃ちはなったのがイギリスっぽさがプンプンする原点回帰ともいえる"The Gentlemen"でした。ものすごい豪華な出演者でアップデートされたガイ・リッチースタイル。

ダ・ファイブ・ブラッズ

ボクはスパイク・リーの『ドゥー・ザ・ライト・シング』をあまり評価していません。ボクはスパイク・リー演じるムーキーの行動が「正しい」とはとても思えない。保険が下りるからってガス抜きで人が作り上げた店を壊していいなんてない。黒人は常に被害者で正義でなければいけないという青臭さが好きになれませんでした。

スパイク・リーがはじめて黒人も加害者になりうることを認めたのが本作『ダ・ファイブ・ブラッズ』です。黒人だってアメリカ人で、アメリカ人として他国を蹂躙するのです。蹂躙された人たちにとって、「自分は黒人で、白人にやらされたんだ」は通用しない。

ドロステのはてで僕ら

『カメラを止めるな』の大ヒットで日本の自主制作映画は活気を取り戻しました。京都の劇団、ヨーロッパ企画による本作『ドロステのはてで僕ら』もその延長線上にあります。ちょっとだけ先が見れるテレビとパソコンのモニターの二つのセット。そのワンアイデアをここまで話として広げられるのは見事。

他にも楽しい日本映画はたくさん公開されているので、今年も積極的に観に行こうと思っています。

燃ゆる女の肖像

セリーヌ・シアマ監督作品は『トムボーイ』が日本公開されていますが、非常に評価が高い"Girlhood"を含めて他の作品はあまり公開されていません。本作もクライテリオン版のブルーレイで鑑賞しました。当分は日本公開されないんだろうなと。

この作品はお見合いに肖像画が使われていた頃の話。とても静かな映画で、音楽だけでなく、環境音も限られています。それゆえに主人公たちの心の動きがとても繊細に伝わってきます。すごくいい映画。これは日本公開されて良かった。

Bait

『燃る女の肖像』もそうですが、本作"Bait"も音が重要な役割を果たしています。もっと言えば音の「不在」が重要です。引き算の映画作りってすごく難しい。本作もそうなのですが、セリフが少ないと観客の想像力に委ねる部分が大きくなってしまう。それで想像が広がればいいのですが、むしろ狭まってしまうことの方が多いのではないでしょうか。なんだかよく分からない難解な映画になってしまいます。

本作"Bait"の場合はモンタージュと編集で音や台詞の不在を埋めています。なかなかうまいやり方だと思いました。

『バクラウ/地図から消された村』

ブラジルの映画が元気です。『バクラウ』もブラジルっぽいエンターテイメント作品なのですが、一筋縄にはいきません。この映画は何の前提知識を持たずに観て欲しいので説明はしません。これも日本公開されないだろうと思い海外版のブルーレイで観ました。日本公開されるんだったら、劇場で観たかったなあ。

テネット

クリストファー・ノーラン監督作品は長編は全て観ています。何回も。ボクにとってそういう監督は少ないです。後はデヴィッド・リンチくらいかな。それで期待を裏切らないんだからスゴい。

『テネット』はだいぶハードルが上げられた作品だと思います。すっごく期待されていた。ボクも期待していました。最初に観た時は話についていこうと必死でした。順行と逆行をちゃんと追っていこうとした。そうすると筋が見えなくなってきました。なんと、最後の別れのシーンの意味がわからなかったという痛恨。二回観てやっと理解できました。ここでもやっぱりロバート・パティンソン。いい役者になった。

TENET テネット(字幕版)

TENET テネット(字幕版)

  • 発売日: 2020/12/16
  • メディア: Prime Video