ルイス・フォン・アンはCAPCHAの開発者であり、20代の時に二つのスタートアップを立ち上げGoogleに売却しています。いまは外国語を学ぶプラットフォームのDuolingoの創立者でCEOです。Duolingoも成功していて、すでに世界中で約1億2000万人が登録していて、100億円の資金調達を行いました。すげーな、マジで。
そんな彼のとてもよいインタビューがTwenty Minute VCのポッドキャストで上げられてましたので、要点だけまとめてご紹介します。
Duolingの誕生話
- 自分自身は外国語は得意じゃない。
- Googleに二つ目の会社を売却してカーネギーメロン大学で教授をしていたころ、EdTechで何かやりたいと考えていた。その時のPhDの生徒とそんな話をしていた。そして教育の中のいくつかの分野をそれぞれ考えた。
- なんで言語教育にたどり着いたかと言えば、英語圏では外国語教育ってそれほど大きくないが、非英語圏では大きい。人口で1.2億人くらい。年間で80億ドルが外国語を習うために使われている。特に英語を学ぶことが。
- ほとんどの人は貧困から抜け出すのために英語を学ぶが、英語を学ぶためのソフトウェアは非常に高価だった。貧困から抜け出すために高価なソフトが必要というのは皮肉な話だった。だから無料のDuolingoを作った。
EdTechは難しいのか?
- EdTechは大きく分けて二つある。教育するツール(教育ツール)と教育することを支援するツール(教育支援ツール)。Blackboardは教育支援ツールの代表。教育支援ツールはメインにはなれない。
- 教育ツールはコンテンツの問題がいつも付きまとう。UGCのように簡単ではない。学びたい人と教えたい人を単につなげるみたいな単純なものでもない。
- 更に教育は規制されている。予算も地区レベルに細かく分かれていて、州レベルに大きな予算があるわけではない。そして各地域ごとに教え方も異なる。当然ながら国ごとにも異なる。
- 特に経済先進国では教育は無料でそのクオリティーは高い。教育ツールはその10倍よくなければいけない。
- 単純に言えばEdTechは確かに難しい。
人工知能がEdTechで果たす役割は?
- Duolingoを1対1の先生と同じぐらい効果的にしたい。教育や教育心理学の世界では多くの研究がされている。もっとも有名なのはブルームの2σ問題。1対1の教育と1対nのクラスルーム教育を比べた場合、1対1の教育の方が圧倒的(2標準偏差)に成績がいいという調査結果。これはずいぶん前から分かっていて、最もいいのはすべての人に1対1の教育を実施すること。
- 当然ながらこれではスケールしない。しかし、AIを活用すれば1対1の先生くらい効果的な教育をできるようになる可能性があると思う。そのためにDuolingoでもAIに大きな投資をしている。
- 最近立ち上げたチャットボットもその過程的なプロダクト。チャットボットは言語教育においては革新をもたらすと思う。それは言語教育が会話の上に成り立つから。数学などは会話的でないのでチャットボットは合わないかもしれない。チャットボットでピザを注文するよりは自然。
- 言語習得で一番困難なのは続けること。モチベーションを高く持ち続けること。学校教育は社会がモチベーションとなる。学校に行かなくなると社会と断絶してしまう。しかし個人学習ではそのような力が作用しないので、さらに困難。実際にEdTechの教育ツールでの継続率やプログラム完了率は非常に低い。1%とか2%とかそういうレベル。ゲーミフィケーションはモチベーション維持に役立つ。
- Duolingoの継続率は非常に高い。人気のゲームと同じくらい。ユーザー登録をした55%の人は次の日も使う。普通の教育ツールは10%から15%くらい。登録して7日後の継続率(D7)は30%の後半。Duolingoの競合はゲームアプリだと考えている。人気ゲームの場合登録してから一年後の継続率(D365)は20%と言われている。Duolingoもそれくらい熱中できるものでなくてはいけない。
- 50%までいかないまでも、かなり大きな割合のユーザーは「単に時間を浪費したくない」という理由でDuolingoを使う。『キャンディークラッシュ』で遊ぶより罪悪感がない。最初の予想は「いい仕事に就きたい」とか「海外旅行に行きたい」だったのだが。
会社とともにCEOとして成長すること
- これまではGoogleにすぐに売却してしまったので、ここまで会社が大きくなったのは初めての経験。
- 最初に学んだのはマイクロマネージをしないこと。自分でやるのではなくて、チームにやる気を起こさせるのが仕事だということに気が付いた。
- 会社をスケールするのに伴う困難のひとつは人を解雇すること。Duolingoではそれほど解雇する機会はないが、それでも解雇しなければいけない時がある。「素早く採用、素早く解雇(Hire Fast, Fire Fast)」はいいと思っていない。いま従業員は100名くらいだが、これだけ資金調達をしたのだから雇える余力はもっとずっと多い。それでも採用にはとても時間をかけている。
- 自分の発言がほかの社員にどれくらい重いのか理解しなければいけない。規模が小さいときはみんな友達みたいなものだった。いまは何気ない一言が組織に大きな影響を与えてしまうことがある。
翻訳:カタパルト式スープレックスなかむらかずや
関連記事