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【2018年夏休み読書週間】飲み物の話|水、ビール、ワイン、ラム、コーヒー

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2018年の夏は暑いですね。暑い日には飲み物をたくさん飲みたくなります。今回は飲み物についてです。全くイノベーションと関係ありませんが、夏休みですし、読書週間の前半最期にこういう夏っぽいのもいいかなと。

トム・スタンデージ『歴史を変えた6つの飲物』を中心に飲み物に関する書籍を紹介します。今回はなるべく日本で翻訳が出ている書籍を紹介するようにします。

歴史を変えた6つの飲物 ビール、ワイン、蒸留酒、コーヒー、茶、コーラが語る もうひとつの世界史

歴史を変えた6つの飲物 ビール、ワイン、蒸留酒、コーヒー、茶、コーラが語る もうひとつの世界史

 

なぜ特定の地域で飲み物が発展したのか?

トム・スタンデージ『歴史を変えた6つの飲物』は飲み物を中心としてその歴史的背景を説明しています。人間が作った飲み物としてはビールが一番古いのですが、ビールが生まれたのは肥沃な三日月地帯です。ここから農業が発展したので、必然的にここからビールが生まれるのですが、なぜここから農業が生まれたのかを説明してくれる本がジャレド・ダイヤモンドの『銃・病原菌・鉄』です。

文庫 銃・病原菌・鉄 (上) 1万3000年にわたる人類史の謎 (草思社文庫)

文庫 銃・病原菌・鉄 (上) 1万3000年にわたる人類史の謎 (草思社文庫)

 
文庫 銃・病原菌・鉄 (下) 1万3000年にわたる人類史の謎 (草思社文庫)

文庫 銃・病原菌・鉄 (下) 1万3000年にわたる人類史の謎 (草思社文庫)

 

安全な水

人間にとっても大切なのに『歴史を変えた6つの飲物』で紹介されていない飲み物が一つあります。水です。安全な水の定義(pure and wholesome)が決まってを都市で安定供給できるようになったのは20世紀に入ってからなんですよ。そういう意味で「安全な水」は比較的新しい飲み物です。安全な水が安定的に供給されるまで、伝染病などの影響で平均寿命は50歳未満でした。

マイケル・マクガイアーによる"The Chlorine Revolution"はニュージャージー州での最初の塩素による上水道の消毒プロジェクトについての本です。もちろん、下水道についても触れられています 。安全な水の確保には両方必要ですからね。

ここまで増えた人口の食料供給に窒素が必要だったように、水の供給には塩素が必要でした。カルキ臭いなど何かと評判の悪い水道水ですが、遠い場所から家まで安全な水が届くってすごいことなんですよ。

The Chlorine Revolution: Water Disinfection and the Fight to Save Lives (English Edition)

The Chlorine Revolution: Water Disinfection and the Fight to Save Lives (English Edition)

 

ビールとワイン

ビールが生まれたのはメソポタミア付近ですが、現在のスタイルに発展したのはヨーロッパ。特にゲルマン系(ドイツ、オランダ、イギリス、ベルギーの一部)の地域ですね。ちなみにワインはラテン系(フランス、イタリア、スペイン、ポルトガル)の地域に広がりました。

ワインはギリシャから徐々に一般でも生産されるようになり、ローマ時代に広がったそうです。ワイン用の葡萄畑を持っているのがステータスで、ビールを飲むのはバルバロイなのだそうです。ふむふむ、昔からそんな感じだったんですね!

ビールを工業化して大量生産したのがアメリカ。1980年からヨーロッパの職人技やレシピを参考にしながら独自に少量生産のビールを醸造する人たちがアメリカで増えはじめて、これが現在のクラフトビールの流れとなります。クラフトビールで最も成功しているブランドの一つはPunk IPAで有名なブリュードッグですね。ブリュードッグについては『ビジネス・フォー・パンクス』で詳しく紹介されています。

ビジネス・フォー・パンクス

ビジネス・フォー・パンクス

 

大航海時代と奴隷制度と蒸留酒

ビールとワインは醸造酒。日本酒も醸造酒です。ブランデー、ウィスキー、ラム、ウォッカ、テキーラは蒸留酒です。日本だと焼酎が蒸留酒。葡萄の醸造酒がワイン、葡萄の蒸留酒がブランデー。米の醸造酒が日本酒、米の蒸留酒が米焼酎です。

蒸留酒はアルコール度数が高いので、大陸間の航海には蒸留酒が好まれました。少ない量ですみますし、悪くなりませんからね。最初はブランデーでしたが、カリブ海で砂糖を生産するようになると、その残りカスの糖蜜(モラセス)を原料にしたラムを現地生産するようになりました。アメリカのお酒といえばビールやバーボンを連想しますが、最初の国民的な飲み物はラムでした。ヨーロッパからの輸入物より現地生産のラムの方が安いんです。安いは正義なんですね。

現地生産のラムは安いですが、いいことばかりではありませんでした。蒸留酒の持つポータビリティは奴隷、砂糖、ラムの悪名高き三角貿易を生み出しました。

蒸留酒自体は醸造酒と比べて味があまりありません。そこで砂糖を加えたり、ライムを加えたり色々工夫をするようになります。カクテルのはじまりです。『歴史を変えた6つの飲物』でも紹介されているグロッグはカクテルの原型の一つです。

ホームバーを12のボトルではじめるというコンセプトの"The 12 Bottle Bar"はカクテルの作り方だけでなく、それぞれの蒸留酒の歴史についても簡単に説明してくれています。アメリカの場合だと12種類のボトルをキッチンに置けますが、日本だと3種類が限界ですよね。そこでボクが考えたのがThree Bottle Barです。こちらのプロジェクトは現在準備中なので乞うご期待。

The 12 Bottle Bar: A Dozen Bottles. Hundreds of Cocktails. A New Way to Drink.

The 12 Bottle Bar: A Dozen Bottles. Hundreds of Cocktails. A New Way to Drink.

 

ラムに興味があれば日本ラム協会による『ラム酒大全』もオススメです。蒸留酒はラム、ジン、テキーラなどクラフトブームが追い風となって元気があってとても楽しいです。蒸留酒テーマのブログをやりたいくらいです。

ラム酒大全: 定番銘柄100本の全知識

ラム酒大全: 定番銘柄100本の全知識

 

コーヒーとお茶

『歴史を変えた6つの飲物』を読むまで知らなかったのですが、インドの紅茶はもともと中国のものなんですね。イギリスが中国のお茶をインドに持ってきた。イギリスはコーヒーを最初にアラブから持ってきた国だったのですが、どういうわけかお茶にスイッチします。これはイギリスの植民地には広がるのですが、そのほかのヨーロッパやアメリカには広がりませんでした。お茶が発展したのはイギリスのコモンウェルスと中国と日本くらいですね。

お茶と比べるとコーヒーはユニバーサルな飲み物になりました。コーヒーがヨーロッパに入る頃を時代背景とした小説がデヴィッド・リスの『珈琲相場師』です。アムステルダムが舞台なのですが、アムステルダムに住んでいたボクとしてはとても思い入れのある小説です。道の名前や建物の描写で風景が目に浮かんできます。オランダ人は基本的に商売人なんですよ。イギリスで流行った後にオランダを中心としてコーヒーがヨーロッパに広まったのはとてもわかります。

珈琲相場師 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

珈琲相場師 (ハヤカワ・ミステリ文庫)