ボクは本をいっぱい読むほうだと思いますが、頭がいいとは言えません。難しい本とか全然理解できません。その代表例がボクにとってはナシーム・ニコラス・タレブの『ブラック・スワン』です。もちろん、その骨子はわかりますよ。白鳥は白いと思っていたら突然に黒い白鳥(ブラック・スワン)が出てきて、あらビックリ。世の中って不確実で予想できませんね。昔の経験って当てになりませんね。たったそれだけの話になんであんなに分厚い書籍が出来上がるのか全く理解できません。たぶん、それはボクが完全に理解していないからそう思うんですよ、頭が悪いから。
『ブラック・スワン』ではウンベルト・エーコ の図書館の話が出てきます。ウンベルト・エーコが原作でショーン・コネリー主演の映画『薔薇の名前』は大好きですが、ウンベルト・エーコ の小説自体は難解ですよね。他にもトマス・ピンチョンとかガブリエル・ガルシア=マルケスとか難しい小説を書く作家はたくさんいますが、どうも難しい本は苦手です。憧れますけどね。読んで理解できたらかっこいいなと思います。ナシーム・ニコラス・タレブはノンフィクション界のウンベルト・エーコですね。理解できる人を尊敬します。
そうはいっても、悔しいじゃないですか。ちゃんとナシーム・ニコラス・タレブを理解したい。まあ、多少時間もあったので『ブラック・スワン』と最新刊の"Skin in the Game"の間にある"Antifragile" (邦題『反脆弱性』)を読んでみました。"Antifragile"が理解できたら"Skin in the Game"も読んでみようかなと。前置きが長くなりました。
Antifragile: Things that Gain from Disorder
- 作者: Nassim Nicholas Taleb
- 出版社/メーカー: Penguin
- 発売日: 2013/06/06
- メディア: ペーパーバック
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反脆弱性とは?
まず、反脆弱性を語る前に脆弱性とは何か。簡単に言えば脆いことですね。例えばガラス。落としたら割れますよね。弱いことと、脆いことが脆弱(ぜいじゃく)です。反脆弱性はその反対。で、脆いの反対ってなんでしょう?
英語だとfragile(脆い)の反対語は鉄のようにrobust(堅牢)や竹のようにresiliant(しなやか)だったりします。ナシム・ニコラス・タレブがわざわざantifragileという言葉を作ったのは、fragile(脆い)の反対はrobust(堅牢)でもresiliant(しなやか)でもないと考えたからです。
fragileは脆いことがマイナスに作用します。antifragileは脆いことがプラスに作用します。脆いことに変わりはないのですが、脆いことがいいことになる。これが反脆弱性です。理解できました?ボクもここまでは理解できました。オーケー、オーケー!
脆いことがプラスに作用するとは?
スタートアップがいい例です。小さな失敗を繰り返すことによって学び成長していく。これって「当たり前じゃないか」と思うんですが、どうでしょう?たぶん、ボクが何か見逃してるんですよね。きっと、当たり前じゃないんです。
スタートアップが失敗することによってスタートアップエコシステム全体としては学習する。不謹慎かもしれないけど、福島の原発事故があったおかげで、世界的には原子力発電の危険性がより深く理解できた。もちろん、スタートアップで失敗した創業者は失うものが多いし、福島の原発事故でも被害者がたくさんでました。それでも、全体から見たら「脆い」ことがプラスすることができた。ローカルのダメージはローカルにとどまり、グローバルはローカルのダメージから学ぶことができる。
リバタリアンとランダム性
ナシーム・ニコラス・タレブは思想的にはリバタリアンに近いと思います。自然界はランダムであり、コントロールできない。完全自由主義。本書に出てくる「ナイーブ・インターベンション」とは助けようとして被害を大きくすることです。昔は医者に診てもらったほうが致死率が高かった。それは、正しい医療知識がなかったからなのですが、医者としては助けようとはしていた。
タレブは医療の進化のためには失敗は必要だとしています。失敗を繰り返すことによって、技術や知識は進化していくのですが、失敗は小さいほうがいい。
リバタリアンといってもドレッド・パイレーツ・ロバートのような犯罪者やブロックチェーンの生みの親たちや、ピーター・ティールのようなクソ野郎やナシーム・ニコラス・タレブのような知識人もいるから面白いですね。
で、わかったのか?わかったような、わからないような。