アリ・アスター監督による不条理劇でありコメディー作品の『ボーはおそれている』の映画評です。アリ・アスターがやりたい放題やった作品です。ご本人はさぞ満足でしょう。でも、なげえよ。
ボー・ワッサーマン(ホアキン・フェニックス)はビクビクしながら治安の悪い地域で一人暮らしをしている。ボーは母親を訪れるために実家に行く予定があるのだが、事件が次々と起こり前に進めない。はたしてボーは無事に実家にたどり着けるのか……という話です。
まず、褒めます。自分にとっての映画の3大要素である、「テーマ」、「ストーリー」と「キャラクター造形」がしっかりしています。これまでで一番はっきりしてるのではないでしょうか。そのぶん、その長さがクドさになってしまってるんですが。
テーマは「家族の呪縛」でしょうね。これだけクドく描かれれば流石に分かります。隣人もコミュニティも家族も恐ろしいものとして描かれています。ボク自身もそれがイヤで海外に飛び出た面も否めないので、よく分かる。
人との関係に縛られて自分を殺してしまう。人間関係こそが「死に至る病」として描かれている。そう考えるとこの奇想天外なストーリーもストレートに見えてくる。
キャラクター造形はホアキン・フェニックス演じるボウに絞られている。無垢なのか、無垢を演じているのか。正気なのか、狂っているのか。非常に難しくデリケートなキャラクター造形とそれに応える演技。
こうやって褒めるところを探せば非の打ち所がない。
しかし、どんなに旨くてもクドすぎるとつらい。二郎系ラーメンのニンニク背脂野菜マシマシのような感じ。胃がもたれる。尺を半分くらいにできたら大傑作になってたと思う。でも、この胃がもたれるクドさを感じさせることも監督の狙いだったりするんでしょうね。