ニコラス・ケイジ主演映画『マンディ― 地獄のロード・ウォーリアー』が大好きで、映画の中で主人公が着ていたロングTシャツ(虎の絵のやつ)をオフィシャルストアで買ったくらいです。クエンティン・タランティーノは50年代や60年代をモチーフにしたジャンル映画が得意ですが、『マンディ― 地獄のロード・ウォーリアー』のパノス・コスマトス監督は70年代のサイケデリックなテーマをモチーフにしたジャンル映画を得意とします。ちなみにパノス・コスマトス監督のお父さんは『ランボー/怒りの脱出』や『コブラ』を作ったジョージ・コスマトス監督です。なんか、血は争えないなって感じです。
『マンディ― 地獄のロード・ウォーリアー』はサイケデリックでダウナーな幻想的な映像が特徴で、暴力に満ち溢れています。そして、『マンディ― 地獄のロード・ウォーリアー』以降、サイケデリックでダウナーで暴力に満ち溢れた映画が増えた気がします。今回紹介するジョー・ベゴス監督作品"Bliss"もその一つです。下の二作品のパッケージ写真も似てるでしょ?
ジョー・ベゴス監督はこれまで低予算でちょっとおかしなホラー映画を作ってきました。『マインズ・アイ』と『人間まがい』が日本でも公開されていますが、正直に言えばボクは知りませんでした。YouTubeで予告編を確認する限り、"Bliss"以前の作品はあまりサイケデリックは感じはしませんでした。しかし、"Bliss"の後に公開された"VFW"の予告編は夜のシーンが多く、映像的には"Bliss"に近いですね。"VFW"のBDももう直ぐ発売されるので、是非観てみたいです。
さてさて、肝心の"Bliss"です。舞台はロサンゼルス。主人公はそこそこ名が知られてるけど、スランプで筆が進まず、家賃を払うのも一苦労なアーティスト。ドラッグをキメてなんとかスランプを脱出しようとして出会ったのが"Bliss"。アーティストがドラッグをキメて創作活動をするなんて、あまりにもクリシェ(使い古されたネタ)ですよね。ただ、このBlissはただのドラッグではありません。過剰摂取すると人間の血が欲しくなるんです。ヴァンパイアになってしまう。しかも、人を襲ったことを覚えていない。まあ、内容的にはこれが全てです。まあ、ストーリーはぶっちゃけどうでもよく、サイケデリックでドラッギーな映像と音楽を楽しむ映画なのかなと。
以前にアメリカのヘロイン渦を解説した書籍"Dopesick"を紹介しました。ドラッグには大きく分けて気分が上がるアッパー系と気分が下がるダウナー系があります。沢尻エリカが保有して有罪確定したMDMAはアッパー系。ヘロインは代表的なダウナー系のドラッグだそうです。
クエンティン・タランティーノ監督作品『パルプ・フィクション』でユマ・サーマンがオーバードーズしてしまったのがヘロインです。映画で出てくるドラッグ"Bliss"もダウナー系のようですね。最近、サイケデリックでダウナーな映画が増えているのも背景にはヘロイン渦があるような気がします。ヴェルヴェット・アンダーグラウンドの曲に『ヘロイン』がありますが、スローから徐々に早くなる感じがトリップ感があり、"Bliss"はきっとそれの強烈なやつなんだろうなあと。
2020年2月第四週に観た映画にひとこと(観た順)
フェアウェル:あまりにも中国なアメリカ映画
1917:IMAXで観てよかった!
牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件:すごい映画
Bliss:本作品
クワイエット・プレイス:ツッコミ禁止
River of Grass:路のないロードムービー、愛のない恋愛映画、犯罪のない犯罪映画
ヘヴィ・トリップ:北欧メタル、自転車に乗る
最後の人:サイレント映画の究極の形
サンライズ:ドイツ表現主義とハリウッドの奇跡の融合