ブロウワレイ・アイ(Brouwerij 't Ij)は間違いなくオランダを代表するクラフトビールです。もちろん世界的に出荷量の一番多いオランダビールはハイネケンですし、他にもフロース(Grolsch)とかアムステル(Amstel)とか伝統的なピルスナーを作っているビール会社はたくさんあります。
こうした大手ビール会社やさらにはクラフトビールの流行に乗った新興ビールスタートアップがひしめくオランダでブロウワレイ・アイは「ハイネケンじゃないクールなビール」の代表として愛され続けています。
これってスゴくね?商業的に成功した後でもどうしてクールでい続けられるの?ということをストレートに聞いてきましたよ!インタビューに応えてくれたのはディレクターのPatrick Hendrikseさんです!
−−ブロウワレイ・アイはオランダのクラフトビールの世界ではすでに老舗の存在ですよね
「創業は1985年。もう30年以上だよ。創業者のカスパー・ピーターソンは作曲家だったんだ。バンドとツアーをしている時にベルギースタイルのビアに惚れ込んで自分で作りはじめたんだ」
−−80年代にオランダでは16くらいの醸造所が生まれて、そのほとんどは生き残っていません。どうしてブロウワレイ・アイだけが生き残ったんでしょうか?
「当時はしっかりと味の乗ったビールってなかったんだ。ピルスナーばっかりだった。俺たちが作ったのは味がたっぷり乗ったビールだった。それが受け入れられたんだろうね。
(ちょっと考えて)正確にはもう一つすごく小さな醸造所がひとつだけ残ってる。俺たちは彼らに比べるとアムステルダムを拠点にしていたというのはある。そういう意味ではラッキーだった」
−−30年もそれで生き続けるってすごいことですよね
「いいものを作りたいというのが芯にあるんだよ。そしてそれをやり続ける。例えばZatteが俺たちの最初のビールだけど、80年代に飲んだZatteと今のZatte(下の写真)は全く何も変わらないよ。昔に飲んだ時もクールでうまいビールだったし、今飲んでもクールでうまいビールなんだ。宣伝もほとんどやらないんだ。ここまで広まったのは俺たちのビールを気に入ってくれた人たちの口コミのおかげだよ。
あと流行を追わない。流行に合わせて味を変えたりしない。ライトなビールが流行ってるからライトにしたりしない。マーケティングとかやらないんだ。ターゲットオーディエンスがどうこう外部のマーケターがアドバイスしてくれるんだけど、あまり気にしたことないね。うまいビールを作り続けるだけさ」
−−商業的に成功して30年生き続けるだけで十分にすごいんですが、30年間クールでい続けるというのはさらにすごいんですよね。
「俺たちはクラフトビールを作るクラフトマンなんだ。マーケターじゃない。成功して大きな会社みたいになった醸造所もあるけど、彼らは最初からそれを目的ではじめたんだと思うよ。彼らは彼らの目的がある。根っこの部分から違うんだ。
クールでい続けるというのはうまいビールを作り続けるクラフトマンであり続けるということなんだろうな」
−−最近はクラフトビールがブームで新しい醸造所がオランダだけで今年に入って60以上できたそうです
「業界が盛り上がるというのはいいことだよ。ただ、その中で本当に自分たちで醸造しているところがどれだけあるのかってことだよね。ビールからパッケージングまでアウトソースをするのはよくあるパターンなんだよ。
うちでは定番が8種類あって、他にシーズン物や一度だけ作る限定版がある。シーズン物や限定版で色々と試すんだ。一回作った限定版がすごく評判が良くても飲める期間がすごく短くて管理が難しかったり。俺たちのビールは加熱殺菌しないし、ろ過もしない。すべての味がボトルに詰まっていて、ボトルの中で熟成し続ける。出荷する前に何ヶ月か寝かせて出すとかね。
うまいビールを作るのって本当に大変なんだ。俺たちは今でもこういった試行錯誤をやって新しいビールを出し続けてるよ」
−−30年間で何か変わったことはありますか?
「需要に追いつくために醸造所を大きくしたよ。まだこれから大きくなるよ。
あと、毎日品質管理をしてるんだ。ビールって生き物だからちゃんとチェックしないといけない。今まではテイスティングだけで"いい"とか"あれ?ちょっとおかしいかな?"とかやってたんだ。でも、今はちゃんとラボでも科学的にチェックしてるよ!
生産量が増えると自分たちの舌だけではチェックしきれないんだよ。品質を一定にしなければいけない。そのチェックをするラボの導入は変わったことの一つだね」