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書評|クソくだらなくて意味のない仕事が増えている|Bullshit Jobs by David Graeber【2018年夏休み読書週間】

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本来必要ない仕事があったら?そして、その仕事をしている人はそれに気づいていたら?これが今回紹介するデビッド・グラバーの"Bullshit Jobs"の主題です。様々な調査によると37%から40%の人が自分の仕事がなくなっても何も世の中に影響がないと考えています。さらに、仕事自体は意味があったとしても、意味のないタスクをしていると考える人を入れれば、全体の仕事の50%以上は意味がないことになります。

なぜそんなことになってしまったのでしょうか?

Bullshit Jobs: A Theory

Bullshit Jobs: A Theory

 

ケインズ経済学で有名な経済学者のジョン・メイナード・ケインズは人は1930年代に週15時間だけ働けばいいようになるだろうと予測しました。週に5日働くとしたら、一日三時間ですね。ティモシー・フェリスのベストセラー『週4時間だけ働く』のような書籍はありますが、ケインズの予想はまだ実現されていません。そして、本来なら必要ない仕事、なんの価値も持たない仕事が増えています。 デビッド・グラバーはこのような仕事を"Bullshit Jobs"と名付けました。クソくだらなくて意味のない仕事という意味です。

Whatever happened to the 15-hour workweek?

「週4時間」だけ働く。

「週4時間」だけ働く。

 

クソくだらなくて意味のない仕事(Bullshit Jobs)とは?

仕事の価値は客観的に定義できません。この本での定義はその仕事をしている本人が自分の仕事自体に意味がなく、なくなってもビジネスは問題なく回り続けると思っている仕事です。つまり、実際にその仕事に携わっている人の主観です。

本人すら気づいてるほど無意味な仕事。仕事をしていなくても、誰も気づかない仕事。でも、公にはそうは言えない仕事。これが「クソくだらなくて意味のない仕事」の定義です。

ここではスペインで6年間(ひょっとしたら14年間)全く出社せず、誰も気が付かなかった事例などが紹介されています。これは極端にしても、Yougovなどの調査では37%から40%の人が自分の仕事は全て丸ごと「クソくだらなくて意味のない仕事」だと考えています。

看護婦や運転手がいなくなったら世の中は大変なことになります。いわゆるブルーカラーの仕事は意味のある仕事ですし、実際にそれに携わる人たちも社会的に意味があると考える傾向があります。自分の仕事がロビー活動家や企業弁護士がいなくなったら?クソくだらなくて意味のない仕事(Bullshit Job)と感じる人は付加価値サービスに携わる人たちに多いようです。

イヤな仕事(Shit Job)とクソくだらなくて意味のない仕事(Bullshit Job)との違い

イヤな仕事(Shit Jobs)とクソくだらなくて意味のない仕事(Bullshit Jobs)は違います。世の中にやりたくないイヤな仕事(Shit Jobs)は存在します。どのような職業にもそのような要素は多少なりともあります。劣悪な環境でツラい作業をしなければならなかったり、退屈な作業を繰り返しやらなければいけなかったり。

しかし、世の中が回るためには誰かがその仕事をしなければなりません。つまり、イヤな仕事だけれど、意味がある仕事です。クソくだらなくて意味のない仕事(Bullshit Jobs)は誰もその仕事をしなくても世の中は問題なく回るし、誰もなくなったことにすら気が付かない仕事です。

クソくだらなくて意味のない仕事の種類

デビッド・グラバーは5種類のクソくだらなくて意味のない仕事(Bullshit Jobs)を紹介しています。これは典型的なクソくだらなくて意味のない仕事(Bullshit Jobs)で、全てではないそうです。多くの場合はこれらの組み合わせです。

フランキーズ(下僕: Flunkies)

誰かの権力誇示のためにだけ存在する仕事。例えば、オフィスのドアマン。電話のアポ取りなど。クビにすると大変なので、とりあえず何か仕事を与える場合もある。他にも、会社での力が部下の数で測られると感じる上司など。

グーンズ(用心棒:Goons)

メキシコにとっての軍隊のようなもの。メキシコの国境はアメリカとガテマラとしか接していない。どんな強い軍隊を持っていてもアメリカには勝てないし、どんな弱い軍隊でもガテマラには勝てる。必要のない力。広告のエージェントやテレマーケティングなど必要ないものを必要だと印象操作をするような仕事。印象操作だし、場合によってはアグレッシブな印象を与える。 

ダクト・テーパーズ(ガムテープ:Duct Tapers)

根本的に壊れているものをガムテープで補強しながら無理やり使うためにだけに存在する仕事。例えば設計失敗したコアテクノロジーのパッチ開発など。

ボックス・ティッキング(プロセスのためのプロセス:Box Ticking)

プロセスを完了することだけが大事で、そのプロセス事態に全く意味がない仕事。例えば、インタビューしてそれをパソコンに入れるが、そのデータを実際に使ってクライアントを満足させることはないなど。プロセスだからやってるが、意味がないことも知ってる。他にもグループ合意をするためのミーティングなのに、誰も合意したことを覚えていないなど。

タスク・メーカー(無駄な仕事を作る人:Task Makers)

中間管理者など。フランキーズの仕事を作る人。

社会的な害悪としてのクソくだらなくて意味のない仕事 (Bullshit Jobs)

経済理論によればクソくだらなくて意味のない仕事(Bullshit Jobs)は理想的な仕事のはずです。経済理論によれば最小の努力で最大の結果を生み出すことだから、意味のない仕事で仕事をしたふりをして給料がもらえるなんて素晴らしいことです。

しかし、実際にはクソくだらなくて意味のない仕事(Bullshit Jobs)に従事する人は仕事をする意欲をなくし、気持ちが落ち込みます。約5%の人はクソくだらなくて意味のない仕事(Bullshit Jobs)を楽しんでいますが、多くの人は虚しさしか感じていません。

クソくだらなくて意味のない仕事(Bullshit Jobs)の存在を信じられない人

創業者や企業の役員はクソくだらなくて意味のない仕事(Bullshit Jobs)が自分の会社に存在することを信じていません。効率的に組織運営をして利益を出すために働いているのですからそれは当然ですね。しかし、実際には存在しています。だって、全体の仕事の50%はクソくだらなくて意味のない仕事(Bullshit Jobs)なんですから。少なくとも働いている人たちはそう感じている。

実際に多くの人たちが自分の仕事を「クソくだらなくて意味がない」と考える理由の一つに不透明性があります。なぜそれが重要なのか誰も説明できない。ひょっとしたら意味のないデータ入力もどこかで使われているのかもしれない。でも、実際にそれを行っている人も、その価値がわからなければ「クソくだらなくて意味のない仕事」をやらされていると感じるでしょうね。他にもいろいろな要因がありますが、これはその一例です。

創業者や企業の役員の人たちはその現実を認めて、クソくだらなくて意味のない仕事(Bullshit Jobs)をなくすためにはどうしたらいいか、ちゃんと考えたほうがいいですよね。

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