『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』は、マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)で新たな展開の起点となる予感がある作品です。「キャプテン・アメリカ」シリーズの『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』(2021年)の続編でもあり、『インクレディブル・ハルク』(2008年)の続編という一面もあります。
ほかのMCU作品とのどのような繋がりがあるのか知りたい人にはオススメですが、そのような要素は自分で探したい人にはオススメしません。観終わった後に、答え合わせに読むことはとてもおススメです。
『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019年)でスティーブ・ロジャースから盾を託されたサム・ウィルソン(アンソニー・マッキー)が、今作でその責任と重圧に立ち向かい、新たな脅威に挑む姿が描かれています。監督はジュリアス・オナー、主演はアンソニー・マッキーが務め、ハリソン・フォードやリヴ・タイラーといった豪華キャストも参加しています。

- あらすじ|新たな脅威と陰謀に立ち向かうキャプテン・アメリカ
- ほかのMCU作品とのつながり(重要度順)
- テーマ|責任と継承、そして贖罪
- キャラクター造形|新旧キャラクターの魅力と葛藤
- まとめ|新たな時代を切り拓くキャプテン・アメリカの物語
あらすじ|新たな脅威と陰謀に立ち向かうキャプテン・アメリカ
サム・ウィルソンは、スティーブ・ロジャースからキャプテン・アメリカの盾を受け継ぎ、新たなヒーローとしての道を歩み始めます。しかし、世界は依然として混乱の中にあり、過去にアベンジャーズとの確執があったサディアス・“サンダーボルト”・ロス(ハリソン・フォード)がアメリカ大統領として立ち上がります。ロスは、アベンジャーズの活躍を見て考え方を改め、新たなキャプテン・アメリカであるサム・ウィルソンにアベンジャーズの再結成を依頼します。
ほかのMCU作品とのつながり(重要度順)
MCU作品の中でもかなりマイナーな作品とかかわりが深い『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』。その内容を深く理解するために関連作品の解説をします。本作で登場するキャラクターは太字で表します。
『インクレディブル・ハルク』(2008年)
『アイアンマン』(2008年)に次ぐMCU第二作目という位置づけながら、『インクレディブル・ハルク』はこれまであまり言及されてこなかった作品です。それは主役のブルース・バナー/ハルクを務めたエドワード・ノートンが続投しなかったからです。そのため『アベンジャーズ』(2012年)ではマーク・ラファロがブルース・バナー/ハルクとして出演することになりました。
しかし、『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』ではサディアス・“サンダーボルト”・ロスが重要な役割を果たすため、その出発点としての『インクレディブル・ハルク』の重要性が増しています。ブルース・バナーは天才科学者で陸軍の実験依頼を受けてガンマ線を浴び、ハルクになってしまいます。その時に陸軍の責任者でキャプテン・アメリカを生み出した「スーパーソルジャー計画」を引き継いだサディアス・ロスとその娘であり恋人のベティ・ロス(リヴ・タイラー)に怪我を負わしてしまいます。サディアス・ロスとその娘のベティ・ロスとの不和はここまでさかのぼることができます。
軍から追われる身となったブルースは身を隠しながら実験を続け、「ブルー」と名乗る研究者(のちにサミュエル・スターンズ(ティム・ブレイク・ネルソン)だとわかる)とともにハルクの安定化に成功します。サミュエル・スターンズとサディアス・ロス、さらにハルクとの関わりもここまでさかのぼることができます。
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『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』(2016)
MCUのヒーローたちはソコヴィア協定で縛られていて自由に動くことができません。ソコヴィア協定とは、『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』(2015)で、東欧の小国・ソコヴィアでの戦いが原因で、民間人に大きな犠牲が生じたことを受けて国連委員会が提唱した協定書です。アベンジャーズをはじめとするスーパーヒーローや、無認可の技術を有する者たちを国連の管理下に置き、委員会が認めた時にのみ活動を許可するという制度です。
このソコヴィア協定を推進したのが当時のアメリカ国務長官だったサディアス・ロスでした。このソコヴィア協定の調印に反対するキャプテン・アメリカ(=スティーブ・ロジャース)を反乱分子とみなして捕獲に動きました。キャプテン・アメリカとサディアス・ロスとの対立はここまでさかのぼることができます。アベンジャーズにとって外の敵がサノスだったとすれば、内側の敵がサディアス・ロスだったとも言えます。
『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』において現在のアメリカ大統領となり、当時の国務長官としてソコヴィア協定を推進していたサディアス・ロスがアベンジャーズの再結成を依頼するというのはMCUの歴史において非常に大きな出来事です。サラッと描かれてしまっているので、分かりにくいかもしれませんが。
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『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』(2021年)
『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』ディズニープラスで配信されたシリーズなので、あまり多くの人は見ていないと思われますが、本作との繋がりにおいて重要作品となります。
『アベンジャーズ/エンドゲーム』でスティーブ・ロジャースからキャプテン・アメリカの盾を引き継いだサム・ウィルソンですが、すぐに自他ともに新しいキャプテンアメリカだと認められたわけではありません。その後を描く『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』では、自らその重責を受け止めることができず、キャプテン・アメリカの盾をアメリカに寄贈してしまいます。
また、『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』で二代目ファルコンとして活躍するホアキン・トレス(ダニー・ラミレス)は『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』で初登場するキャラクターするキャラクターです。
キャプテン・アメリカとしてのサム・ウィルソンの成り立ちと、ウィンター・ソルジャーことバッキー・バーンズ(セバスチャン・スタン)との関係を理解するうえでも本作は重要な位置づけとなっています。
また、ヴィブラニウムなどキャプテン・アメリカの技術的サポートをしているのが『ブラック・パンサー』(2018年)のルカンダであることも本作で描かれています。
『エターナルズ』(2021年)
興行的に失敗してMCUの黒歴史の一つとなりつつある『エターナルズ』も『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』とのかかわりでは重要な位置づけとなっています。本作での中心となるのがアダマンチウムが発掘できるセレスティアル島の所有権の争いです。アダマンチウムは『Xメン』のウルヴァリンの骨格となる金属ですが、本作でアダマンチウムはセレスティアル島で採掘でき、キャプテン・アメリカを支えているヴィブラニウムよりもすごい金属だとされています。
このアダマンチウムが採掘できるセレスティアル島は『エターナルズ』のラストで出現したティアマットそのものです。『エターナルズ』の続編は現時点では計画されていませんが、なかったことにはならないようです。
テーマ|責任と継承、そして贖罪
本作の中心的なテーマは「責任」と「継承」です。サム・ウィルソンは、キャプテン・アメリカの盾を受け継ぎながらも、その重圧や社会からの期待に葛藤し、自身のアイデンティティと向き合います。超人血清を持たない生身の人間として、彼がどのようにキャプテン・アメリカの役割を果たすのかが描かれる一方で、彼の存在はアメリカの理想や代表性といった問題にも深く関わります。ホアキン・トレスとの関係性を通じて、次世代への継承やチームワークの重要性も強調されます。
また、物語には政治的陰謀と権力のダイナミクスが絡みます。アメリカ大統領となったサディアス・ロスのキャラクターを通じて、政治的リーダーシップの複雑さや権力の腐敗の可能性が描かれています。加えて、セレスティアル・アイランドで発見されたアダマンチウムが世界情勢に与える影響が大きな鍵となり、技術の進歩とその責任についての問いが投げかけられます。国際社会における協力と対立、そして資源を巡る交渉の難しさも、ストーリーの中で浮き彫りになります。
さらに、本作は「信頼と裏切り」、「贖罪と再生」といったテーマも探求します。政府やスーパーヒーローの活動において、信頼がいかに重要であり、同時に脆弱であるかが強調されます。過去の過ちを償おうとするサディアス・ロスの試みは、変化と成長の可能性を示唆し、キャラクターの多層的な描写を深めます。これらのテーマが交錯することで、単なるヒーロー映画にとどまらず、現代社会の課題を映し出す作品となっています。
キャラクター造形|新旧キャラクターの魅力と葛藤
サム・ウィルソンは、新たなキャプテン・アメリカとしての使命を全うしようとする一方で、その重圧と責任に葛藤する姿が描かれます。彼は超人血清を持たず、生身の人間として戦うため、力ではなく知性や共感力を武器にします。今作では、世界の安定を脅かす陰謀を追う中でリーダーシップを発揮し、アベンジャーズ再建の可能性を示唆する場面もあります。アンソニー・マッキーは、サムの人間味とカリスマ性を見事に表現し、特にホアキン・トレス(ダニー・ラミレス)との交流シーンでは、その魅力が際立ちます。
一方、サディアス・ロスは、これまでの軍人からアメリカ大統領へと昇格し、全く新しい立場で描かれます。彼は自身の過去を清算し、疎遠になっていた娘・ベティとの関係を修復しようとするものの、アダマンチウムを利用して世界をより良くしようとする計画の中で次第に暴走していきます。その結果、彼はレッドハルクへと変貌し、自らの内なる怒りと向き合うことになります。ハリソン・フォードは、ウィリアム・ハートの後任としてロスを演じ、経験豊かな政治家としての威厳を持ちながらも、内面に秘めた激しい感情を見事に表現しています。
サムとロスの関係性は、映画の中でも重要な軸の一つです。過去に対立してきた二人ですが、サムは大統領であるロスの指示を受ける立場となり、政治とヒーローの関係が複雑に絡み合います。この対立構造を通じて、「責任」や「遺産」といったテーマが深く掘り下げられ、物語に緊張感をもたらしています。
まとめ|新たな時代を切り拓くキャプテン・アメリカの物語
『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』は、新たなキャプテン・アメリカとしてのサム・ウィルソンの葛藤と成長、そして新たな脅威との戦いを描いた作品です。責任と継承というテーマを軸に、迫力あるアクションと緻密なストーリーが融合し、観客を魅了します。マーベル・シネマティック・ユニバースの新たな展開を予感させます。

