ジャウム・コレット=セラ監督のサスペンスアクション『セキュリティ・チェック』の映画評です。ネットフリックス配信作品。
ジャウム・コレット=セラ監督はホラー映画『エスター』(2009年)が一番有名じゃないかと思うのですが、その路線の作品はその後あまり作っていません。リーアム・ニーソンと組んでサスペンスアクションを連続して作っています。本作もその路線の延長線上にあるサスペンスアクション作品に仕上がっています。主演は「キングスマン」シリーズで主役のエグジーを演じたタロン・エガートン。
ロサンゼルス国際空港の保安員として働くイーサン・コーペック(タロン・エジャトン)は美しい彼女ノラ(ソフィア・カーソン)が妊娠してこれから明るい家族生活が待っているはずなのだが、どこか満たされていない自分もいる。それは警察官になる夢をあきらめたからだった。ノラはイーサンを励ましてもう一度警察学校の試験を受けるよう勧める。そんななか二人が働くロサンゼルス国際空港に危険な荷物が持ち込まれようとしていた。二人はこの荷物を止めることができるのか?という話です。
まずキャラクター造形がとてもいいです。イーサン・コーペック(タロン・エジャトン)の成長譚としてとらえることもできる本作ですが、最初のくすぶった感じがとてもいい。いったん落ちた人はなかなか立ち上がることができない。その底にいる感じ。能力は十分にあるのだけれど、体が縮こまって動かない感じ。その対比となるのがジェイソン・ベイトマンが演じる「指示者」です。「指示者」は実行犯と依頼者の仲介役であり、ファシリテーターです。命令する者と従う者。弱者イーサンは強者である「指示者」に従うしかない。この主従関係の鎖を断ち切ることこそ成長につながることは観ているものはわかる。