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映画『ライフ・ゴーズ・オン 彼女たちの選択』レビュー|ケリー・ライカート監督が描く日常と選択の物語

2016年公開の『ライフ・ゴーズ・オン 彼女たちの選択』は、ケリー・ライカート監督がモンタナを舞台に描いた三編のオムニバス映画です。本作は、監督が愛犬ルーシーに捧げた作品であり、自然や動物、人間関係をテーマにした静かで深い物語が展開されます。

あらすじ|モンタナを舞台に描かれる三つの物語

『ライフ・ゴーズ・オン 彼女たちの選択』は、モンタナの広大な自然を背景に、異なる状況に置かれた三人の女性たちを中心に描かれた三つの物語から成り立っています。

  1. 弁護士と顧客のトラブル
     弁護士のローラが、問題を抱えた顧客との間で葛藤する姿を描きます。

  2. 家族とのすれ違い
     新居建設を進めるジーナが、家族との間に感じる微妙な距離感に向き合います。

  3. 教師と農場の女性の出会い
     遠方から夜間クラスを教えに通うベスが、農場で孤独な生活を送る女性と心を通わせます。

三つの物語は、それぞれが静かに重なり合い、人生における「選択」と「孤独」を浮き彫りにしていきます。

キャラクター造形|静かに深みを持つ女性たち

本作の最大の魅力は、ケリー・ライカート監督によるキャラクターの繊細な描写にあります。三人の女性たちは、それぞれ異なる状況に置かれながらも、共通して内面的な葛藤や選択の難しさを抱えています。

  • ローラ(ローラ・ダーン)
    弁護士として仕事に取り組む中で、顧客の無理な要求に振り回される女性。ローラ・ダーンの演技は、ローラの内に秘めた疲労感や怒りを自然に表現し、観客に共感を呼び起こします。

  • ジーナ(ミシェル・ウィリアムズ)
    家族のために新しい家を建てようと奮闘する女性。しかし、夫や娘とのコミュニケーションがうまくいかず、すれ違いが積み重なっていきます。ジーナの微妙な孤独感が印象的です。

  • ベス(クリステン・スチュワート)
    夜間クラスの教師として働きながら、自らの将来に迷う若い女性。彼女が農場の孤独な女性(リリー・グラッドストーン)と築く不思議な絆は、物語の中で最も心に残る部分となっています。

登場人物たちの心情が丁寧に描かれており、それぞれが独立した物語でありながら、共通のテーマで結びついています。

テーマ|「置いていかれた人たち」の選択

ケリー・ライカート監督は、社会の中で孤立し、取り残された人々を描くことを得意としています。本作では、三人の女性たちを通じて「人生における選択」と「孤独」をテーマにしています。

彼女たちの静かな日常や葛藤は、観る者に自身の選択や生き方について考えさせるきっかけを与えてくれるでしょう。

映画技法|自然と音楽が物語を補完

モンタナの広大な自然が、登場人物たちの孤独や心の動きを象徴的に描き出しています。ライカート監督の演出は、自然の持つ静けさや美しさを活かし、セリフ以上に感情を伝える効果を持っています。また、音楽が控えめに使われることで、静寂や環境音が際立ち、観る者を深く物語に引き込みます。

まとめ|静かな詩情が響く人生の一片

『ライフ・ゴーズ・オン 彼女たちの選択』は、広大な自然と繊細なキャラクター描写を通じて、人生の選択や孤独を描いたオムニバス映画です。ケリー・ライカート監督の独特の視点が光る作品であり、静かな感動と余韻を残します。

自然や人間の繊細な関係性を描いた作品が好きな方には、特におすすめです。