ルカ・グァダニーノ監督によるプロテニスを題材とした人間ドラマ『チャレンジャーズ』の映画評です。『ボーンズ・アンド・オール』(2022年)とか『君の名前で僕を呼んで』(2017年)とかグァダニーノ監督の過去作品は題材に響かず、観てこなかった。本作が初の監督作品鑑賞です。
テーマは「生きる活力としての闘争心」だと受け取りました。これまでラケットでボールを打つだけの人生だった主人公たち。彼らにとって生きる意味とは?
高校時代からダブルスを組んでいたパトリック(ジョシュ・オコナー)とアート(マーク・ファイスト)。二人はタイプは全く違うが、いいはピッタリ。そんな二人の前に現れたツヨツヨのテニスプレイヤー、タシ・ダンカン(ゼンデイヤ)。普段はタイプが全く違う二人だけど、ふたりともタシの惹かれて……という話です。
テーマは闘争心なので、題材としての競技テニスがぴったりハマっています。男女同じようにプレーできますからね。プロとして勝ち抜いていかなければいけない。でも、闘争心の発火点は人それぞれ。そこに個性が出てくる。
闘争心がどのように現れるか。キャラクター造形は主人公の三人が中心となります。タシは最初から闘争心の塊。パトリックはテニスだけでなくすべてをゲームのように捉えている。アートはなんのためにテニスを続けているのか模索中。それぞれ全く違う個性の三人が同時に発火点に導かれるカタルシスの演出がとても上手いと思いました。
内容とはあまり関係ない部分ですが、インティマシー・コーディネートがとてもうまかったと思います。女性を性の搾取の対象としていない。三角関係の話なので、セクシュアルに流れてもおかしくない。それを意味があるセクシュアルな描写にとどめている。これからの映画の標準ってこうなっていくんだろうなあ。