小説家アレックス・ガートランドが内戦が起きたアメリカを描いた作品『シビル・ウォー アメリカ最後の日』の映画評。戦争映画というよりはロードムービー。ガートランド監督作品の『アナイアレイション -全滅領域-』(2018年)に雰囲気的に近しいものを感じた。
アメリカは二回目の南北戦争が勃発中。戦争ジャーナリストたちがその内情を伝えるために前線に赴く。ソーシャルメディアのために二極化が進んでいる一方でマスメディアの価値が問われている現代のアメリカを映し出していると言える。あと、湾岸戦争などでも浮き出てきた戦争のバカらしさ。
ただ、そこはあまり重要ではない。だって、ロードムービーだもの。旅の過程でジェシー・カレン(ケイリー・スピーニー)が記者として成長する過程が焦点。これが海外の戦争だと若いジェシーがそもそも行けないから、アメリカ内戦の方が都合がいい。
主人公はジェシーの憧れの戦争記者リー・スミス(キルスティン・ダンスト)なんですが、テーマの中心に彼女がいない。全体的なキャラクター造形の弱さはそのせいかもしれない。サミーからリーが受け継いだものをジェシーに伝えるという構図が優先されている。メインのキャストよりキャラが立ってたのは赤いサングラスの軍人を演じたジェシー・プレモンスですものね。腕時計など細かいところまでキャラクター設計がされてましたよね。
A24作品だということを差し引いても、見る側の期待としては「戦争映画」だったのだと思う。大ヒットにならなかったのはそのためかなと。シェアされる要素も「赤いサングラスやべえ」が一番だっただろうし。戦争映画なのかロードムービーなのかハッキリしないのが焦点もぼやけた印象に繋がってしまったと思うなあ。そこがもったいない。