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興味がない人は無理して読まなくていいんだぜ。

映画評|『瞳をとじて』ビクトル・エリセ監督(2023年)

いろいろ評価が難しい寡作なビクトル・エリセ監督の最新作『瞳をとじて』の映画評です。ドキュメンタリーを除けば三作目。本作の評価ポイントはテーマ。これが見つけられるか、見つけられないかで大きく評価が変わると思います。ボクは残念ながら(まだ)見つけられていません。監督は「アイデンティティと記憶」をテーマとしているそうなのですが、ボクにはそれが見つからない。

映画『別れのまなざし』の撮影中、主演俳優フリオ・アレナスが失踪する。22年後、『別れのまなざし』の監督を務めていたミゲルはフリオの失踪事件を追うTV番組の出演依頼を受ける。過去を忘れた男と過去を忘れようとする男。二人の世界は再び交わるのか……という話です。

本作にトリビア的な小ネタを見つけるのはたやすいと思います。『ミツバチのささやき』(1973年)や『エル・スール』(1982年)など自身作からの引用やドライヤーやの他の過去作へのオマージュや言及。そういう小ネタはいっぱいあります。

それ以外にも、本作のタイトル『瞳をとじて』と、劇中劇となっている『別れのまなざし』の対比とかヤヌスの鏡とか。娘を探す父親と、父親を探す娘の対比とか。


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隠喩はいっぱいある。でも、エリセ監督は何が言いたかったの?これが見えない。テーマがぼやけてよく見えないのは『ミツバチのささやき』も同じなので、ビクトル・エリセ監督の特徴と言えなくもない。

ただ、ビクトル・エリセ監督の裏テーマっだいたいフランコ政権についてだったりして、今回もそれ?と思わなくもない。映画技法はとても凝ってると思うんだけど、肝心のテーマとストーリーがなあ。