カタパルトスープレックス

イノベーションに効く世界の情報を日本語で

書評|プログラマーという人たち|"Coders" by Clive Thompson

f:id:kazuya_nakamura:20190421215302p:plain

職業には特定のイメージが付きまといます。弁護士は硬いイメージ、ホストはチャラいイメージ。今回紹介するクリーヴ・トンプソンの"Coders"はプログラマーに焦点を当てて、どんな人たちなのかを描いていきます。プログラマーも内向的でコミュニケーションが苦手なオタクっぽいイメージがありますよね。当然ながらそういう人たちは多いのですが、そうでない人たちだってたくさんいます。

Coders: The Making of a New Tribe and the Remaking of the World (English Edition)

Coders: The Making of a New Tribe and the Remaking of the World (English Edition)

プログラミングとジェンダー

このご時世、職業としてのプログラマーを掘り下げていくと避けて通れないのがジェンダー論です。"Coders"でも一章をジェンダー論に費やしています。その章以外でも女性とプログラマーのトピックにはかなり神経を使って触れています。エミリー・チャンの"Protopia"でも紹介されていますが、プログラマーはもともと女性の職業でした。

コンピューターはハードウェアで、ソフトウェアはその付随的な役割くらいにしか考えられていなかったこともあります。そして、弁護士や医師のような「セクシー」な職業と違って、お金が儲かる職業ではなかったのもその理由の一つです。プログラマーはコミュ障のオタクの白人男性である必要はないのです。

プログラマーは整理整頓が大好き?

プログラミングやアルゴリズムは論理そのものなので、論理的思考が必要となります。"Coders"でもプログラマーは論理的思考をする人たちだと紹介されています。ただ、どうなんでしょうね。「プログラミングは論理的な思考が必要」=「プログラマーは論理的思考ができる」なんですかね。プログラミングにも習熟が必要で、習熟者が書くコードは初心者が書くコードより無駄がないですよね。

この本にもリファクタリングの話が出てきます。ボク個人も開発プロジェクトをリードする立場にありましたが、あまり経験のないプログラマーの書くコードは耐えられないくらいぐちゃぐちゃでした。動けばいいのですが、ぐちゃぐちゃなコードは技術的負債としてどんどん積もっていきます。

そういう意味ではプログラミングという行為を通じて論理的思考が強化されていくんだと思います。論理的思考ができる人はプログラミングに向いているとは思いますが。

ハッカーとクラッカー

プログラマーはリバタリアンのイメージもあります。自由の戦士。でも、実際にアンケート調査をすると、かなりリベラルだったりするそうです。政府による企業への干渉には反対だけど、それ以外はリベラル。まあ、スタートアップの多いサンフランシスコやニューヨークはそもそもリベラルな街ですからね。

この前ついに逮捕されてしまったジュリアン・アサンジのWikileaksやサイファーパンク、ハッカー集団のアノニマスはリバタリアンのイメージが強いですよね。

ハッカーはプログラミングに精通している人、クラッカーはその技術や知識を悪用する人です。ハッカーとクラッカーはコインの裏表の関係にあります。何をハックするか。善悪の区別があまりつかない若いプログラマーだと特にそうです。

この本はどんな人にオススメか

なんとなくオススメしにくい本です。著者であるクリーヴ・トンプソンはプログラマーのステレオタイプとは違うイメージから抜け出そうとしています。そのためにいろんなプログラマーを紹介しているのですが、たくさん紹介しているが故に一人一人はあまり掘り下げられていません。つまり、深みがありません。このブログでも紹介しているCode for AmericaやInstagramや他のスタートアップのプログラマーたちも紹介されています。自分がいろいろ調べて書いたこともあって、その浅さが気になってしまうんですよね。

ただ、「プログラマーすげーぜ!世界変えるぜ!」みたいな軽薄な書籍ではありません。いろいろと多角的な見方をしています。そういう意味では広く浅くプログラマーという職業を知りたい人にはオススメです。