カタパルトスープレックス

興味がない人は無理して読まなくていいんだぜ。

会話の糸口としての音楽、落語、酒と映画

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Photo by Ike louie Natividad from Pexels

ボクは基本的に人づきあいが苦手です。面倒に感じてしまいます。でも、人間は社会的な生き物で、人づきあいせずには生きていけません。そこで、会話が苦痛にならないように戦略を立てるようになります。ふつうの人はこんなこと考えずに済むのかもしれませんが、人づきあいが苦手なボクには戦略が必要なんです。かわいそうだと思われるかもしれません。まあ、そうですよね。こんなこと考えながら会話をするって不幸なのかもしれません。でも、それがボクなんです。

「どんな哺乳類が好きですか?」って質問されたら困りますよね。「動物園で見るならどんな動物を見たいですか?」くらい具体的だと答えられます。それならボクの場合はオランウータンです。できればシンガポール動物園のように一緒に写真撮影とかできるとうれしい。「哺乳類が好き」ってペットとして飼うなら、食用として食べるならとか、他にも色々なケースが考えられますからね。そんなのわかっているから、「どんな哺乳類が好きですか?」なんて聞く人はあまりいない。「イヌ派?ネコ派?」くらいに適度な粒度で答えやすい質問になる。動物に関する質問は、こうやってイヌとネコによって世界が平和に導かれ、会話として成立します。

「どういう音楽が好きですか?」という質問は「どんな哺乳類が好きですか?」と同じ意味で困ります。まず、音楽の種類は哺乳類並みに幅広いし、様々なケースが考えられるからです。寝る時とか、踊る時とか、カラオケで歌う時とか。それでも会話の糸口として「どういう音楽が好きですか?」は頻繁に使われます。そもそもボクは多くの人たちが聴くであろうジャンルはあまり聴かないのです。「どういう音楽が好きですか?」という質問の目的である会話の糸口を掴むきっかけを提供できない。だから困る。「わたしはヘビーメタルが好きだが、あなたはどうか?」ぐらい具体的だと助かります。それなら「最近のヘビーメタルはわかりませんが、NWOBHM以前の昔のヘビーメタルやハードロックはたまに聴きますよ。六本木のバウハウスも気が向けば行きます」くらい会話の糸口は提供できます。特に好きではないけど、会話のおつきあいくらいはできる程度に知ってますよと。

「落語とか聴きますか?」は粒度としてはちょうどいいのですが、身構えてしまう質問です。そういう人はたいてい落語のカセットテープとかCDをたくさん持ってて、古今亭志ん生や三遊亭圓生のみならず三遊亭金馬や古今亭馬生とかたくさん聞いてる。生前の古今亭志ん朝や立川談志の高座もちゃんと観ている。今だと立川志らくや柳家喬太郎の高座に行ったりする。「落語とか聴きますか?」という質問だけで、その人のプロフィールがなんとなくわかってしまう。こちらも身構えてしまいます。だから「志ん朝さんや談志さんは生前は一人会をよく観ました。今だと新作は円丈さんとか白鳥さん、古典は最近はあまり聴きませんね」とこちらの守備範囲を定義するような返答をします。三代目金馬が四代目と比べていかに偉大だったか語られてもついていけませんよと。

「どういうお酒が好きですか?」は困るし、身構える質問ですね。そこで、まず「醸造酒よりは蒸留酒の方が好きです」と答えるようにしています。まずは粗めに答えて、会話の糸口となる粒度を探ります。あまりお酒に詳しくない人だと「醸造酒と蒸留酒って何ですか?」となる。日本酒が醸造酒、焼酎が蒸留酒。焼酎のほうが好きってことです。少しわかってる人だと、「ウィスキーとかですか?」と少し掘り下げてくる。そうすると「ウィスキーより最近はジンとラムにハマってます。あと、芋焼酎も好きです」と少し腹を割って話せる。

会話の糸口としての「映画好きですか」は偉大な質問です。まず、映画をあまり観ない人はこんな質問をしない。そして、映画好きは間口が広い人が多い。もちろん、好みはあるのだけれど、守備範囲以外でもそこそこ語れる可能性が高い。アヴェンジャーズが嫌いでも、なぜ嫌いなのか語れる。ゾンビ映画が苦手でも架空のゾンビ映画について想像を巡らせることができる。「自分が作るなら、こんなゾンビ映画」とか「走るゾンビはアリかナシか」とか。音楽の好き嫌いは人間関係をギスギスさせるけど、映画の好き嫌いは会話を豊かにする。不思議なものです。

ただ、アニメは難しい。ガンダム以降をフォローしているかどうかで、会話の運用が全く異なる。つまり、『まどマギ』とか『天元突破グレンラガン』とか『PSYCHO-PASS』とかまで踏み込んでこれるか。何なら「『映像研には手を出すな!』楽しみだよねー。NHKアニメは『未来少年コナン』とか『電脳コイル』とか優秀作が多いもんね」とか。ここまで踏み込める人だと昔のアニメでも金田パースとか板野サーカスとかDAICONとか話ができる。

で、結局は何が言いたいのか?会話には適切な粒度と方向性が必要ということです。粒度というのは広すぎず狭すぎずのバランスってことです。漠然と哺乳類の話ではなく、動物園の動物の話とか。方向性とはどっちの方向にもっていくかってことです。音楽の話をして、「じゃあ、今度一緒にライブに行こうか」なのか、お酒の話をして「じゃあ、今度一緒に飲みましょうよ」なのか。あと、この戦術は「受けの戦略」なので、会話の「引き出し」を多く持つ必要があります。「カタパルトさんって、何か投げても必ず何か返すよね」といわれることが多いです。それだけ間口を広くとってるからです。単にいろんなことに興味があるってのもありますが、知らないことが不安なのかもしれません。

これが人づきあいが苦手なボクの会話の戦略です。もし、同じような人がいたとしたら参考にしてください。