最初は前編と後編の二回で終わろうと思っていたこの「デザインシンプル」シリーズですが、三回目を迎えてしまいました。第一回はエクスペリエンス・デザインとは何か?第二回からは具体的にどうしたらいいのということで、まずは調査のやり方を解説しました。
第三回目は調査したことをふまえて、具体的に「どうやってプロダクトやサービスのアイデアを出していくか」という話です。おお、やっと商品を作れるのか!と小躍りしている人がいたら大変恐縮なのですが、まだそこまでいきません。アイデアだけです。PDCAで言えばまだ引き続きPの計画です。
前回の調査は「ホップ・ステップ・ジャンプ」でしたが、今回のアイデアだしは「足して、引いて、混ぜて」です。プロセスとか、イラッとする点とか、どこに幸せを感じているかとか。その現状を題材として1) 足したり、2) 引いたり、3) 混ぜたりしてみます。
足してみる
スーパーマーケットのサービスや商品に何を足すことができるでしょうか?お米を持って帰るのは大変そうだから宅配サービスとかあったらよさそうだし、実際にありますよね。坂道が多いのであれば定期的な送迎サービスとかもよろこばれそうです。
「足してみる」というのは既存のサービスや商品に新しい何かを加えることです。これが一番簡単ですし、考えやすいですよね。
引いてみる
さて、意外と難しいのが「引いてみる」ということです。スーパーにはレジがありますが、米国AmazonがはじめたAmazon Goは買い物からポスレジを「引いた」ものです。特に買い物するアイテムが多ければレジで並ぶ時間も長くなります。そういう無駄な時間が無くなるのはいいことですよね。
その他にもメニューがないレストランとかありますよね。料理はおまかせ飲み放題。一人一律いくら。予約が取れないお店などはこのような形態が多い気がします。
「引いてみる」というのは既存のサービスから何かを無くすことです。余計なプロセスは少ない方がよい体験を生み出すことができるので、「引いてみる」というのは大事な考え方です。
混ぜてみる
「足してみる」も「引いてみる」も既存の商品やサービスを変えることはありません。でも「混ぜてみる」は既存の商品やサービスを文字通り混ぜるので商品やサービス自体が少し変わります。例えばインターネットとスーパーマーケットを混ぜればインターネットのショッピングサイトになりますよね。坂道が多い道を自転車で行かなければいけないのは大変そうです。そもそもインターネットで買い物ができればいいのではないでしょうか。最近ではストリーミングサービスとテレビショッピングを混ぜてストリームショッピングも流行りはじめていますよね。一昔前の「ビリーズブートキャンプ」も軍隊トレーニングとエクササイズを混ぜたものでしたよね。
このやり方は「リフレーム」と言われたりします。中国人はこのやり方がすごく上手いですね。
この「混ぜてみる(リフレーム)」には実は簡単なレシピがあります。英語でいうとA for Bです。例えばUber for Delivery Serviceとか。Uberというシェア経済のサービスがありますが、これをタクシーじゃなくてデリバリーサービスに置き換えたらどうなの?という感じです。「デリバリーサービス版のUber」これがUberEatsですよね。他にも「駐車場版のAirbnb」が軒先バーキングですし、「ロッカーのAirbnb」がエクボクロークです。例えば自分のビジネスが花屋だったら「花のUber」、「花のLINE」や「花のブロックチェーン」ってどういうこと?と考えてみる。なんだか考えるだけでワクワクしてきませんか?
イライラをアイデアに変える
これまで紹介したやり方はすでにある商品やサービスを土台に新しいものを作る方法でした。でも、そもそも全く新しいアイデアってどうやって出てくるのでしょうか?例えばアップルのiTunesやiPhone。FitbitやGoProのようなこれまでになかったハードウェアやUber、Transferwize、Airbnbのようなこれまでになかったサービス。
英ヴァージンのリチャード・ブランソンの言葉を借りれば「イラっとしたことからビジネスが生まれる」ということなんだと思います。ボク自身も起業家ですし、国内外の他の起業家にも色々と話を聞きました。多くは「イライラ」することを解決したいという気持ちが原動力になっている気がします。
なんでタクシーがつかまらないんだ?という「イライラ」がUberになり、「ホテルって高いよな、もっと気軽に泊まれるところが欲しいよ」がAirbnbになり、「送金ってなんでこんなに高いんだ!」がTransferwizeになる。iTunesが生まれたのだって「もっと音楽を自由に聴きたい!」というイライラから生まれましたしね。それに先駆けたNapsterは潰されましたし。それがiPodになり、iPhoneに繋がっていく。
前回に説明した「ホップ・ステップ・ジャンプ」の調査で探さなければいけないのはこの「イライラ」ポイントなんですね。自分自身が感じるイライラはよくわかるけど、他人の感じるイライラはどんな時に感じるのか。それを解決するにはどうしたらいいのか。それがアイデアの第一歩となります。