ヨーロッパの人たちは「フェア」という考え方をとても大事にしています。フェアって平等とちょっと違う。騎士道というかノブレス・オブリージュに考え方としては近いような。格差はある。格差があるということを認めつつ、それが搾取につながらないように気をつける。もちろん、アメリカにもそういう考えの人はいるんですが、もっと上昇志向が強くて他人を蹴り落としてでも上に登ろうという人が目立つ気はします。
例えばオランダではフェアトレードの商品が普通にスーパーマーケットで売っている。オランダ自体がフェアトレードでは重要な役割を果たしてきたので、特にフェアトレードが浸透しているのかもしれないです。
そこでオランダ発のフェアフォン(Fairphone)です。フェアトレードで作られた、フェアなスマホ。いつものノリだと、フェアフォンにフェアトレードについて聞いてみよう!とインタビュー取材をするのですが、今回はインタビューしていません。その理由は最後に書いてあります。フェアフォンってすごいんですよ!
フェアフォンって何?
そもそも、このフェアフォンは発想が違う。高機能!とかキレイな画面!とか便利な機能!とかそういうのを目指していない。目指しているのはスマホのフェアに関する問題点をあぶり出して広く議論となるような刺激になること。もちろん、ユニークでデザインも悪くない。欲しくなるようなスマホに出来上がってますよ。ただ、そこが目的ではない。おそらくフェアフォンを買う人もそこを求めて買っているわけじゃない。スペックだけ見たらかなり凡庸ですから。
なるべくフェアなスマホを作ろうとしていて、そのプロセスやデータをすべて公開している。彼らは「これは問題だ!なんとかしろ!」と他人事のようにアップルやサムソンを批判したりはしない。自分たちが当事者となってどうしたらフェアなスマホを作れるのか試行錯誤しながら実践している。スマホを実際に作って事業にしている。そこがすごいと思います。
ボクたちが持っているスマホのいったい何がフェアじゃないのか?
働く環境
じゃあ、いったい何がフェアじゃないのかというのが気になりますよね。フェアフォンは何を理解してどう変えようとしているんでしょうか?これはスマホだけじゃないのですが、モノを作る過程で過酷な労働を強いられたり、危険にさらされたりする人たちがいるんです。フェアフォンはスマホを作るためにそういう搾取がないように作っている。
紛争鉱物
スマホを作るにはいろいろな鉱物を使う必要があるのですが、その原材料の中には紛争鉱物というものが含まれている。
例えばスマホのコネクターに使われている金やスズ、タングステン。コンゴでたくさんとれるのですが、コンゴは世界で最も貧しい国の一つで紛争でたくさんの人が死んでいます。金やスズなどの紛争鉱物が武装勢力の資金源になっているんです。
フェアフォンは紛争の資金源となっていないルワンダの炭鉱で原材料を仕入れています。
アップルがリサイクルプログラムで金の再利用を始めましたが、これは資源を大切にするだけでなく紛争鉱物をめぐる悪循環を止める効果もあります。アップルやサムソンなど大手メーカーがこのような活動を開始したのもフェアフォンによる啓蒙活動の効果のひとつじゃんかないかと思います。
再利用
スマホは使い終わったらゴミになりますよね。これが電子廃棄物(ewaste)という問題になっています。
昨年新しく発表されたフェアフォン2は世界初のコンポーネント型スマホとしてモジュラーデザインが話題になりました。古くなったり壊れたりしたコンポーネントを簡単に取り替えられます。
やはりオランダのフォンブロック(Phoneblok)もコンポーネント型のスマホを作っています。なんというか、こういうのってやっぱりオランダなんですかね?グーグルもProject Araで頑張ろうとしていますがまだ出せていません。[アップデート] グーグルはProject Araを正式にキャンセルしましたね。
これだけフェアフォンが情報を出していて、ボクはこれ以上何を聞いたらいい?
フェアフォンの情報公開は非常に徹底しているので、インタビューしなくてもここまで書けてしまうんですよ。わざわざインタビューのために時間を取ってもらうまでもない。実はフェアフォンの人と少し話をしたことがあります。ビールを飲みながらですが!いろいろな課題があるそうです。フェアなスマホを作るにはどうしたらいいのかという問題と日々戦っているわけですからそりゃ当然ですよね。
例えばフェアフォンのスペックは最新のフェアフォン2でもマーケット的には一昔前のアッパーミッドレンジくらいです。例えばクアルコムのスナップドラゴンの最新版を使いたくても彼らくらいの規模だとボリュームが出ないので仕入れ値がどうしても高くなってしまう。これって愚痴になってしまうので、彼らのホームページにはそういうことは書いてないですね。でも、これくらいかなあ。
いつものインタビューシリーズとはちょっと違いますが、こういう情報は日本ではなかなか注目されないと思うので、ボクも微力ながら日本語の記事にして貢献しようかなと思った次第です!
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