ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー監督による「格差と搾取」をテーマとしたドラマです。ゲイであるファスビンダー監督がはじめてゲイを扱った作品でもある。
フランツ・ビーバーコップ(ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー)はあまり才能があるとは言えない大道芸人。姉と一緒に暮らしながらくすぶっていた。宝くじが当たり、これまでに持ったこともない大金を手に。上流階級の友達を作り、仲間に入ろうとするのだが……という話です。
フランツは劣等感に苛まれ承認欲求が強い。大金を手にすることで劣等感がなくなるはずなのに、承認欲求が満たされない。ありのままの自分でいたいけど、ありのままの自分では上流階級では受け入れられない。本当の金持ちと成金の違い。
主役をファスビンダー監督自ら演じるのですが、共感したいけど、共感できない。すごい絶妙なバランスだと思います。なんか、友達の息子にそっくりなんですよねえ。とにかく自分の欲望に正直で、それを与えられるのが当たり前だと思っていて、手に入らないと不機嫌になる。そんな子供っているじゃないですか。そして、子供の立場は弱い。
フランツも子供と同じで、大人(上流階級)にいいように手玉に取られてしまう。弱いから可哀想だとは思うけど、でももっと上手に立ち振る舞えよとも思う。共感しきれない。このバランス。
ストーリーは高速展開。余計な部分は極力削ぎ落とされている。ラフに切り取られているからすごく荒削り。なのに丁寧な演出。単純な話なのだけれど、奥深く感じる。これがファスビンダー監督の特徴のひとつですよね。