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『グランツーリスモ』映画レビュー|ニール・ブロンカンプ監督が描く実話ベースのレース映画

『グランツーリスモ』は、実在するGTアカデミーを舞台に、プレイステーションの人気ゲーム『グランツーリスモ』を極めたヤン・マーデンボロー(アーチー・マデクウィ)が、プロレーサーとして成長していく姿を描きます。ゲームと現実の境界を超えたサクセスストーリーが主軸ですが、その描写はどこか平凡で、「夢はかなう」というテーマ以上の深みを感じるのは難しい作りになっています。

あらすじ|ゲーマーからプロレーサーへのサクセスストーリー

主人公のヤン・マーデンボロー(アーチー・マデクウィ)は、レースゲーム『グランツーリスモ』に夢中な青年。彼の夢に理解を示さない父親と対立しながらも、GTアカデミーの大会に参加し、実績を重ねていきます。順調に見えたヤンの道のりですが、ライバルとの争いや失敗を経験し、プロレーサーとして本当の意味で成長していく姿が描かれます。

物語の展開は非常にオーソドックスで、スポーツ映画でおなじみの「親との葛藤」「ライバルとの対立」「挫折と克服」が並びます。実話を基にしているとはいえ、どこか予定調和的な進行が否めません。

テーマ|夢はかなう

本作のテーマは明確で、「夢はかなう」というメッセージが繰り返し提示されます。ゲーム好きな青年が努力を重ねて現実のレーシングドライバーになるという物語自体は感動的ですが、それ以上の深みや新しい視点はほとんど見られません。

特に、登場人物の感情や背景が浅く描かれているため、テーマの説得力に欠ける部分があります。主人公ヤンの葛藤や成長も表面的に感じられ、観客が彼の夢に共感するには物足りない描写が目立ちます。

キャラクター造形|浅く描かれた登場人物たち

主人公のヤン・マーデンボローは、「ケニーGとエンヤが好き」という趣味が設定されていますが、それ以上の個性が描かれていません。彼の情熱や人間味がもっと掘り下げられていれば、物語全体の印象が変わったかもしれません。

コーチ兼メカニックのジャック・ソルター(デヴィッド・ハーバー)は、厳しい言葉を投げかけるも、結局は主人公を応援する典型的な指導者キャラクター。彼の過去の傷が一応描かれていますが、あまりにも淡白でストーリーに大きな影響を与えるわけではありません。その他のキャラクターも類型的で、特にライバル役の金持ち青年はステレオタイプ的な描写に終始しています。

映像と演出|迫力あるレースシーンが唯一の見どころ

本作で評価できる点は、レースシーンの映像表現です。臨場感あふれるカメラワークやエンジン音の演出は、観客にレースのスピード感を体感させる迫力があります。しかし、その映像美も繰り返しの多い展開の中で次第に新鮮さを失い、クライマックスの盛り上がりに欠ける印象です。

まとめ|テンプレートに終始した平凡なレース映画

『グランツーリスモ』は、実話に基づくサクセスストーリーでありながら、平凡な演出と浅いキャラクター描写が目立つ作品です。レースシーンの迫力は評価できますが、それ以外の要素が薄味で、全体的に心に残るインパクトには欠けます。

「夢を追いかける物語」が好きな人や、軽く楽しめる映画を探している人には悪くない選択ですが、観る価値があるかと問われると賛否が分かれるでしょう。ニール・ブロンカンプ監督の次回作に期待を寄せたい作品です。

グランツーリスモ

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