ユッカ・ヴィドゥグレン監督とユーソ・ラーティオ監督によるヘヴィーメタルを題材としたコメディ作品『ヘヴィ・トリップII/俺たち北欧メタル危機一発!』の映画評です。前作『ヘヴィ・トリップ/俺たち崖っぷち北欧メタル!』(2018年)の直接的な続編です。今回はベイビーメタルもゲスト出演。
大きなフェスを目指してフィンランドの田舎からフェス会場まで目指すというフォーマットは前作と同じ。前作では活動歴は12年だけどライブ経験もオリジナル曲もないコピーバンドの立身出世譚でしたが、今回は刑務所からのスタート。前回の事件で伝説的な存在となりつつある彼らが巨大フェス「ヴァッケン」のオファーを受けるのだが……という話です。
今回も映画館の中で声を出して何回も笑わせていただきました。劇場で笑いが起きる映画はいい映画。それはバンドメンバーのキャラクター造形がしっかりしているからなんだと思います。前作に引き続きこだわりの強いベースのクシュトラックスが最高。ストーリーは主人公でボーカルのトゥロを中心に回りますが、ギャグはクシュトラックスがらみが多い。最初の刑務所でレコード配布のエピソードから最高だったし、ベイビーメタルとのからみもよかった。
ただ、素朴な感じ……というかデスメタルと牧歌的なキャラクターの対比は前作のほうが好きだったかも。フィンランド北部、何もない田舎の村とヘヴィーメタルのギャップ。バンドの写真撮影も前作のほうがよかった。トゥロもとてもシャイで普段は自転車に乗ってる。そのギャップが今回はそれほど大きくない。でも、それは彼らのバンド「インペイルド・レクタム(直腸陥没)」が「終末シンフォニック・トナカイ粉砕・反キリスト・戦争推進メタルバンド」としてそれだけ成長したということなのだろう。ただ、そのイメージが増大した分だけ、素朴でいい人たちの彼らのギャップをもっと際立たせてほしいとも思ってしまうのは贅沢なのだろうか。