原文:"Hey GOV.UK, what are you doing about voice?" by Sam Dub and Mark Hurrell
ここ数年で多くの人がAlexa、SiriやGoogleアシスタントのようなボイスアシスタントを家庭に取り入れ、スマートフォンで活用するようになりました。
最も人気のある活用方法は質問をすることです。そして、その質問に政府が答えることを期待しています。そこで、GDSでは小さなチームを作り、GOV.UKにおいてどのようにその期待に応えられるかを研究しました。
なぜGOV.UKにとってボイスが重要なのか
スマートスピーカーはイギリスで急速に普及しています。 8%の成人が所有し、2018は3%増えました。2016年にGoogleは20%のAndroidデバイスからの検索はボイスによる検索だと発表しました。
ボイスプラットフォーム自体はユーザーの質問に関する情報を共有していません。しかし、AmazonやGoogleのチームとの議論から、ユーザーがボイスインターフェースを通して質問する内容は政府が最も信頼たり得るソースだということを理解しました。
ボイスインターフェースは情報アクセスのためにDragon Naturally Speakingのようなソフトウェアを使っている人たちにとっては新しいものではありません。しかし、 アクセシビリティのコミュニティーは現在のボイスインターフェースの盛り上がりに大きな期待を持っています。ボイスインターフェースの劇的にシンプルなインターフェースはコンピューターやスマートフォンを使いにくいと感じている多くの人たちの助けになる可能性があります。
GOV.UKにとってボイスインターフェースは政府によりアクセスしやすくしてユーザーの高まる期待に応える機会となります。
ボイスの大規模利用への挑戦
政府としてはボイスサービスに関して一貫した方法を取る必要があります。
最近の GDS Innovation Survey によると、多くの地方行政、政府機関や省庁がすでにボイスを使ってサービスや情報を提供できるか可能性を探っています。
GOV.UKのアプローチはデザイン原則 に沿って以下の点を考慮に入れる必要があります。
- クロスプラットフォーム
- クロスガバメント
- 一貫性
- 拡張性
私たちのチームはボイスアシスタントのためのアプリを開発してみました。私たちは一つのアプリで全ての主なボイスアシスタントをサポートできるか試してみました。
「答え」からはじめる
私たちはまず、それぞれのボイスサービスがどのようにユーザーに答えを提供するのかを調べました。
私たちは三つのソースがあることを理解しました。
- 検索エンジン:Webを検索して適切なリンクとボイスとして提供できるコンテンツ部分を見つける
- ナレッジエンジン: データと計算を使い、事実に基づく回答が必要な質問に対する答えを提供する
- アプリケーション: known as skills on AlexaやCortanaではスキルと呼ばれているもの。多くのボイスプラットフォームは独自のアプリストアを持つ
以下が人気のある主なボイスアシスタントがそれぞれ何を使っているかをまとめたものです。
検索エンジン | アプリケーション | ナレッジエンジン | |
---|---|---|---|
Siri Apple |
iOS & SiriKit | Wolfram Alpha & Siri Knowledge |
|
Assistant |
Google actions | KnowledgeGraph & Wikidata |
|
Alexa Amazon |
Bing | Alexa skills | Evi & Alexa Knowledge |
Cortana Microsoft |
Bing | Cortana skills | Bing Satori |
この調査により、検索エンジンとナレッジエンジンにとってGOV.UKがデータソースそして取り込みやすいようにすることで、多くの質問に答えることができることがわかりました。
GOV.UKを検索エンジンにもっとわかりやすくする
GOV.UKではオープンなWebによく練られたコンテンツデザインを適用しているため、既存のガイドラインですでに多くのコンテンツがボイスプラットフォームにとって答えを引き出しやすいようになっています。
検索エンジンは私たちのコンテンツをクロールして機械学習でボイスとして適切な答えを摘出します。私たちが作成したGoogleアシスタントのデモで体験することができます。
しかし、もっと改善することができることもわかりました。schema.orgの構造化データ標準を活用することで、検索エンジンにさらに多くのコンテクストを提供して私たちのコンテンツをよりよく理解する助けをすることができます。
この四半期は以下の三つを実装しました。
- Article schema:GOV.UKにおける全てのガイダンス
- NewsArticle schema:GOV.UKにおける全てのニュース
- HowTo schema:新しいやり方のステップごとの手順
私たちのコンテンツ戦略を考える上で、もっと多くの示唆を得ることができました。私たちはすでにコンテンツを既にコンテンツをわかりやすく、自然な言葉で簡潔に作成しています。しかし、会話形式で提供するにはさらに必要なことがあります。例えば、Amazonは一息で答えを提供できるように推奨しています。
これを踏まえ、私たちは以下を実行する予定です。
- オープンなパブリッシングをさらに進める。ガイダンスがサービスに隠れないようにする。
- 構造化データの利用を改善し、検索エンジンにとってさらにわかりやすくする
- さらに簡潔な答えをガイダンスに取り入れる
GOV.UKをナレッジエンジンに取り込む
検索エンジンはWebをスキャンして答えを探しますが、ナレッジエンジンはデータベースから事実を探します。
私たちはユーザーがボイスアシスタントを活用することを助けるには政府が提供する標準的なデータをナレッジエンジンが取り込みやすい形にすることが最も効果的だと考えます。
私たちはAPIを通じてGOV.UKのデータを最も簡単に標準に基づいて提供できる方法を主なナレッジエンジンのプロバイダーと話し合っています。
既にGOV.UKのコンテンツAPIは存在しますが、ナレッジエンジンが必要な詳細の構造がまだ不足しています。数週間前に小規模な新しいAPIを試験的に作り、限定的にさらに構造化かされたデータの提供を開始しました。
結果はわかり次第またお知らせします。
ボイスアプリとスキルの現在の制限
私たちは答えを提供することにフォーカスしています。まだボイスを活用した公共サービスの活用まで踏み込んでいません。例えば、例えば給付金の請求や運転免許取得試験の予約などです。これは現在のボイスインターフェースではこれらを提供することができないからです。
- プライバシー:多くのボイスサービスは会話の履歴を保存しています
- 個人認証:多くの公共サービスは高いレベルの個人認証が必要となります
- 個人情報:住所の入力も躊躇されます。
公共サービスで利用するには多くの障害があります。しかし、私たちはボイスの環境に注目し続けます。将来的に標準的なクロスプラットフォームが実現され、多くの機能が改善されることを期待します。
将来の展望
もしボイスの可能性を知りたいのであれば、AndoroidかiPhoneのスマホを使って以下の質問をGoogleアシスタントに問いかけてみてください。
- 新しいパスポートを取得するのにどれくらいの時間がかかりますか?(How long does it take to get a new passport?)
- 運転免許試験にはいくらかかりますか?(How much does a driving test cost?)
- 育児手当はいつ支払われますか?(When will I get child benefit paid?)
Sam Dubは is a product manager on GOV.UKのプロダクトマネージャー、Mark HurrellはGDSにおけるHead of Graphic Designです。
訳者解説
GOV.UKだけでなく、欧米の優れた組織はユーザー中心の考え方が大前提としてあり、それを実現するための原理原則を明確にして明文化しています。GOV.UKの場合はデザイン原則がその一つになります。優れた組織において原理原則は世間に見せるためだけのカッコつけたビジョンやミッションとは違い、本当の行動原則となります。ボイスのような新しい技術が出てきても、その原理原則に照らし合わせて適応します。ボイスが原理原則に合わないのであれば、使わない。
それは頑なであることとは違います。ガイドラインレベルではそれが適切だと考えれば技術に合わせます。それはデータのさらなる構造化やより簡潔な文章の心掛けなどに現れます。新しい技術に対する取り組みのお手本のような事例であり、ブログ記事ですね。素晴らしい。