カタパルトスープレックス

興味がない人は無理して読まなくていいんだぜ。

映画評|『オオカミの家』クリストーバル・レオン/ホアキン・コシーニャ(2018年)

新進気鋭のストップ・モーション・アニメーション作家であるクリストーバル・レオンとホアキン・コシーニャのコンビによる長編映画です。圧倒的な映像体験だけでなく、きちんと映画としても成立させているし、ある種の芸術作品でもある。これはスゴイ。

テーマは「連鎖する心理的な支配」でしょうか。登場人物はオオカミ、少女マリア、子ぶたから作られたアナとペドロの姉弟。支配者のオオカミの視点でマリアがアナとペドロを支配する様子を観察する。

絵画とインスタレーションの融合のようなまったく新しいストップ・モーション・アニメーション。それでもカレル・ゼマン、ヤン・シュヴァンクマイエル、クエイ兄弟が紡いできた伝統も引き継いでいる。それは寓話性ですね。ストップ・モーション・アニメーションは寓話への再構築なんです。

本作もピノチェト軍事政権下のチリに実在したコミューン「コロニア・ディグニダ」から着想を得たらしいですが、寓話として再構築されています。「コロニア・ディグニダ」についての前提知識はまったく必要ないです。ボクは優れた映画は前提知識の必要のない映画だと思ってます。そういう意味で、本作は優れた映画です。『地獄の黙示録』を観るのにベトナム戦争の知識が要らないのと同じ意味で。

ボクはまったく前提知識なしに観ました。確かに「ドイツ語とスペイン語が混じった変な映画だなあ」とは思いました。でも、「連鎖する心理的な支配」はしっかりと受け止められました。「コロニア・ディグニダ」について変に前知識を持ってしまうと、それにフレームが固定されてしまって自由に観れないんじゃないかなあ。発想を狭めてしまう気がします。

オオカミの家 (字幕版)

オオカミの家 (字幕版)

  • 声の出演:アマリア・カッサイ
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