ボクは洋書は基本的にオーディオブックで聞いています。オーディオブックは著者自身が朗読することがありますが、そんなオーディオブックを聞くと何だか得した気分になります。書いている本人が直接語りかけてくれるのですから。
ジョン・ドーアによるベストセラーのビジネス本"Measure What Matters"のオーディオブックも著者本人による朗読です。さらにすごいのがゲストたち。この本では色々な事例が取り上げられているのですが、多くの場合はその会社の人たちが朗読者として参加しています。いきなり最初がGoogleのラリー・ペイジですよ。そして最後がU2のボノです。他にもZume Pizzaの創業者を含む多くのスタートアップ創業者がそれぞれの事例を自分の声で届けています。これはスゴい。ゲストとしてもそれだけ信頼してオススメしたいということなのでしょう。
Measure What Matters 伝説のベンチャー投資家がGoogleに教えた成功手法 OKR (メジャー・ホワット・マターズ)
- 作者: ジョン・ドーア,ラリー・ペイジ,土方奈美
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
- 発売日: 2018/10/16
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログを見る
新しいパフォーマンス管理手法としてのOKR
ここで紹介されているOKR (Objective, Key Result)はジョン・ドーアが提唱する新しいパフォーマンス管理のやり方です。KPI(Key Performance Indicators)とにていますが、KPIはトップダウンなのに対して、OKRはボトムアップであり水平的に展開もできることが特徴です。また、なぜそれが大切なのか目的(Objective)を明確にすることにより、目的と行為と結果が見えやすくなります。
目的(Objective)は「何をするのか」を示し、主な結果(Key Result)は「どうやるのか」を示します。目的はあまり変わりませんが、主な結果は変わることがあります。よくあるのは四半期ごとの運用ですが、期の途中でも変えることは可能です。
リーンスタートアップやグロースハッキングとの違い
Googleが初期から取り入れているということもあり、YouTubeや卒業生の企業でも幅広く取り入れられているようです。スタートアップといえばリーンスタートアップのNorth Star MetricsやグロースハッキングのOne Metric That Mattersが有名です。
これらのパフォーマンス管理方法は事業のパフォーマンス管理ですが、OKRは組織のパフォーマンス管理という違いがあります。例えばNorth Star Metricsの改善が目的(Objective)となりの、個々人がそれを改善するためにOKRを設定する感じで運用されます。
OKRを進めるためのCFR
コンセプト自体は非常にシンプルで、それゆえにパワフルなOKRですが、組織に導入するのは簡単ではありません。そこで大切なのがCFR(Conversation/Feedback/Recognition)です。会話をし、フィードバックを伝え、認めることが大事なのだそうです。OKRは透明性が高くて誰でも個人のOKRを見ることができます。
特にマネージャーは部下からフィードバックを受けることに慣れていません。プライドもありますから、なかなか素直に認められない。また、部下のやっていることに批評をしても、認めて育てることもなかなか難しい。
この本ではいきなり全社展開することは勧めていません。まずは小さなグループで。例えば役員だけとか。上ができないことを下にやれとはいえませんからね。
でも、やっぱり文化が大事
OKRとCFRは素晴らしいツールなのですが、その土台となる文化ができていないと効果は限定的になるそうです。ブラック企業でいくら立派な取り組みをやったところで、その企業文化がブラックだったらOKRもブラックになってしまうし、管理ばかりが強化されて組織は疲弊してしまいます。
じゃあ、文化ってどう変えたらいいのよ?ってのが大きな課題ですよね。
この本は誰にオススメか
この本の一番のターゲット層は企業の人事に携わる人なんだと思います。最近は人事評価をしない「ノーレイティング」が普及していますが、OKRもその一種と考えることができます。ゆえにOKRは給与に直接つなげないことを推奨しています。
あと、経営者は読んだ方がいいでしょうね。経営者は組織としてどのように成果を出していくのかを考えなければいけません。ビジネスで創意工夫をしても人事評価は従来通りでは最適な組織運用はできませんよね。パフォーマンス評価を「知らない」といえないのが経営者です。