カタパルトスープレックス

興味がない人は無理して読まなくていいんだぜ。

映画評|『夜の浜辺でひとり』ホン・サンス監督(2016年)

ホン・サンス監督がキム・ミニと出合い作風が変わった二作目。

女優のヨンヒ(キム・ミニ)は監督との不倫が騒動になり、それに疲れ、キャリアを捨ててドイツのハンブルクを訪れる。そこで女友達のジヨン(ソ・ヨンファ)と過ごす。会いにくると言ってた監督の言葉をどこかで信じながら……という話です。

前作と『あなた自身とあなたのこと』(2016年)で以前の作家性はそのままでの視点を男から女に変えることにより、大きな変化を遂げました。本作もその延長線上にあり、更にホン・サンス監督とキム・ミニの当時の状況も反映させた作品となっています。

ヨンヒは女優で、監督との不倫スキャンダルのためにヨーロッパの知り合いのもとに身を寄せる。追って自分も行くと言っていた監督とは会わずに韓国へ戻る。同郷の先輩たちと過ごすが気持ちは晴れない。

本作は完全に女性の一人視点です。ホン・サンス監督の定番ダメ男は出てこない。存在はするけど、そこにはいない。いないけど、女性の中には存在している。いないけど、いる。

これまでのようなコメディーな感じではない。クスッとすこしくすぐりがあるのががホン・サンス監督の特徴でもあったので、そこがないのはちょっとさみしい。まあ、これはこれでいいんだけど。