注目されるスタートアップの歴史を書こうと考えた時、どうしても食指が動かなかったのがUberです。そもそもビジネス自体に共感が持てない。創業者たちがどのような社会を作ろうとしているのかわからないですが、便利と搾取の等価交換な気がしてならない。社会的に新しく生まれる価値はプラマイゼロ。
そう考える人はやっぱり多くて、今回取り上げる"Ours to Hack and to Own"もソーシャルメディアやシェアリング経済に懸念を持つ人たちがプラットフォーム・コーポラティズムという概念の元にそれぞれの考えをエッセーをまとめたものです。
- 作者: Trebor Scholz
,Nathan Schneider - 出版社/メーカー: Or Books Llc
- 発売日: 2017/08/15
- メディア: ペーパーバック
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コーポラティズムとは
企業はコーポレーションですよね。通常は株主が出資して事業をする組織。そして、労働者が出資して作る企業をコープと言います。日本だとスーパーの生協のイメージが強いですが、スーパーマーケットに限らず社員自身が出資して作る企業はコープです。コーポラティズムはこのコープからきています。
シェアリング経済やクラウドソーシングは搾取の仕組み?
Uber自身は何も持っていません。運転手も正社員ではないですし、クルマも運転手のもの。所有しないことにより社会保障費を払う必要がありませんし、クルマという資産に対する税金もかかりません。レビューシステムでサービスの質を担保していますが、これもある種の労働者の監視システムとも言えます。
パフォーマンスレビュー(年次評価)が社員のやる気を起こさないことがわかってから、多くの企業は正社員に対しての年次評価を廃止しています。
しかし、Uberの運転手やランサーズやクラウドワークスのようなクラウドソーシングで働くフリーランスは正社員ではないのに常にレビューシステムにより評価されます。それでも、より多くの対価が得られればいいですが、多くの場合は正社員より低い対価で働くことになります。プラットフォーム側には都合のいい仕組みで、点数の悪いドライバーは「解雇」できる。でも、点数が良くてもドライバーにとっていいことはまったくない。アメがなくムチしかない。
コープ方式のプラットフォーム
だったら、フリーランスやUberの運転手が自分たちでプラットフォームを作って運営したら?というのがプラットフォーム・コーポラティズムです。タイトルのOurs to Hack and to Own (自ら作り所有する)というタイトルはここからきています。
コープは特にヨーロッパで成功している企業が多く、スペインで7番目に大きなビジネスで10万人以上の雇用を生んでいるモンドラゴンとか有名ですよね。優良企業の事例としてよく取り上げられるので、ご存知の方も多いでしょう。
確かにコープ方式のプラットフォームという考え方は魅力的ですよね。ただ、アイデアは実現しないと意味がない(Idea is free, execution is priceless)ので、このプラットフォーム・コーポラティズムのコミュニティーから早く何か生まれるといいですね。
以前に紹介したFacebookのトークン化はこの考えに近いですね。
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