久しぶりのヴィム・ヴェンダース監督が東京を舞台にしたドラマ作品『PERFECT DAYS』の映画評です。短編小説を長編映画にしたような作品。初期のロードムービー三部作が大好きなのと、『パリ・テキサス』が生涯ベスト並みにすきなので、どうしても最近の作品からは遠のいていました。
古びたアパートに住む中年男の平山(役所広司)は朝早く起きて毎朝同じルーティンで仕事に出かける。カセットテープで音楽を聞きながら。清掃員として公衆トイレを丁寧に掃除していく。対照的に若い同僚のタカシ(柄本時生)はいい加減で遅刻もする。それでも平山は気にすることもなく。いつもどおりの生活だが、周りはどんどん変化していき……という話です。
色々と思うところがある作品でした。正直に言えば、最初はすごく退屈でした。うわ、これが続いたら地獄だなと思うくらい。榎本時生がウザい。でも、徐々に物語が動いてくる。
人生はいろいろ。本作のタイトルも"The perfect day"ではなく、冠詞なしの"perfect days"なんです。おそらく、役所広司が演じる男も過去にいろいろあった。そして、今ようやくここに落ち着いた。後悔はきっとある。後悔がない人生なんてない。
最後に出会った三浦友和もよい。彼も今できるベストをしている。もちろん、後悔もある。むしろ、後悔だらけだと思う。でも、perfect daysを過ごす。カンペキな人生などない、木漏れ日のように常に変化するものなのだから、自分なりのperfect daysを過ごすしかない。