中国のインターネット企業にはよく「人口红利」(人口ボーナス|レンコウホンリ)があると言われます。トラフィックを誘導する広告収入のビジネスモデルには人口の多い方が有利となります。一方で広告収入に頼らない有料コンテンツのビジネスモデルも中国で育ちはじめているのは注目に値します。その代表例が知识经济(知識経済|ジーシージンジ)です。
例えば微博(中国のTwitter|ウェイボ)の財務データから見ると、有償の知识经济アプリである微博问答(ウェイボウェンダ)のリリース(2016年12月)リリースで有償サービスの収入が増えていることがわかります。
中国における有償コンテンツ普及の背景
中国ではクレジットカードがあまり普及していないため、クレジットカードだけの決済方法だけでは有償コンテンツはあまり普及しませんでした。中国でネットショッピングが盛んなのは有名ですが、その主要プレーヤーはAmazonではなく淘宝网(タオバオワン)です。そして同じ阿里巴巴集団(アリババグループ)の支付宝(ジーフーバオ)が中国人にとっては馴染みのある決済方法です。
中国でモバイルの有償コンテンツが普及してきた背景にはこの支付宝や微信の微信支付(ウェイシンジーフー)といった中国人が使い慣れた決済方法がモバイルで使えるようになったことが背景としてあります。
Apple Payが支付宝や微信支付をサポートした時期と有償コンテンツの普及時期は符合します。もともと有償コンテンツの需要はあったと推測されますが、支払い方法が限られていたため普及にブレーキがかかっていた形ではないでしょうか。
知識のファストフード「知识经济」(ジーシージンジ)
知识经济は比較的新しいエドテックのジャンルの一つです。在行(日本のビザスクに近いスポットコンサルティング|ザイハン)に続いて得到(ドゥーダオ)がオープンしたのが2015年で、数年で新しいプレーヤーが続々と産まれました。オンライン教育のような本格的な教育ジャンルではなく、時間を節約するためにコンパクトにまとめられた知識のファストフードと言えるものです。2017年の中国での市場規模は8000億円と推定されています。
自分自身を振り返っても、ベンチャーキャピタルの仕事をはじめてから、調査時間の確保が大きな課題でした。世界中の資金調達動向や注目される事業モデル、業界構造、技術発展、財務データなど様々な情報を整理しなければいけません。インターネットのおかげで情報を収集しやすい反面、精度の高い取捨選択がますます重要になります。そんな時に役立ったのが知识经济の代表的アプリで最大のユーザー数を誇る喜马拉雅(山の「ヒマラヤ」から名付けられている|シーマーラーヤ)です。通勤途中でも専門家の話を聞くことができるのは非常に便利です。
インターネットで多くの情報が得られるようになりましたが、体系化されていません。情報を整理して活用するには経験が必要で、これまでは学校などがその役割を果たしていました。しかし、人々のニーズは多様化して、これまでの教育では対応しきれなくなってきました。例えば、「AとBの職種をどちらに先にやるべき?」とか「このデータは会社にどれぐらいの価値がある?」とか「なぜこのようなプロセスが必要なのか?」など実践に役立つ情報は教科書に載っていません。そのため、特定な経験を持つ人や専門家に聞きたいというニーズがあります。
中国における知識需要
中国ではメンツを保つことが重要です。そのため飲み会の場で相手が言うことが解らないのは恥ずかしい。だからいろんなことを理解しておきたい。
知识经济はそのような需要を満たしています。アプリで5分くらいの解説を聞ければ、人気の書籍について議論できる。3分間のドラマのまとめを聞けば、そのドラマの面白さを語れ、話のネタとして使える。
コンテンツによる分類
知识经济はテキストと画像という従来のモデルから動画配信まで様々なスタイルがあります。以下が主なスタイルと代表的なプレーヤーとなります。
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中国出身、2009年来日。早稲田大学卒業後、ヤフーに入社。 入社後は広告営業部門に所属し、デジタルマーケティングのコンサルティングを担当、2016年より百度プロジェクトの立ち上げ、インバウンドや越境ECなど中国向けビジネスのマーケティング支援業務に従事。2017年よりYJキャピタルに参画。
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