2015年公開の『正しい日 間違えた日』は、ホン・サンス監督の代表作の一つであり、同じ日を2つの異なる視点から描いた二部構成が特徴的な作品です。映画監督ハム・チュンスと若い美術家ユン・ヒジョンの出会いを通じて、人生における選択の重みや偶然がもたらす結果の違いを浮き彫りにしています。公私ともにパートナーとなるキム・ミニと出会った作品。
- あらすじ|「間違えた日」と「正しい日」
- テーマ|偶然と選択がもたらす多様な結末
- キャラクター造形|リアルで不完全な人間像
- 映画全体の印象|二部構成が生む独特の深み
- まとめ|人生の選択と偶然を見つめ直す一作
あらすじ|「間違えた日」と「正しい日」
パート1
ハム・チュンスは、水原で若い美術家ユン・ヒジョンと出会い、彼女のアトリエを訪れたり、寿司を一緒に食べたりと楽しい時間を過ごします。しかし、酔った勢いで好意を伝えた際に既婚者であることが判明し、ヒジョンの友人たちとの集まりでも不用意な発言をして関係が悪化。
パート2
同じ状況が再現されますが、チュンスの行動や言葉は異なる展開を生み出します。ヒジョンの絵について率直な意見を述べ、一時的に彼女を怒らせますが、やがて本音を共有することで関係を深めます。寿司店では自分が既婚者であることを正直に告白し、結婚できないことへの悲しみを涙ながらに語ります。
テーマ|偶然と選択がもたらす多様な結末
本作のテーマは、同じ状況下でも選択や態度が異なることで人間関係がどのように変化するかを描く点にあります。「間違えた日」と「正しい日」はどちらも一概に善悪や正誤を問うものではなく、人生の曖昧さや偶然の影響力を示唆しています。ホン・サンス監督は、些細な言動や感情の揺らぎを繊細に描写し、観客に「もし違う選択をしていたらどうなっていたのか」と考えさせる仕掛けを巧みに作り上げています。
キャラクター造形|リアルで不完全な人間像
ハム・チュンス(チョン・ジェヨン)は、才能ある映画監督でありながら、自己中心的で欠点の多い人物です。特に女性関係において不用意で感情的な一面を見せる姿は、ホン・サンス監督作品の典型的な「ダメな男」として描かれています。
ユン・ヒジョン(キム・ミニ)は、自分の感情に正直で芯の強い女性。彼女の反応や態度が、チュンスの選択によって微妙に変化していく様子は、観客に共感と興味を抱かせます。キム・ミニの自然体な演技が、キャラクターの奥行きをさらに深めています。
映画全体の印象|二部構成が生む独特の深み
『正しい日 間違えた日』は、ホン・サンス監督の特徴的な演出が随所に光る作品です。シンプルな構成ながら、二部構成を通じて人間関係の複雑さや人生の儚さが丁寧に描かれています。特に、同じシーンやセリフが異なる意味を持つようになる点が、観客に深い印象を与えます。
まとめ|人生の選択と偶然を見つめ直す一作
『正しい日 間違えた日』は、ホン・サンス監督の作家性が凝縮された作品です。二部構成による巧みな物語展開が、観る者に人生の選択や偶然の重みを考えさせます。チョン・ジェヨンとキム・ミニの演技も素晴らしく、人間関係の細やかな変化がリアルに描かれています。普遍的なテーマを持ちながらも独自の視点で表現されたこの映画は、ホン・サンス作品を初めて観る人にもおすすめの一作です。