『プロミシング・ヤング・ウーマン』に続くエメラルド・フェネル監督作品『Saltburn』の映画評です。Amazon Prime Video配信。本作のテーマは「覆せないものに対する逆襲」なのでしょうか。前作のテーマは「私刑」だと受け取りましたが、両作品とも大きな括りでは「逆襲」と言えそうです。
本作は主役であるオリバーを演じるバリー・コーガンに大きく依存しています。「そういう役」を演じさせたら右に出る者はいない俳優なので、適役ですが、安易な配役でもある。
オックスフォード大学に入学したオリヴァー・クイック(バリー・コーガン)は豊かな家庭の出身ではなく、豊かな子息たちになじむことができない。大学でもイケてるグループとイケてないグループに分かれていて、オリヴァーはイケてない組。そんななか豊かな家庭出身でイケてるグループのなかでも輝いているフィリックスがオリヴァーに興味を持ち始める。フィリックスとオリヴァーは仲良くなり、フィリックスの実家である大邸宅「ソルトバーン」に招待されるのだが……という話です。
本作の背景にあるのはイギリスに色濃く残る階級社会。その階級社会を風刺したストーリーとなっています。イギリスの労働階級の人はオリバーを応援したくなる気持ちになるでしょうが、そう簡単には終わらせない。この終わらせ方の受け止め方で評価は大きく変わるでしょう。
ボクはあの終わり方には否定的な立場です。全部謎を明かさないでほしかった。すべては闇の中で終わってほしかった。そうじゃないとバリー・コーガンの不気味さも活きてこないと思うんですよ。あの終わり方だったら、別の俳優の方が良かった。本作はバリー・コーガンのキャラクター造形に依存してるのだから、ストーリーもそれを最大限に活かしたほうがよかった。
あと、ロザムンド・パイクとバリー・コーガンを対決させてほしかった。癖の強い俳優同士の絡みがすくなく、もったいない。