米国証券取引委員会の見解のポイント
- ICOにおけるトークンは「通貨」ではなく「証券」
- 暗号化通貨/トークンが「証券」なのか使い方に依存する
- SECはICOに反対しているわけではなく、その将来的な価値は認めている
原文:"Statement on Cryptocurrencies and Initial Coin Offerings" by EC Chairman Jay Clayton, December 11, 2017
世界のソーシャルメディアや金融市場は暗号化通貨とイニシャル・コイン・オファリング(ICO)について騒いでいます。富を築いた話や夢が実現した話があります。私たちは「今回こそ違う」という聞き慣れたフレーズを聞きます。
暗号化通貨とICOマーケットは急速に成長しています。マーケットは地域的で、国家的で、国際的でこれまでにないプロダクトや参加者を巻き込んでいます。また投資家やその他の参加者に多くの疑問を投げかけています。新しい疑問、古い疑問、新しい形をした古い疑問です。
- このプロダクトは合法なのでしょうか?投資家を守るルールのような規制の対象になるのでしょうか?このプロダクトはそのようなルールに則っているのでしょうか?
- このような提供方法は合法なのでしょうか?プロダクトを提供するライセンスは必要ないのでしょうか?
- このマーケットは公正なのでしょうか?価格は操られてないのでしょうか?売りたいときに売れるのでしょうか?
- ハッキングなどで盗まれたり無くなったりする潜在的なリスクはあるのでしょうか?
これらを含む重要な質問に答えるには深い分析が必要です。そして、答えは様々な要因によって変わってきます。この声明は主に二つのグループを対象に暗号化通貨とイニシャル・コイン・オファリング(ICO)についての一般的な見解を提供します。
- 「メインストリート」の投資家
- 「メインストリート」にインパクトを与えるブローカー、投資アドバイザー、取引所、弁護士や会計士などマーケットの専門家
解説
メインストリートはウォール・ストリートに対する言葉。ウォール・ストリートにいるプロの投資家や機関投資家、対してメインストリートは年金基金を含め投資をする一般的な人の集まり。ICOに関わる人たちは主にメインストリートなんでしょうね、こうやって最初に出てくるということは。そういう意味では弱者保護の観点でこの声明が出されていると言えなくもない。
メインストリート投資家の考慮する点
暗号化通貨とイニシャル・コイン・オファリング(ICO)に関して少なからぬ懸念が上がっています。現在の運用において私たちの伝統的な株式市場と比べて投資家に対する保護があまりなく、詐欺や操作の可能性も低くありません。
投資家は現時点においてICOが証券取引委員会(SEC)に一つも登録されていないことを理解すべきです。同様にSECも現時点において証券取引できる暗号化通貨や暗号化通貨と関連するアセットを含む商品(ETFなど)を登録、許可をしていません。もしそうではないという人がいたら、用心深くあるべきです。
私たちは投資家に暗号化通貨とICOに関する警告、速報、声明を送りました。中には有名人がマーケティングに関わっている件を含め。どうか、それらに目を通してください。もし投資をするのであれば、質問をして明確な答えを求めてください。役に立つ質問リストを添付します。
どのような投資であろうと、売り手がリターンを保証したり、あまりにもうますぎる話だったり、すぐに行動を起こすように焦らせたりする場合、特に注意してください。投資したお金が消えてしまうリスクがあります。
また、このマーケットは国境をこえ国をまたがり多くの取引はアメリカの外にあるシステムで行われていることもあります。あなたの投資は知らないうちに国外に渡っていることもあります。その結果としてリスクは増大します。例えばその国のSECのような組織が効果的に悪徳業者を取り締まることも、ファンドを回復することも難しいでしょう。
このマーケットについて詳しく知りたい方は、下の「暗号化通貨、ICOと証券規制に関する追加議論」のセクションをよく読んでください。
マーケット専門家の考慮する点
私はICOは(それが証券であるかに関わらず)起業家にとってイノベーションプロジェクトなどを含み効果的に資金調達する手段だと考えます。 しかし、証券を含むそのような行為は私たちの証券に関わる法律が要求する情報公開、プロセス、投資家保護が伴わなければいけません。証券の形が変わるからといって、証券が取引される際の基本的なポイントが変わるわけではありません。したがって、法律に準拠する必要があります。別の言い方をすれば、中央で記録された伝統的な企業の利子台帳とブロックチェーンで記録された分散台帳は取引の形を変えますが、本質を変えるわけではないということです。
私は証券取引を専門とする弁護士、会計士、コンサルタントなどマーケット専門家達に私達のレポート (21(a) Report)とそれに伴う強制措置を精査するよう強く求めます。この21(a) Reportにおいて委員会は歴史ある証券に関わる法律の原則に基づき特定のトークンは投資契約であり証券に該当するため、連邦の証券に関わる法律が適応されるとしています。特にトークンの提供は一般的な企業に対する金銭による投資とみなされ、企業的、運営的な努力によって利益が得られることが期待されます。
21(a) Reportの発表後、自分たちが関わるICOにおいてトークンまたはコインが「証券」 ではなく「利用料」として色合いが強いと主張するマーケット専門家が現れました。多くの主張は経済的実質ではなく形式を重視するものです。トークンを「ユーティリティトークン」とよんだり、利用料としても使えるようにしても証券であることに変わりはありません。企業努力による潜在的な利益が強調されているトークンとその提供は引き続きアメリカ合衆国の法律の下においては証券としての顕著な特徴を持っています。これらの件について専門知識の適応や判断が求められるとき、私は証券関連の弁護士、会計士などの専門家がゲートキーパーとしてその職務に専念することを期待します。私は投資家保護(特にメインストリートの投資家保護)のために法、プロセス、情報開示義務にといった原則に従うことを強く希望します。
また、私はマーケットの専門家に売り出す前にコインの販売が証券に関わる法律に該当するかどうかを確認するよう忠告します。証券を売るにはライセンス必要です。取引量の少ない商品や揮発性の高い商品の過度な売り込みは売り逃げや風説の流布など情報操作や詐欺のサインです。同様にこれらの商品を運用するシステムやプラットフォームについても1934年証券取引所法に違反する登録のされていない交換所やブローカーでないか確認するよう注意を促します。
暗号化通貨について私は2つのポイントを強調します。ひとつ目は暗号化通貨は証券だということです。「通貨」と呼ばれたり、「通貨ベースの商品」と呼ばれていてもです。暗号化通貨や複数の暗号化通貨を組み合わせた商品を売る場合、提供者はその暗号化通貨が証券ではないことを証明するか、証券に関わる法律に準拠しなければいけません。ふたつ目に、顧客への暗号化通貨の販売で利益を得たり証券としての取引を仲介するブローカーなどの市場への参加者はこれらの取引が反マネーロンダリング規制や身元確認(KYC)義務に違反していないか注意をする必要があります。 先に述べたとおり、私はマーケットの参加者にあたかも現金のように暗号化通貨での支払いや取引されるように扱うべきです。
暗号化通貨、ICOと証券規制に関する追加議論
暗号化通貨
暗号化通貨は大まかにいって固有の価値を有するアイテム(例えば現金やゴールドのように)で、支払い、販売などファイナンシャルな取引ができるようにデザインされています。アメリカドル、ユーロ、日本円など長きにわたり確立された通貨のように機能することを意識していますが、政府や中央銀行などの後ろ盾がありません。暗号化通貨のデザインと管理は異なりますが、暗号化通貨の支持者はその潜在的な可能性と将来性について主張しています。(1) 仲介者なく国境をこえて取引ができる能力 (2) 決済のファイナリティー (3) それ以外と比べて低い取引コスト (4) パブリックに取引を確認する能力です。そのほかに個人の匿名性と政府の規制や監視のない点が暗号化通貨の機能としてよく宣伝されています。暗号化通貨に批判的な人たちはそのような機能が不正な貿易や金融取引に使われる可能性や言われているようなメリットが実際には享受できない可能性を指摘しています。
暗号化通貨は証券ではなく、その提供と販売はSECの範疇にはないと言われています。その通説が正しいかどうかは暗号化通貨と呼ばれる特定のデジタルアセットの特徴と使用方法に依存します。いずれにしても、SECはアメリカドル、ユーロ、日本円での証券取引の影響にフォーカスしているため、同じ興味と責任を暗号化通貨にも有することは明白です。これは暗号化通貨での支払い、投資、クレジット利用を可能にする証券会社やその他の市場参加者にも適用されます。
ICO
暗号化通貨の大きな成長とともに、企業や個人はICOによって資金調達を行うケースが増えています。通常は個人投資家がアメリカドルのような通貨と引き換えに「コイン」または「トークン」といわれるデジタルアセットと交換によって提供されます。
これには様々な提供形態があり、その保持者の権利と利子は大きく異なるといわれています。ICO市場に参加する人にとっての重要な質問は「このコインやトークンは証券ですか?」です。証券に関する法律家がよく知るように、答えは事実によって異なります。例えば、ブッククラブの参加を意味するトークンは証券に関わる法律の範疇外でしょうし、ブッククラブの運営者がそのファンドを使って本を購入してトークンを持つブッククラブのメンバーに提供することができるでしょう。対照的に多くのトークン提供はこのような範疇を超えて作者、本、流通ネットワークを兼ね揃えた出版社を作ることに似ています。トークンの販売者が第二のマーケットでのトークンの取引の可能性を示唆している場合は特に問題です。購入者はトークンの持つ価値が上昇する可能性を売り込まれ、その価値が上昇したトークンを第二のマーケットで売却することで利益を確定したりすることです。これは証券と証券提供の顕著な特徴です。
全般的に見てICOのストラクチャーは証券の提供と販売とみなすことができ、証券に関わる法律に従い証券規制の必要条件を満たし投資家保護を行わなければいけません。一般的にこれらの法律は投資家に何に対して投資し、どのようなリスクがあるのかを明らかにします。
私は証券取引委員会の法律施行局に引き続きこの分野の監視をし、証券に関する法律に反するICOを厳しく取り締まるよう伝えました。
結論
私たち米国証券取引委員会は資本形成の促進にコミットしています。暗号化技術やICOがベースとしている技術は破壊的であり、変革的であり、効率化を促進することが証明される可能性があります。私はフィンテックの成長が資本形成を助け、機関投資家もメインストリート投資家も同様に投資機会を提供するものだと考えます。
私はメインストリートの投資家にその機会にオープンであることを推奨します。しかし、よい質問をして明確な答えを求めましょう。そして常識と照らし合わせて見ましょう。クライアントにアドバイスをするとき、金融商品をデザインするとき、取引に関わるとき、マーケットの専門家とそのアドバイザーは法律、規制、ガイダンスを注意して検討しましょう。証券の法律のフレームワークとなる原則は80年にもわたり新しいものに対応してきました。私はマーケットの参加者とアドバイザーに証券取引委員会のスタッフと積極的に関わり彼らの証券に関わる法律の分析に協力することを推奨します。SECのスタッフは FinTech [at] sec.gov宛てにメールをください。
解説
アメリカの証券取引委員会はICOに関してはかなり規制を強めています。この声明の少し前にICOを行なっていたPlexCorpsにICOを停止する緊急命令・資産凍結を発表しました。そして、この声明の同日にSECによってMuncheeもICOを阻止されました。一方でこの声明の中にあるブッククラブの例にもあるように、全てのトークン提供が証券に当たるわけではないようなので、ガイドラインの整備が急がれますね。
なお、この翻訳は「善きサマリア人」として提供している参考訳です。なるべく正しい訳を心がけていますが、ビジネスや投資などでこの参考訳を利用することはオススメしません。本当に知りたい人は専門家に相談してくださいね。以上ディスクレイマーでした!