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『スーパーマン』(2025)映画レビュー|ジェームズ・ガンが描く家族と優しさを象徴するスーパーマンの再出発

2025年、DCスタジオが新たなユニバース展開の『クリーチャー・コマンドーズ』に続く第二弾として送り出したのが、ジェームズ・ガン監督による『スーパーマン』です。主演はデヴィッド・コレンスウェット、ヒロインのロイス・レインにはレイチェル・ブロズナハン、宿敵レックス・ルーサーにはニコラス・ホルトがキャスティングされています。

本作は、DCユニバースの新しいフェーズ1「ゴッズ&モンスターズ」シリーズの起点として制作されました。『マン・オブ・スティール』(2013年)からのDCエクステンデッド・ユニバース(DCEU)の暗くて重厚なイメージから一新し、ジェームズ・ガン監督らしい明るく優しいイメージに仕上がっています。

あらすじ|ヒーローとしての自覚と異星人としての孤独

300年前から「メタヒューマン」と呼ばれる超人が生まれ、スーパーマンが活躍してすでに3年が経過する世界。国家ボラヴィアが突如として隣国ジャルハンプールに軍事侵攻を開始し、世界は緊張状態に。スーパーマンはこの軍事行動に対して平和活動として介入していきます。

このボラヴィアの軍事行動には天才の大富豪であるレックス・ルーサーがかかわっており、スーパーマンはレックス・ルーサーが率いる軍事企業ルーサーコープが送り込んだ謎の戦士「ボリヴィアのハンマー」に敗北するところから物語がスタートします。他国の戦争に介入するスーパーマンに対して批判的な意見も出てくる中、スーパーマンは自分の考える正義を貫こうとします。一方でレックス・ルーサーは様々な方法でスーパーマンを世間から孤立するように画策していきます。

この世界ではスーパーマンが唯一のヒーローではなく、特殊能力を持つメタヒューマンも存在しています。マックスウェル・ロードの企業ロード・テックがスポーンサーとなり、グリーン・ランタン、ミスター・テリフィックとホークガールが参加する「ジャスティス・ギャング」もそのひとつ。このため、スーパーマンが唯一無二のヒーローではない、この世界観が本作のテーマをより際立たせています。

テーマ|アウトサイダーにとっての家族の絆

本作には複数のテーマが描かれています。ひとつはジェームズ・ガン監督がこれまでの作品でも取り上げている「アウトサイダーにとっての家族」です。本作でスーパーマンはクリプトン星出身のエイリアンであることが強調されています。父親であるジョー=エル(ブラッドリー・クーパー)と母親であるララ・ロー=ヴァン(アンジェラ・サラフィアン)は既にいませんし、故郷であるクリプトン星もすでにありません。

ジェームズ・ガン監督は「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」シリーズでも、『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』(2021年)でも『ピースメーカー』(2022年)でも常にはみ出し者のアウトサイダーを物語の中心に据えてきました。スーパーマンもレックス・ルーサーによって地球人ではない「はみ出し者のアウトサイダー」としての立場に追いやられていきます。

ジェームズ・ガン監督作品では血のつながった「血縁の家族」だけではなく、もっと深いつながりを持つ「ファウンド・ファミリー(見つけた家族)」が描かれることも特徴です。「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」シリーズでいえばスター・ロード(ピーター・クィル)にとって「血縁の家族」はエゴですが、「ファウンド・ファミリー(見つけた家族)」は育ての親であるヨンドゥであり、ガーディアンズの仲間たちです。

スーパーマンにおいて「ファウンド・ファミリー(見つけた家族)」は育ての親のジョナサンとマーサ・ケントですし、これから新しい「ファウンド・ファミリー(見つけた家族)」が見つかっていくことが予見されます。

キャラクター造形|やさしさと非寛容の対比

デヴィッド・コレンスウェットが演じるクラーク・ケント=スーパーマンは、やさしく、だれでも信じてしまう純粋な心の持ち主です。困った人がいるから助けるという単純な行動原理で動いています。その支えとなっていたのが生みの両親が残したビデオメッセージだったのですが、レックス・ルーサーによってその支えが崩れてしまいます。本作で描かれるスーパーマンはリチャード・ドナー監督版の『スーパーマン』(1978年)のように完ぺきではないですし、ザック・スナイダー監督版の『マン・オブ・スティール』(2013年)のように力強くもありません。しかし、完ぺきではないからこそテーマである「アウトサイダーにとっての家族の絆」が際立ってきます。

ニコラス・ホルトが演じるレックス・ルーサーは、自らの軍事企業であるルーサーコープのビジネスのためにスーパーマンを排除しようとします。しかし、そのスーパーマンに対する執拗なこだわりはビジネスだけで説明できない部分があります。レックス・ルーサーは自分と違う他者を認めることができない非寛容な社会を体現するキャラクターとして描かれています。スーパーマンが、やさしく、だれでも信じてしまう純粋な心の持ち主だとしたら、レックス・ルーサーは、その全く反対の人物と言えます。レックス・ルーサーというキャラクターを通じて移民問題や武力紛争など、現代社会の課題を本作に反映させています。

映画技法|映像と音楽のこだわり、オリジンストーリーを省いた意味

ジェームズ・ガン監督の演出において特筆すべきは、映像と音響の使い方に込められたテーマ性です。撮影監督のヘンリー・ブラハムとともに採用したLeica Tri-Elmarレンズは、ひとつのショットの中で焦点距離を16mm、18mm、21mmと切り替えることができ、前景と背景の両方にピントを合わせる独特の画作りを実現しています。この技術により、映像はまるでコミックのような明快さと没入感を同時に持ち、視覚的なリアリティと非現実感が巧みに融合しています。

色彩や構図も印象的で、シルバーエイジのコミックやアニメ作品を想起させる、鮮やかで時代にとらわれないデザインが特徴です。スーパーマンのコスチュームもあえてカラフルにデザインされており、子どもたちに安心感と希望を与える存在として映えるよう配慮されています。音楽面では、ジョン・ウィリアムズの伝統的なスーパーマンのテーマを現代的なオーケストラとロック要素で再構成し、懐かしさと新しさを共存させる工夫がなされています。

また、本作はスーパーマンの誕生から描くオリジンストーリーを避け、既に確立されたヒーローとして彼を登場させることで、テーマにより焦点を当てることに成功しています。ユニークな世界観で、デイリー・プラネットの社員、「ジャスティス・ギャング」のメタヒューマンなど登場人物も多いのですが、すっきりまとめることに成功しています。

まとめ|家族、信頼、そしてやさしさを描く新時代のスーパーマン

『スーパーマン』は、スーパーヒーロー映画というフォーマットで、「アウトサイダーの居場所」「家族の意味」「やさしさと寛容さ」といったジェームズ・ガン監督の普遍的なテーマが込められた、温かくも深い物語です。エイリアンであるスーパーマンが、地球という異郷でどのように自分の居場所を見つけ、人々と信頼関係を築いていくのか。その過程が丁寧に描かれています。

また、独自の映像手法や音楽表現、そしてオリジンストーリーを省くという構成により、これまでのスーパーマン作品とは一線を画す、仕上がりとなっています。レックス・ルーサーという現代的なヴィランを通して、排他主義や不寛容といった現代社会の課題も浮き彫りにされており、ただのヒーロー映画にとどまらない社会的な重みを備えています。