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書評|「チーム人間」対「チームアルゴリズム」|"Team Human" by Douglas Rushkoff

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最近のテクノロジーや技術革新に関する書式は楽観的な「世の中よくなってる派」と悲観的な「世の中あまりよくなってない派」に分かれます。「世の中よくなってる派」の代表は『ファクトフルネス』のハンス・ロスリングや"Enlightenment Now"のスティーブン・ピンカー。「世の中あまりよくなってない派」は『操られる民主主義』のジェイミー・バートレットや"Lab Rat"のダン・リヨンズですね。

今回紹介する"Team Human"は「世の中あまりよくなってない派」の新しい書籍となります。

Team Human

Team Human

ダグラス・ラシュコフはニューヨーク市立大学でメディア理論やデジタル経済の教鞭をもつ教授で、著書『サイベリア』で初期のサイバーパンク関連の活動でも知られています。そもそもカウンターカルチャーとしてのサイバースペースとの関わり合いなので、貨幣制度に疑問を持ったり、コーポラティズムに接近したりしています。

人間の不幸の原因

この書籍では人間は一人ではなくチームで生きているとしています。問題の一つはいき過ぎた個人主義。そして資本主義経済とアルゴリズムによるメカモーフィズムです。デジタルが問題なのではなくて、デジタル資本主義が問題だとしています。

人間はデジタルと比べて非効率にみえるのは、それはデジタルの視点で人間を見るから。世界を人に置き換えることをアンソロモーフィズム(擬人観)と言いますが、現在は技術を人間に置き換えてみられているメカノモーフィズムとも言える状態になっているとしています。

生き物はネットワークの中で生きている

植物も動物も生き物はエコシステムのなかで生きています。ダーウィンの進化論を表すのに「弱肉強食」はあまり正しくなく、いかにエコシステムの中にフィットするかが進化の中に生き残る鍵です。針葉樹と広葉樹の間のエネルギーの受け渡しを菌類が担っているのはその例ですね。

人間がその中で最も進化したのはそのコミュニケーション能力のため。特に、言語の誕生が大きい。言葉によって人間は他の生物に比べて飛躍的に発展しました。

テクノロジーはコミュニケーションを助けていない

ラシュコフは技術はコミュニケーションを阻害してきたし、それは今でも変わらないといいます。印刷技術は知識を保存することを可能にしましたが、プロパガンダにも利用されました。テレビはより多くの人に情報を届けられるようになりましたが、より一人でいる時間が増えました。これはインターネットでも同じことが言えます。テクノロジーによりマイクロセグメンテーションが可能になり、アルゴリズムで同じグループに入れられた人たちが小屋に入れられているようになっています。

テクノロジーがコミュニケーションを阻害する例が電話会議です。コミュニケーションにはラポールが大切ですし、場所も大切です。しかし、Skypeなどの技術を使ったデジタルでのコミュニケーションはこれらの補完的情報が限られます。そのためにミスコミュニケーションが起きても、それを咎められるのは人間であり、技術ではありません。

情報は一部の人しか発信することができませんでしたが、インターネットでようやく多くの人が発信できるようになりました。しかし、インターネットにより、コントロールはメディアではなくアルゴリズムになりました。そして、そのアルゴリズムを持つのはGAFAなど少ない数の企業だけです。

この本はどんな人にオススメか

正直に言えばこの本は内容がかなり散漫でとらえどころがない部分があります。ぶっちゃけ、以下のYouTubeビデオの方がまとまってるかなと。それでも、最近の潮流である「世の中あまりよくなってない派」の主義主張を理解するためのテキストの一つとしてはいいと思います。