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映画『The Blackening(原題)』レビュー|ティム・ストーリー監督が描くブラックコメディホラー

2022年公開の『The Blackening(原題)』は、ティム・ストーリー監督によるブラックコメディとホラーを融合させたユニークな作品です。アフリカ系アメリカ人文化をテーマに、ホラー映画の定番要素をパロディ化しつつ、鋭い社会風刺を盛り込んだストーリーが展開されます。日本未公開。

あらすじ|命がけのゲームに巻き込まれる友人たち

物語の舞台は、奴隷解放記念日であるジューンティーンス。大学時代の友人たちが久しぶりに集まり、別荘でゲームを楽しむ予定でした。

しかし、彼らが見つけたのは、不気味なボードゲーム。このゲームは、アフリカ系アメリカ人文化に関するクイズが出題され、間違えると命を落とすという恐ろしいルールが存在します。

友人たちは協力してゲームに挑みますが、次々と謎と難題が立ちはだかり、彼らの命を脅かします。果たして彼らは生き延びることができるのでしょうか。

テーマ|ブラックコメディとホラーの融合で描く社会風刺

『The Blackening』は、ブラックコメディのユーモアとホラー映画のスリルを融合させ、独自のスタイルを確立しています。物語の中心には、アフリカ系アメリカ人文化や経験が据えられており、クイズの内容やキャラクターの行動がその背景に密接に結びついています。

特に、「ホラー映画で最初に死ぬのは黒人」というステレオタイプをパロディ化し、逆手に取った展開が見どころです。このアプローチは、単なるエンターテインメントにとどまらず、観客に深い共感や考察を促します。

キャラクター|文化的背景を反映した多彩な登場人物

『The Blackening』の登場キャラクターたちは、アフリカ系アメリカ人の文化的背景を色濃く反映した存在感を持っています。それぞれが個性的で、コミカルなやりとりや反応がストーリーを盛り上げます。

ただし、文化的なネタやジョークが多いため、背景知識がない観客には一部の内容が伝わりにくい場合もあるかもしれません。その一方で、ホラー映画の定番要素を知っている観客には、ネタやパロディが特に楽しめるポイントとなっています。

映画技法|ホラー映画のパロディと風刺的な演出

本作では、ホラー映画の定番要素を巧みにパロディ化しています。登場人物たちがホラー映画でありがちな行動を取りながらも、それを自らツッコむ場面や、ジャンルを意識した演出が笑いを誘います。

また、社会的メッセージを含んだ風刺が随所に見られます。奴隷解放記念日であるジューンティーンスという背景や、アフリカ系アメリカ人に関するクイズが、キャラクターたちの状況にリアリティを加えつつ、ユーモアと緊張感を高めています。

まとめ|ブラックコメディとホラーを融合させた新感覚の一作

『The Blackening』は、ブラックコメディとホラーを見事に融合させたユニークな映画です。文化的背景やホラー映画のパロディを通じて、観客に新たな視点を提供するだけでなく、エンターテインメントとしても楽しめる内容になっています。

一方で、アフリカ系アメリカ人文化に馴染みの薄い観客にとっては、一部のジョークやネタが理解しづらい場合もあるかもしれません。しかし、その独特の視点や風刺的なアプローチは、映画ファンにとって新鮮な体験をもたらすでしょう。

ホラー映画やブラックコメディが好きな方、そして社会風刺に興味のある方には、ぜひおすすめしたい一作です。