カタパルトスープレックス

興味がない人は無理して読まなくていいんだぜ。

『ダーク・アンド・ウィケッド』映画レビュー|ブライアン・ベルティノ監督が描く恐怖と絶望の世界

2020年に公開された『ダーク・アンド・ウィケッド』は、ブライアン・ベルティノ監督が手掛けたホラー映画です。孤立した農場を舞台に、家族が直面する超自然的な恐怖を描いたこの作品は、エクソシスト系ホラーの要素を持ちながら、心理的恐怖と不気味な雰囲気が印象的な一作です。本記事では、映画のあらすじやテーマ、見どころを深掘りし、その魅力をお伝えします。

あらすじ|家族の崩壊と見えざる恐怖に挑む姉弟の物語

ルイーズとマイケルの姉弟は、父の病状悪化を聞きつけ、実家の農場を訪れます。そこでは、母が父を見守りながら最期を静かに迎えようとしていました。しかし、母は姉弟に対し、「来るなと言ったのに」と冷たく突き放します。両親の様子がどこかおかしいと感じた姉弟は、実家に滞在することを決意します。

その夜、母は突如として首を吊り命を絶ちます。この悲劇を皮切りに、農場には説明のつかない恐怖が次々と襲いかかります。父の看病をするはずだった姉弟は、次第に目に見えない悪の存在に追い詰められ、精神的にも肉体的にも崩壊していきます。

テーマ|家族、孤立、そして悪の侵入

本作は、単なるホラー映画にとどまらず、「家族」というテーマを掘り下げています。病に倒れた父、支え続けてきた母、そして駆けつけた姉弟という構図は、一見すると家族愛を想起させるものの、そこに入り込む不気味な悪の存在がすべてを覆します。

また、舞台となるテキサスの農場の孤立した環境が、恐怖を増幅させています。都会の喧騒から離れたこの閉鎖空間で、悪魔的な力が徐々に家族を侵食していく様子は、視聴者に強烈な不安感を与えます。

キャラクター造形|不完全な家族と恐怖に向き合う姉弟

姉弟を演じたマリン・アイアランド(ルイーズ役)とマイケル・アボット・ジュニア(マイケル役)は、日常に潜む恐怖に巻き込まれる普通の人々をリアルに演じています。ルイーズの感情的な反応と、マイケルの冷静さの対比が、物語に説得力を与えています。

一方で、彼らの行動にはホラー映画特有の「ツッコミどころ」もあります。例えば、状況が明らかに悪化しているのに農場にとどまり続ける点や、医療や警察に助けを求めるという現実的な選択を避ける点などです。これらの行動が、ある意味でホラー映画ファンにとってのお約束として、物語のスリルを盛り上げています。

映画技法|音と空間を駆使した恐怖演出

『ダーク・アンド・ウィケッド』は、音響効果やカメラワークを巧みに使って恐怖を演出しています。農場の広大で無機質な風景は、孤立感と不安を視覚的に増幅させる役割を果たしています。また、暗闇や静寂を利用した緊張感の高いシーンが多く、観客の想像力をかき立てる演出が際立っています。

さらに、音楽や効果音の使い方が非常に印象的です。静寂の中に突然響く物音や、不気味な囁き声が観客の神経を逆撫でし、恐怖を倍増させます。

まとめ|ホラー映画ファンにおすすめの一作

『ダーク・アンド・ウィケッド』は、エクソシスト系ホラーを愛する人や、不気味な雰囲気の映画を楽しみたい人におすすめの一作です。家族というテーマに根ざした物語と、孤立した舞台が醸し出す独特の恐怖感は、ホラー映画として十分に魅力的です。

ツッコミどころが散見されるものの、それらもホラー映画の醍醐味の一部として楽しむことができます。特に、短時間で緊張感のあるストーリーを楽しみたい人にはピッタリの映画です。興味を持たれた方は、ぜひ一度ご覧ください。